夢魔/デイヴィッド・サンボーン
VOYEUR/DAVID SANBORN

夢魔

先日久しぶりにアナログレコードを友人の家で聴きました。その時に聴いたのがFUSION MASTERPIECE 1500 のラインナップにもあるこの作品です。と言うことでデイヴィッド・サンボーンさんの夢魔walkingしました。


この作品は初めて聴いた時に非常に垢抜けた都会的な雰囲気を感じました。その理由は今となっては良く覚えていませんが・・・。多分ライヴ映像作品のラヴ&ハピネスでのインパクトが強く、また最初にその映像から聴いたと言うこともあってのイメージだと想います。モノクロームでムーディーな感じがいたる所に漂っていて・・・。
もちろんデイヴィッド・サンボーンさんも良かったのですが、特にマーカス・ミラーさんのプレイに驚愕した記憶があります。また、この映像は番外編でレビューしてみたいと想っています。
もともとデイヴッド・サンボーンさんはサックス奏者の中でも特別に好きと言うわけではありませんでした。ですからこの作品も聴くのはかなり久しぶりです。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

1曲目は夢魔へ
ベースの高音と低音を上手く組み合わせたグリス奏法でスタート。もちろんベースはこの作品でも重要な役割をしているマーカス・ミラーさん。そして正確無比なドラムのスティーヴ・ガッドさんの16ビートに更に絶妙なタイミングのプルを入れたマーカス・ミラーさんのスラップベース。また、更にフュージョンの定番の様なミュートカッティングと軽いワゥをかけたギター。これはバジー・フェイトンさん。ものすごい軽快なリズムのイントロの中にも適度な重厚感があって引き込まれます。

デイヴィッド・サンボーンさんのサックスが軽い感じでテーマを奏でます。サックスの音がけっこうデッドな音なんですが、実に厚みのある音です。これはエフェクトだと想います。もともとデイヴィッド・サンボーンさんの音はリードの為もありますが、かなり金属的な感じがします。決して丸い音ではないですよね。どちらかと言うとやや鋭い感じの、かといってカミソリの様な鋭さではなくて、もう少し厚みのある鋭さ。実はこの音があまり好きではなくて、耳に障る感じがするんです、個人的には。でもこれが強烈な個性で好きな方にはたまらない音なんですが・・・。

ソロは短いフレーズを細かく連続して行きます。この辺りはテーマの持っているモチーフをそのまま展開していますので、どこまでがテーマかどこからがソロかの境を一瞬見失いそうになります。またそのフレーズはメロディアスと言う感じよりはもっとブルージーと言うか・・・。ジャズ的なバップフレーズなどもほとんどないので、いわゆる手癖的なフレーズと言うより、心底搾り出した感情のままのフレーズと言う感じがします。その意味ではハートフルな感じで好きな方にはこれまたたまらない魅力ですね。

続いてバジー・フェイトンさんのソロ。このソロもテーマのモチーフと雰囲気を用いたソロ。フレーズを割りと細かめに区切っています。途中、デイヴィッド・サンボーンさんとのキメのハモリがあってそのまま絡んでいきます。そして再びデイヴィッド・サンボーンさんのソロですが、すぐにフェードアウトしてしまいます。CD Time=4:24からの高音を上手く使ったフレーズが入ってこれから!と言う感じなんですが・・・。

2曲目はあなたのシルエット
いかにもムーディーな邦題です。波の音のSEが曲のやや軽いボサノバ調のリズムと合い重なって海辺の夕暮れと言う感じです。バジー・フェイトンさんのアコギのカッティングとスライドを上手く使用したエレキのリフが良いですね。
ここでのデイヴィッド・サンボーンさんのフレーズも心のまま!と言う感じで、特にソロや、テーマなどあまり意識した感じではなく1曲を自由に吹いている感じです。リラックスして聴く極上のBGM的な味わいです。

