Walking de Music

2007年10月10日 16:12にアップしたエントリーです。

ひとつ前のエントリーは火の鳥/ジョン・マクラフリン&マハヴィシュヌ・オーケストラ BIRDS OF FIRE/MAHAVISHNU ORCHESTRAです。

次のエントリーはストラップハンギン/ブレッカー・ブラザーズ STRAPHANGIN'/THE BRECKER BROS.です。



オフランプ/パット・メセニー・グループ 
OFFRAMP/PAT METHENY GROUP

Offramp

昨日は全国的な雨模様の一日でしたが、午後の雨上がりの雲がまだ厚く広がっている中でのwalkingでした。と言うことでパット・メセニー・グループオフ・ランプwalkingをしました。


パット・メセニー・グループの1982年のリリースで3枚目の作品になります。言わずと知れた名盤なんですが、これまたじっくり通して聴くのは久しぶりになります。前作アメリカン・ガレージ(*)そして1作目の想い出のサン・ロレンツォ(*)と比べてどうでしょうか・・・。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

1曲目は舟歌
”レコードの針飛びノイズ”の様なサンプリング音でのリズムに”心音の様なドラム的な音”。そして煌びやかなパーカッションに重なって、今聴けば定番のギターシンセの雄叫び・・・当時リアルタイムでもし聴いていればこの音は一体何?ギター?シンセサイザー?と言う感じになったと想います。ものすごくインパクトのあるスタートです。また前作アメリカン・ガレージとのギャップに戸惑ったと想います。

今までとの大きな違いはご存知の通り、ギターシンセを使用していることと、もうひとつはシンクラヴィアを使用していることです。

シンクラビアについてはパット・メセニーさんの使用ギターのクレジットにシンクラヴィア・ギターと言う記述があります。果たしてシステムとしてどこまで使用していたのかは解りませんが、この1曲目のイントロから推測すると、かなり本格的に使用していた様に推測出来ます。

ギターシンセとシンクラヴィアについてはとりあえず置いておくとして、曲は、様々なパーカッション、そしてロングトーンの美しいストリングス音のシンセ。時折聴こえる琴のようなサウンドのギターの様な音。さらにたくさんのマテリアル・・・。そして常に一定のテンポのイントロの”針飛びノイズ”のカウントと”心音のドラム”・・・。これらをバックにフリーテンポに近い感じでギターシンセの雄叫びが続きます。

そしてパット・メセニーさんのメロディに少し遅れてライル・メイズさんのシンセが和音を刻んでいきます。この辺りはかなりフリーな感じなんですが、良く計算されたアレンジだと想います。
また、実にいろいろなマテリアルが入っていますので、この辺りもシンクラヴィアと言うシステムの機能をフルに使用しているという感じですね。

それにしても何故舟歌なのか?と疑問があったのですが、イントロのギターシンセの雄叫びが汽笛のイメージなんですね・・・たぶん。

2曲目はついておいで
つい最近までステージでは必ずと言って良いほど演奏していたパット・メセニー・グループの代表的な曲です。今更私がいろいろ書く必要も無いほどの名曲ですね。

この曲は当時のライヴでフリートウッド・タイプの曲としてクレジットされて演奏していたそうです。
フリートウッドと言えば、フリートウッド・マックのことですね。私の愛聴盤でもある1977年に大ヒットした作品(*)の中のスティービー・ニックスさんの創ったドリームスと言う曲にインスパイアされた曲なのでしょうか・・・。ベースのリズム、そして全体の”まったりとしたリズム”などは確かに似ています。
このような型紙があっての作曲だったと聞くと、なにか私たちアマチュアが曲を創る時の作業に似ていてちょっと身近に感じて嬉しくなります。でもそれは単なる、ぬか喜びで、実際は言われなければ気がつかないほど見事に自分達の個性を出して名曲へと仕上ているわけですね。一瞬でも同格にしてしまった自分が恥ずかしくなるような名曲、名演です・・・やはり。

