サンダー・ライヴ/カシオペア
今日はどんよりと曇っていてはっきりしない天気でした。と言うわけで今日は、カシオペアのサンダー・ライヴでwalkingです・・・。
このブログで約1年前にレビューした作品ですが、当時のレビューはどちらかと言うとwalkingに主体を置いていた感もあってそんなに深く聴いていないのが現実です。少し前にカシオペアの4枚目の作品メイク・アップ・シティ(*)をレビューしてカシオペアの作品も新しいものへと巡ってきているので、今一度この作品を聴いてみたと言う訳です。
音楽はいたってパーソナルなもの。その時の感情や精神状態でかなり感じ方が変わってくると想います。1年ぶりのこの作品はどうでしょうか・・・。
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01:スペース・ロード
オーディエンスの拍手と歓声から向谷実さんのシンセが奏でるスペーシーなSEと野呂一生さんのコンピューター音の様なギターの音。そして桜井哲夫さんのベースのハーモニクス・・・。そんなイントロダクションから名曲スペース・ロードの始まりです。
この野呂一生さんのギターの音は、ギターのピックの縁の部分を弦に垂直に当ててピックアップの辺りを叩く、と言う奏法。叩く場所によって音程を変える事が出来るので、この後の曲でも使用しています。当時のお気に入りだったのでしょうか。
ギターとエレピのアルペジオフレーズでイントロです。ここで耳に入ったのがドラムの神保彰さんのフレーズ。オープン・ハイハットの絶妙なニュアンスで16ビートを刻み、プラスしてサイドシンバルの刻みが右チャンネルから聴こえます。ドラムに詳しくないので、すでにどうやって叩いているのか解りませんが、曲調にあっていて見事ですね。
クロマティックのスケール練習の様なユニゾンを挟んで、4度づつ上がりながら一巡して元のキーに戻ると言う御馴染みのテーマです。いつ聴いても見事なテーマだと想います。こんな展開の曲を想い付くと言うことが凄いですね。
スローな部分での野呂一生さんのヴァイオリン奏法からギターソロです。
ソロのコード進行はA(onB)→C(onD)で、これもテーマ部分と同じ4度進行。ソロのコード進行の展開としてはフュージョン系でけっこう使用される進行です。その分スケールチェンジなどが陳腐になり易いのですが・・・。CD Time=3:44の駆け上がるフレーズなど、スケールが変わるところを野呂一生さんは上手く弾き抜けています。
CD Time=3:53では、イントロに続いてピックを使用したトリッキーな奏法を聴かせてくれます。
これは、チョーキングをした次ぎの音をピックの縁で押さえて音を出しそのままスライドさせて更に次ぎの音を出すと言う奏法。テクニック的には難しいものではないのですが、さりげなく入れると言うのはかなりのセンスを要求されます。野呂一生さんのこの部分は実にさりげないと想うのですが。
続いて向谷実さんのシンセソロです。
ここでは、バックの神保彰さんのドラムがけっこう暴れていて、それに桜井哲夫さんのベースが絡んでリズムがわかり難いのですが、スペーシーなソロを上手く展開しています。この辺りのバンドのグルーヴ感はまさにライヴ!って言う感じでいいですね。
再びクロマティックのスケール練習的ユニゾンを挟んで野呂一生さんのソロです。
ここはテーマのコード進行ですので4度の進行が連続します。
最初の8小節はメロディアスな展開で、ソロの入りとして惹き付けられます。CD Time=5:09のディレイを使ったフレーズから16分音符の速いパッセージで次の4度上がったコード進行に繋いでいくのですが、この部分の終りがやや帳尻合わせのフレーズになっています。
ソロの上手さを聴くひとつの指標として私が想っているのは、ソロのフレーズが綺麗に完結してから次のフレーズに繋がっているか、と言うことです。特に私の様なアマチュアミュージシャンが一番出来ない部分と言えます。ここでの野呂一生さんもやや合わせ的になっていて、このあたりは若さでしょうか。
次の8小節は最初速いパッセージでスケール的に奏でて、CD Time=5:16のチョーキングから今度はヴォリューム奏法で息抜きとアクセントのフレーズです。そして、スタッカートのラインから今度はスムーズに次の4度進行へ繋ぎます。
