ザ・サウンド・オヴ・サマー・ランニング/マーク・ジョンソン
THE SOUND OF SUMMER RUNNING/MARC JOHNSON
今日は暖かい一日でした。少し暑い感じもあったのですが、それでも爽やかなwalkingでした。と言うことでマーク・ジョンソンさんのザ・サウンド・オヴ・サマー・ランニングでwalkingです。
ビル・エヴァンスさんの作品を先日レビューしましたが、そう言えば1枚・・・と想い出したのがこの作品です。マーク・ジョンソンさんの代表的な作品のベース・ディザイアーズ(*)のフォーマットで1998年にリリースされた作品です。
CD帯のチャッチコピーは『アメリカの空、駆け抜ける夏の記憶』。
いかにも今日の天気と良く合うコピーです。
実はあまり聴いていなかった作品です。ギター2台と言うギターファンの私のいかにも喜びそうなフォーマットなんですが・・・。
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1曲目はフェイス・イン・ユー。
左右のギターのいかにもフルアコースティクギターと言う音のユニゾンがテーマ。左チャンネルはビル・フリーゼルさん。ベース・ディザイアーズでもギターを弾いていて、マーク・ジョンソンさんのこのフォーマットにはある意味で不可欠なギタリスト。そして、右チャンネルは実質的にマーク・ジョンソンさんと初共演だったと言うパット・メセニーさん。
曲の感じはパット・メセニーさんの初期の頃の作品に良く登場したカントリーやアメリカンテイストが漂っています。作曲はマーク・ジョンソンさん。かなりパット・メセニーさんと近い感覚があると想いました。それをひと言で表すとCD帯にもあった『アメリカの空』と言う言葉がピッタリ合います。
2曲目はゴーズト・タウン。
まさにタイトル通りの曲調で、さらに『アメリカの空』が広がります。のんびりとしたテンポとテーマが西部劇などを連想させてくれます。
ファーストソロはパット・メセニーさん。
さすがにこの様なテイストの曲ではジャズ的と言うよりは、もっとゆったりと朗々とギターで歌い上げています。
続くビル・フリーゼルさんのソロは、2~3音の和音とカッティング的なコードワークを挟んで更にカントリーの雰囲気をもったフレーズです。
3曲目はサマー・ランニング。
アコースティックギターのいわゆる掻きむしり的なカッティングが入ったややアップテンポの曲です。多分このカッティングはパット・メセニーさんだと想うのですが・・・。雰囲気はパットメセニーさんが書きそうな曲ですがマーク・ジョンソンさんの作曲です。
ファーストソロはパット・メセニーさん。
CD Time=1:40からの展開など、曲調もあってメセニー節が連発していますが、特にCD Time=2:06からの展開はクロマティックラインから得意の下降フレーズ、そしてスラーを使った16分音符3音でのポリリズム的フレーズは想わず唸ってしまいます。ほぼ代表的なメセニー節のさわりを全て聴くことができるソロになっています。
一瞬劇的な展開へ!と想わせる様な効果的なコードチェンジの部分を挟んでビル・フリーゼルさんのソロへ。
パット・メセニーさんのソロとは対極にあるようなゆったりとしたフレーズと4分音の3連を基調とした和音でのフレーズがよりアメリカンな感じです。CD Time=2:56の低い音から8分音符で上昇するフレーズは前のフレーズの音をギターの解放弦で奏でてその音を延ばし、その延ばした音に重ねて丁度オクターブ下の音からフレーズを始める、と言う小技を聴かせてくれます。
またそれぞれのソロのバッキングのギターも聴き所です。
ビル・フリーゼルさんは比較的長い音符で大きくコードを捉えてバッキングしているのに対してパット・メセニーさんは、細かく、ミュートなどを使用しながらのバッキングです。それぞれのソロのスタイルと対応していて、さらに相手のソロの逆の雰囲気でのバッキングです。
4曲目はウィズ・マイ・ブーツ・オン。
アメリカンロック調の曲で左右のアコースティックギターのカッティングが良いグルーヴをかもし出しています。ドラムのジョーイ・バロンさんのブラシワークとかすかに聴こえる”皮の緩んだタム?”のような音が更にノリを出しています。
ファーストソロはマーク・ジョンソンさん。
そう言えばマーク・ジョンソンさんのソロ作品だったっけ・・・。と想ってしまうほど今まで地味に裏方をこなしていたわけですが、このソロは非常にオーソドックスでゆとりのあるプレイです。
曲の後半は左右でアコギがカッティングを続けて、ただただリズムを延々皆で刻みます。BGM的な演出でそのままフェードアウトして行きます。
5曲目はユニオン・パシフィック。
明るい4ビートの曲です。ギターのユニゾンでのテーマは良く考えられていて実に気持ちよくハモっています。
ファーストソロはパット・メセニーさん。
かなりブルジーなフレーズの中にも楽しさが溢れているソロです。またバッキングのビル・フリーゼルさんはここでもロングトーンでのバッキングワークです。
ビル・フリーゼルさんのソロはここでも絶妙なコードワークでソロを聴かせてくれます。バッキングのパット・メセニーさんは歯切れよく音を切りながらのバッキングワークです。
ここでも2人を対比すると面白ですね。
6曲目はポーチ・スウィング。
3/4拍子のこれまたカントリーの香り満載の曲です。この曲はスローテンポなので2人ともコード和音を長めに奏でています。ですからそれぞれのソロのバックやテーマ部分で聴くことが出来るお互いのバッキングとメロディが綺麗に響き合っています。ギター2台の美しいハーモニーの妙を味わうことが出来ます。
7曲目はディンギー・ドング・デイ。
リズムはGO,GOビートと言うかベンチャーズ風と言うか・・・。とても明るい曲です。