その個性の極めつけがリズムと音色だと想います。
リズムは基本的に淡々とした中にも”まったり”としたリズムを連続します。これはドラムのダン・ゴットリーブさんのシンバルワークとナナ・ヴァスコンセロスさんのパーカッションが絶妙な味と雰囲気を出しているから。このシンバルワーク(ハイハットでリズムを刻まず、サイドなどで刻むスタイル)は後のパット・メセニー・グループにおいては最も頻繁に登場するドラムのリズムパターンになります。またパーカッションも実に効果的でこのようなパーカッションスタイルも後のグループの代表的なサウンドになります。クレジットを見るとこの作品でのナナ・ヴァスコンセロスさんはスペシャル・ゲストになっています。メンバーでは無かったようですね。

もうひとつの極めつけの個性は音色。
これはテーマを奏でる笛の様なシンセとヴォイス。この録音でははっきりとしたヴォイスは聴こえないのですが、全体的なシンセそのものがヴォイス的な音でそこに実際にナナ・ヴァスコンセロスさんのヴォイスがかぶっているように聴こえます。このパターンと音色も後のスタイルになりますね。

更に、一番大きい部分はやはりギターシンセ。この曲はギターシンセでソロを弾きたくて創ったと言う感じさえする、まさにぴったりの音色だと想います。もしこのパット・メセニーさんのソロをノーマルなES-175のクリアトーンや歪み系のギターの音だったら・・・と、想ってみても想像することさえ出来ないほど、ギターシンセが完璧にはまる曲です。しかもあの音でなければならないと言う必然性も感じます。

エンディングでの下へ引っぱる形でのギターチョーキング(普通チョーキングは上に持ち上げるのですが、パット・メセニーさんの場合は地面方向へ引っ張ります)の雄叫びから、最後のメジャー音階でライル・メイズさんのピアノが静かに残るところはいつ聴いても肝!です。

3曲目はオー・レ
この作品の邦題は以前愛のカフェオーレと言われていたと記憶していますが、最近はオフ・ランプと原題で言われていますね。そのカフェオーレはこの曲を指してのことだったのでしょうか。

変拍子でやや難解な曲調を持ったナンバーです。この曲でようやくライル・メイズさんのピアノを聴くことができます。またナナ・ヴァスコンセロスさんのヴォイスとラップの様な語りがなんとも言えない雰囲気を出しています。

ファーストソロはパット・メセニーさん。
ノーマルな音で実にリリカルに演奏しています。音的にはややソリッド的な部分もありますので、もしかしたらこれはES-175ではなくてローランドのギターシンセのノーマルトーンかも知れません。2~3音の和音を利用して情緒的なソロです。またこのソロのバックでのナナ・ヴァスコンセロスさんのヴォイスが実に綺麗ですね。
それに続いてライル・メイズさんのピアノソロは得意の高音を囁くように静かに美しく奏でています。

激しい展開は無くて一定のリズムの中で美しく聴かせてくれる曲です。

4曲目はエイティーン
打つ込みらしきシンセの速い8ビートのパッセージにベースとピアノの低音でのユニゾンが絡んでスタートするアップテンポの曲です。ベースはこの作品から登場のスティーヴ・ロドビーさん。基本はアコースティック・ベースなんですが、この曲はエレクトリックベースです。細かい音のフレーズなんですが、テンポキープが見事ですね。

テーマらしいテーマがあると言うよりは、どちらかと言うとコード進行の展開とリズムで進んで行く曲なんですがドラムの音がやや控えめで、特にスネアがだいぶ後退してい、代わりにパーカッションが強いビート感とグルーヴを出している感じがします。

私がパット・メセニー・グループに対して一番最初に持ったイメージと言うのが、”2拍4拍のビートの弱い音楽”と言う感覚でした。もちろんビートはあるのですがロックのような強烈な2拍4拍を感じない、どちらかと言うとスーッと流れていく感じ・・・。もちろんあまり聴きこんでいなくてザッと聴いた感覚だったのですが・・・。この理由が解ったような気がします。この曲に限らず作品全体的にそんな感じがします。

5曲目はオフ・ランプ
オーネット・コールマンさんにインスパイアされて出来たと言う曲。全体的にはフリージャズ的な曲です。
ここでのパット・メセニーさんは想いっきりギターシンセを弾きまくると言うプレイです。2曲目のついておいでもギターシンセならではの曲と言う感じでしたが、この曲もギターシンセを弾きたくて書いた曲と言う感じがします。
確かにこのようなフリーな曲で想いっきり弾くためにはギターシンセが良く合うと想います。気持ちが良さそうに弾いている姿が目に浮かぶようですね。