3曲目はウェイク・ミー
この曲は、シンセとサックスとコンガを除いた全ての楽器がマーカス・ミラーさんの演奏によるものです。全体的には打ち込みの雰囲気でブラックコンテンポラリー的な雰囲気です。ドラムのリズムが単純で難しいことはしていないので余計にそう感じるのかも知れませんが、本職ではないので仕方がないと言えばそうですね。でもギターはなかなかで後半のカッティングはかなり歯切れが良いですね。CD Time=4:33からはデイヴィッド・サンボーンさんがテーマを荒めにブロウしていてかなりカッコ良いです。

4曲目はワン・イン・ア・ミリオン
この曲も夕暮れの海が似合いそうな曲調。この曲のサックスは軽くディレイが掛かっていて、丁度フレーズをリフレインするようにかすかに右側でエコーしています。ゆったりと波に漂よっているようなフレーズで、抑揚を上手くつけて、時に緩やかにそしてフラジオのロングトーンなどを絡めながら心地よくまとまっています。

5曲目はラン・フォー・カヴァー
ベーシストでなくてもコピーを想わずしてしまった強烈なマーカス・ミラーさんのスラップからスタートする曲。とにかくカッコの良い曲で先のラヴ&ハピネスのライヴの映像を観ると今でも震えます!
ここでもマーカス・ミラーさんのエレピとギターを聴くことができます。でもドラムはスティーヴ・ガッドさん。少し重めの16ビートでハイハットがまるで打ち込みの様な正確さで迫ってきます。さらにサビの部分は1拍ごとにトップシンバルを入れつつ16ビートをキープすると言う技を聴かせてくれます。このトップシンバルが実に良い味でメリハリになっています。
ファーストソロはマーカス・ミラーさん。CD Time=1:28からスラップにハーモニクス奏法をおりまぜると言う妙技を聴かせてくれます。そのハーモニクスのリフをシンセでリフレインしているので一瞬解り難いのですが・・・。この辺りは見事なセンスです。後半はブラスやデイヴィッド・サンボーンさんが絡んできて、リズムを中心としたスラップで再びテーマへ繋ぎます。ちなみにフルートとテナーサックスでクレジットされているのがトム・スコットさんです。
テーマに戻ってサビのメロディをフェイクしながらそのままデイヴィッド・サンボーンさんのソロへ。CD Time=2:47からはややバップ的なフレーズを聴かせてくれます。CD Time=2:56からはフラジオのロングトーンからややポリリズム的なフレーズを絡めて絶妙なニュアンスのコントロールで盛り上がります。

6曲目はオール・アイ・ニード・イズ・ユー
イントロは少しクルセイダーズのような雰囲気も漂うミディアム・バラードです。それにしてもバラードでのデイヴィッド・サンボーンさんのプレイには何とも言えない雰囲気がありますね。微妙に心をくすぐられると言うか、特に女性の心くすぐりそうな・・・。
先ほども書きましたが音的に角があるのでバラード向きではないような気もするのですが・・・。多分、音がストレートでなおかつフレーズも良い意味でストレート。結局聴く人にもストレートにハートが伝わってくる!と言うことでしょうか?
まさに直球勝負、小細工、かけ引き無し!恋愛の王道の様なバラードプレイを味わう事が出来るテイクです。

7曲目は愛をこめて
この曲はピアノとのデュオ。ピアノはまたしてもその器用さを聴かせてくれるマーカス・ミラーさん。なかなか良い感じのバラードなんですが、やはりピアノが・・・。もったいない感じがしました。さらにデイヴィッド・サンボーンさんのソロで盛り上がろうか!と言うところでフェードアウト。わずか1:30程・・・。そしてこの曲がラストの曲・・・この辺りの作品としての意図は全くわかりません!まさにWHY?と言う感じです。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

この作品は実に短く全体で29:47しかありません。まあ長ければよいと言うものでもないのですが、問題はその短さの要因。なぜかいい所でカットの様なフェードアウトが多いんです。ほとんどそれがデイヴィッド・サンボーンさんのエンディングソロの部分。特に顕著なのは7曲目。この部分でフェードアウトする意味が全く解りません。