ギターが何本かオーバーダビングされているのですが、その音を良く聴くとパット・メセニーさんは参加していないような気がするのですが・・・。クレジットが無いので良く解りませんが。
8曲目はマックスとベンの冒険。
マーク・ジョンソンさんが弓を使用してクラシカルな雰囲気の中にも少しメロディの不穏さがあって何とも表現し難い雰囲気があります。今までのような明るい『アメリカの空』ではありません。途中。何回かリズムも含めて大きく展開して行く曲なんですが、少しプログレ的な香りもあります。
それに輪をかけているのがパット・メセニーさんのピカソ・ギターです。
42弦あるこのギターは実にハープ的と言うか琴的と言うか・・・。使い方が難しいギターだと想うのですが、ここでは普通のギターと同じ弾き方を基本的にはしていて、所々特徴的な和音を鳴らしていて効果的に使用されています。
9曲目はイン・ア・クワイエット・プレイス。
マーク・ジョンソンさんのテーマからスタートするバラードです。ビル・フリーゼルさんがテーマを続けて、ナイロンギターでパット・メセニーさんがバッキングをします。
ファーストソロはパット・メセニーさん。
ナイロンギターの音が綺麗です。パット・メセニーさんはギターピックの使い方が独特でピックの丸みを帯びたところで弾きます。実はこの部分でナイロン弦を弾くと温かく豊な音が出るんです。もちろん良いフレーズがあってこその良い音であることは言うまでもありませんが・・・。
10曲目はフォー・ア・サウザンド・イヤーズ。
パット・メセニーさん作曲のワルツです。ここでもギター2人のハーモニーが実に綺麗です。
ファーストソロはマーク・ジョンソンさん。
作品の最後にジャズらしいソロを聴かせてくれます。メロディアスなフレーズで良く歌っています。またそれをサポートするギター2人のバッキングが控えめに盛り上げています。
そしてワルツの優しい雰囲気の中で『アメリカの空』は暮れて行きます・・・。
と想ったら一番最後にSE的な音・・・。実はwalkingの時には終わったと想って止めてしまったのですが聴き返してみたら入っていました。なかなかその意図はわかり難いのですが、アメリカを代表する曲の一部がメインで流れてきますので、なるほど!と言う感じもします・・・何の曲かは聴いて見てください。
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マーク・ジョンソンさんは自分にいつもついてまわっているビル・エヴァンス・トリオ最後のベーシストと言う呼ばれ方に対して、ビル・エヴァンスさん的なピアノトリオと言うフォーマットをある意味崩す為に、このフォーマットにしたと言う意図があるようです。
確かにギター2本とベース、ドラムと言うスタイルは良くある形です。
その場合にはどうしてもギターソロが中心でそのソロと言うものを通しての対決的な雰囲気になることが多いです。しかしベース・ディザイアーズやこの作品のようにギターのハーモニーを絶妙に響き合わせると言う作品はあまりないスタイルですね。
ある程度計算された形でのプレイではあると想いますが、それぞれがリハーサルの短い時間で相手のプレイを理解して、そしてハーモニーがぶつからない様に相手の音を良く聴きながらプレイをすると言う、基本的なことでありながらも、実に高度なテクニックの上での展開です。もちろんこのハーモニーにはマーク・ジョンソンさんのベースも絡んでいます。
この三位一体とした絶妙なハーモニーの妙!が魅力で、そこにはギターと言う楽器の存在すら感じる必要がない程の美しさがあります。
もちろんソロの部分などでの聴き所は満載ですが、最後まで聴いてみて残った感覚は、ソロではなくやはり全体的なハーモニーとバランス。
実際にパット・メセニーさんのプレイはいつも通りのプレイではあると想いますし、その時々では印象的なプレイですが、聴き終わってみると意外に印象が薄いんです。
それは完全にこのハーモニーの中に組み込まれていて、あの強烈な個性まで溶けてしまっている!と言う感じでしょうか・・・。
このハーモニーとバランスはビル・エヴァンス・トリオでのキャリアがベースになって生きていると想います。ビル・エヴァンスさんのピアノのハーモニーとバランスをギター2台に置き換えたと言えないことも無いわけですから・・・。もちろん単純に置き換えたわけではなくて、あくまでもベーシックな部分での話ですが・・・。
そう考えるとマーク・ジョンソンさんはやはりビル・エヴァンス・トリオ最後のベーシストであり、さらにビル・エヴァンスさんはやはり偉大!と言う結論になるのでしょうか・・・。
何はともあれ、『アメリカの空』と言う大きなテーマの上で、マーク・ジョンソンさんは2人の偉大なギタリストを見事に演出していると言うわけです。
(CD TOTALTIME:53:23 / Walking消費カロリー:214.6kcal
walkingには・・・のんびりとしたアメリカンなムードが暖かい陽射しに良く合いました。)
![]() | ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング マーク・ジョンソン ビル・フリゼール パット・メセニー 曲名リスト 1. フェイス・イン・ユー 2. ゴースト・タウン 3. サマー・ランニング 4. ウィズ・マイ・ブーツ・オン 5. ユニオン・パシフィック 6. ポーチ・スウィング 7. ディンギー・ドング・デイ 8. マックスとベンの冒険 9. イン・ア・クワイエット・プレイス 10. フォー・ア・サウザンド・イヤーズ Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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