中間のガラスが飛び散るようなピアノとシンセのSEを挟んでスティーヴ・ロドビーさんのソロです。
一聴すると地味な感じのするフレーズなんですが、堂々とした重さを感じるソロです。このソロなどを聴いていると、申し訳ないのですが、ソリストではなくバックで全体を支える柱的な役割に適していると言う感じを受けます。実はベーシストに一番必要なことがこの柱的役割なんだと想います。
またこのソロのバックでのナナ・ヴァスコンセロスさんのパーカッションワークが見事です。

6曲目はジェイムズ
いろいろなセッションでのジェイムズがありますが、オリジナルを聴くのは久しぶりです。セッションでは曲調の割りには熱くなるような演奏が多い気がするのですが、オリジナルはイントロから非常に爽やかで、リズムも基本的には流れるようなリズムです。セッションだとドラマーがスネアをいろいろと入れてくることが多いのですが、このバージョンではほとんどスネアは入っていない感じです。ですからドラムとパーカッションが一体になって流れるようなリズムを創っています。

パット・メセニーさんのソロは基本は曲調に合わせたフレーズで爽やか系のフレーズなんですが、そのアドリブが面白いコード進行のためか、CD Time=2:10過ぎからは速いパッセージのメセニー節が炸裂です。
それに続くライル・メイズさんのソロはスタートではかなり低めの音でのコードワークを利用したフレーズです。後半になるに従って特徴である高音域での綺麗なフレーズの流れるような展開を聴かせてくれます。
それにしても良い曲です。名曲ですね。聴いていても良い曲ですが、弾いていても多分気持ちが良い曲なのだろうと想います。まさにセッション向きの楽曲ですね。

7曲目はザ・バット・パートⅡ
イントロから非常に映像的なバラードです。メロディはギターシンセですが、あの雄叫び的な弾き方では無く、実に上手くコントロールをして雰囲気を出しています。
曲全体がスローでクラシカルでさらにコード進行が美しい・・・。そして、その合い間を縫ってメロディが情緒的に奏でられています。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

久しぶりに通して聴いて見ると、パット・メセニー・グループの現在の演奏スタイルに不可欠な要素が盛りだくさんで、この作品で方向性は完全に定まったと言う感じさえします。

まずはギターシンセやシンクラヴィアと言うエレクトリックなものを大々的に使用しているということがあります。
ギターシンセはこの時の音から現在も基本的には変わっていない音です。今やパット・メセニーさんの音とも言える完全にオンリーワンの音です。ギターシンセの使い方を単なるシンセではなくて、”固有のソロ音”として最初から使用したと言うことがすごい事です。しかしかなり特徴のある音ですので、その使い方に若干の躊躇があるのか、フリーソロ的な曲での使用が主になっています。多分ギターシンセとその音でアドリブをするイメージが1曲目の舟歌や5曲目のオフランプだったと言うことですね。でもついておいでは見事にギターシンセが8ビートにはまっていますので、普通の楽曲の中やソロでも使用できる確信が出来たのではないかと想うのです。

次に、エレクトリックなものを使う反面、アコースティック・ベースを使用したり、アコースティック・ギターを使用したり、またヴォイスと言うものを使用したりして、ヒューマンな部分を融合させようとしている感じが伝わってきます。

パット・メセニーさんは前にリリースされたライル・メイズさんとの作品ウィチタ・フォールズ(*)についてアコースティックギターとシンセと言う取り合わせ、つまりエレクトリックなものとヒューマンなものの取り合わせを”最高”と言っています。
その意味では、ウィチタ・フォールズの方がグループの前作アメリカン・ガレージより、このオフランプの原型に近いと言えるのではないかと想うのです。

さらに、ウィチタ・フォールズパット・メセニーさんが言っている自分の活動の中の”ECM的スペイシーなもの”になります。
当初はグループの活動とは別の活動として捕らえていたようですが、オフランプがその部分を現実に引き継いでしまったような感じがします。
つまりそのままパット・メセニー・グループの活動と合体してひとつの活動になったと言うことだと想います。
ですから前作との決定的とも言える違いのひとつであり、さらに現在のグループの特徴でもある”EMC的スペイシーなもの”と言うコンセプトがグループに加わったと言うことが言えると想います。