イージーリスニングのBGM的な作品ならば解らないでもないんですが、やはりデイヴィッド・サンボーンさんのソロをもっと聴きたい!ですよね。

もうひとつはマーカス・ミラーさんがいろいろやりすぎだと想います。まあそれなりの演奏クオリティなんですが、それでも本職には勝てないわけで、ここは予算的なことがあったのかどうか解りませんが、もう少し贅沢をして欲しかったと想います。これまた特に7曲目などは曲が良いだけに、やはりピアノはそれなりのプレイヤーでなければあまりにも・・・って想うんです。

全体的に曲が良くて、トータルしても非常に楽曲の流れが良く一貫したコンセプトを感じることができる作品だけに、お好きな方には申し訳ありませんが・・・大変残念です。

多分この作品を始めて聴いた時には、全体的なカッコ良さ、プレイに気を引かれていて気がつかなかったのだと想いますが、本当にもったいない!と言う感じが今回はしました。

(CD TOTALTIME:29:47 / Walking消費カロリー:119.73kcal)

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夢魔夢魔
デヴィッド・サンボーン マーカス・ミラー

曲名リスト
1. 夢魔へ
2. あなたのシルエット
3. ウェイク・ミー
4. ワン・イン・ア・ミリオン
5. ラン・フォー・カヴァー
6. オール・アイ・ニード・イズ・ユー
7. 愛をこめて

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コメント (6)

『夢魔』は,マーカス・ミラーの【ラン・フォー・カヴァー】が聴きたくて買ったんでしたが,次第に全曲聴くようになりました。もっともっと聴かせてくれっ,て感じで…。
やっぱり短すぎますよね。ayukiさんの不満も分からないではないですが,私は「サンボーン&マーカス」のコラボならなんだって肯定してしまうミーハーなので,好きとしか言えませんので。軟派でどうもすみません。

セラピーさん
コメントありがとうございます。
いやいや私もかなり軟派な方ですので・・・。マーカス・ミラーさんもデイヴィッド・サンボーンさんも嫌いでは無いだけに残念な気がしたことと、もっとすごい作品だったはず・・・と言う昔の記憶とのギャップが大きかったので少々辛口になってしまいました・・・。

もりゃ:

サンボーンのアルバムの中では一番最初に買ったアルバムでもあり、個人的には一番好きなアルバムです。
特に「夢魔へ」(英題の「Let's Just Say Goodbye」が何故こんな邦題になったのか解せませんが)は大好きです。
元々マーカス目当てで買ったのですが、このアルバムがなければサックスを買う事もなかったでしょう。
確かにサンボーンの音色はキツいですが「彼は音色に気を使うより、とにかく多く吹いていたいんだ」と、何かの雑誌のインタビューでマーカスが語っていました。
確かに短いのが玉に傷ですね。

もりゃさん
コメントありがとうございます。
本文での書きましたが、結局デイヴィッド・サンボーンさんはストレートなんですね。音にしてもフレーズにしても・・・。だからこそ、ハートフルでソウルフルなんだと想います。

もりゃ:

「ハートフルでソウルフル」確かにその通りですね。
一点書き忘れましたが、マーカスが色々演り過ぎ・・・正にその通りです。
マーカスは自分のソロ・アルバムでもギター・ソロを弾いたり、バス・クラリネットを吹いたりとやはり色々演り過ぎですが、まぁ自分のソロ・アルバムなので何でもアリでしょうけど。
ただAyukiさんのレビューにもある通り「本職には勝てない」のであって、ギターもバス・クラリネットも「なんじゃ、こりゃ」と思う様な、味のないフレーズばかりでファンとしてはガッカリです(これはこれで良いんだ、という方には申し訳ないですが)。
やはり往年のマーカス・ファンとしては、思いっ切りベース・プレイに専念して頂ける事を願うばかりです。

もりゃさん
コメントありがとうございます。
器用な人っていろいろなことをやりすぎると結局どれも極めることが出来ないってありますね。マーカス・ミラーさんはベースをすでに極めているのでやはり更なる極め、ある意味”悟りの境地”まで行って欲しいですね。

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