そしてパーカッションが入ったと言うことも大きいことです。ナナ・ヴァスコンセロスさんのこの作品での要素はとても重要だと想います。
ドラムをある意味パーカッションと融合させて大きなリズムを創ると当時に、打ち込みなどと実際のパーカッションを合わせて、エレクトリックな中にもヒューマンなパーカッションプレイを入れている・・・
エレクトリックとヒューマンな部分の、上手いコラボを演出しています。

そしてヴォイス。まだこの作品では密やかにヴォイスが入っていると言う感じなんですが、シンセの音などもヴォイス的なものが結構あって、これが以降のヴォイスでのテーマなどに繋がって行くことは異論の無いところですね。さらにヴォイスがヒューマンな部分を演出することも異論はないことろです。

フュージョンギタリストが歌ものを入れることについてラリー・カールトンさんは”マーケット的なことで歌を入れている”と言うようなニュアンスのことをインタヴューで言っています。
それに対してパット・メセニーさんは”自分は歌は全くダメなんだ”と言いながらも、歌のバックでの演奏が好きなことと、ECMはプレッシャーを与えずむしろ逆で自由に何でもやらせてくれる、と言っています。
このレコード会社の太っ腹な姿勢もこの作品を生み出す土壌にあったと言うことですね。

(CD TOTALTIME:42:42 / Walking消費カロリー:171.65kcal
 walkingには・・・ついておいでで少し大またでwalkingするとかなり良いです!合います!。)

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Pat Metheny Group

曲名リスト
1. Barcarole
2. Are You Going with Me?
3. Lait
4. Eighteen
5. Offramp
6. James
7. Bat, Pt. 2

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コメント (7)

超愛聴盤です。このアルバムを聴くと頭がスッキリします。
舟歌の後についておいで、オフランプの後にジェイムスという急→緩の流れが好きですね。
自分の中ではオーレが1番のお気に入りで、このオフランプのイメージになってます。

milkybarさん
コメントありがとうございます。
”急→緩の流れが・・・”確かに良いですね。私のオフランプのイメージは”舟歌→ついておいで”ですね。

『オフランプ』いいですよね~。PMGにしては暗さを感じるところが逆にいいです。
ayukiさんのおっしゃる通り『ウィチタ・フォールズ』の延長線にあたります。やはりナナが効いていますよね。

さて,私にとっての『オフランプ』は乱暴にも【ジャームス】1曲です。あのライル・メイズのキーボードを何度リピートしたことか,永遠の名曲だと思います。

セラピーさん
コメントありがとうございます。
ナナ・ヴァスコンセロスさんの役割が本当に大きい作品ですよね。これが後のPMGにとっても大きいことだったですね。
私にとっては、やはり【ついておいで】と【ジェイムズ】の2曲ですね。

 はじめまして
 オフランプは最高ですね。作りこみすぎていない荒削りなところが魅力だと思っています。
 「ついておいで」の2まわしめの、転調してからのソロでは、ギターシンセも1オクターブあげて、普通のギターでは出せない音程でプレイしていますが、この部分の「泣き」のメロディが本当に大好きで、昔エレクトーンとかでよく完コピしていました(笑)。
 フリートウッドな曲というのは初耳でしたが、僕としては彼らの「リアノン」というヒット曲が「C→Am→C→Am」というコードシークエンスを持っているので(ハ長調の場合)、雰囲気が似ているのかなと思います。

↑連続ですみません。
いきなり間違えていました。
リアノンのコードは「Am→F→Am→F」です。失礼しました。

hamakkoさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
「彼らの「リアノン」というヒット曲・・・」そう言われれば確かにそうですね。
「転調してからのソロでは、ギターシンセも1オクターブあげて・・・」この部分のパット・メセニーさんがフットスイッチを踏むところは映像的にもかなりカッコ良いですね。
エレクトーンを弾かれるようで音楽的にも造詣が深い方とお見受けいたします。また感想など聞かせてください。よろしくお願いいたします。

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