次ぎの8小節では、同じように速いパッセージを奏で、CD Time=5:31のチョーキングから今度はピックの縁を使用して押さえてスライドさせる奏法で息抜きとアクセントです。そして、コードの持っているデミニッシュな雰囲気のラインを速弾きで駆け抜けて次の4度進行へ繋ぎます。
この8小節は実にスケール的。まるで練習の様なフレーズです。もう一工夫欲しい!と言う感じも今聴くとするのですが、このフレーズが出てくるところは、やはりスケール練習を相当してたと言うことが伺えます。特にCD Time=5:42からのデミニッシュの部分はまさにコンビネーションデミニッシュの典型的なフレーズ。そして、後半からは更に倍の32分音符での速弾きで次の4度進行に繋げます。
最後の16小節は怒涛の速弾きフレーズ。かなり荒い部分や帳尻合わせ的な部分もありますが、それでも弾き切ってしまう、と言う、若さとエネルギーに溢れた演奏でグッと来るものがあります。
やはりこのスペース・ロードは名曲あり名演で、特に野呂一生さんのギターテクニックの上手さを味わうと言う意味において聴き応えがあります。
02:セイリング・アローン
桜井哲夫さんのフレットレス・ベースがテーマを奏でます。
ベースがかなりデッドで生々しい感じの音です。もう少しエフェクト処理をしても良かったような気がしますがこれもライヴらしい感じと若さを感じます。
ファーストソロは野呂一生さん。
ギターの音がノーマルトーンなんですが、少し薄い感じの音に深めにリバーヴが掛っています。かなり長めのソロなんですが、サインでサイズを決めているソロかな、とも想います。またコード進行も2コードでシンプル。ですからこの部分はかなり自由にメンバーが演奏をしている感じがします。
ですから、インタープレイ的な“しかけ”などもけっこうあって、CD Time=2:14では、野呂一生さんのポリリズム的なフレーズに桜井哲夫さんが絡み始め、さらに神保彰さんがすかさず絡もうとすると野呂一生さんがスーッとかわします。続くCD Time=2:22で今度は神保彰さんが“しかけ”ます。そしてソロの終りのCD Time=3:00では、野呂一生さんのフレーズに全員が絡んで強烈なグルーヴが生まれています。
このような感じの演奏って以後のカシオペアではあまり聴くことが出来ないような気がするのですが・・・。
続いて神保彰さんのソロです。
難しいキメのラインに乗ってのドラムソロです。前半のスネアを使用した比較的大人しい感じのフレーズから後半の超絶な展開へと繋がっていきます。CD Time=3:58からのタムまわしの後、向谷実さんがエレピの和音を重ねソロへ入っていきます。
テーマのコード進行でのソロですが、実にリリカルでジャズラインです。ここでも、先ほどの野呂一生さんのソロと同じ様にインタープレイを聴くことができます。
CD Time=5:38からは向谷実さんがエレピのリズミカルなフレーズで“しかけ”ます。さらにCD Time=6:00では、神保彰さんのドラムが派手に絡んできて一瞬テンポを失いそうで、かなりかっこ良い展開!ライヴ感があって実に肝!な部分ですね。
テーマに戻ってから続けて桜井哲夫さんのソロです。
ややフレットレスの音程に不安定さもありますが、良く歌っているソロだと想います。
CD Time=7:19の想わず感情が入ってしまった!と言う感じのするスライドを使用したフレーズから最後のトレモロの部分は、流れ的には面白い感じなんですが、トレモロの最後の部分がやはり尻切れの様な感じですね。この辺りも若さと言ってしまえばそれまでなんですが。
ちなみにベースがテーマを奏でているバックで向谷実さんがシンセでフレットレス・ベースの様な音でベースラインを奏でています。これは今まで聴いていたようで聴いていなかった今回改めて気が付いた部分です。
03:アイム・ソーリー
分数コードを半音づつ下げていくイントロ。実に野呂一生さんらしいアレンジです。
この曲はカシオペアの楽曲の中ではあまり有名ではないと想うのですが、隠れた名曲として個人的に大好きな曲です。
神保彰さんの絶妙なハイハットワークで創り出している少し跳ねた16ビートに乗って
クリアトーンの野呂一生さんがテーマを奏でます。
サビの部分はいかにも野呂節!
オクターブ奏法でのテーマに向谷実さんのヴォコーダーがいかにもカシオペア!って言う感じがします。
メロディも単純な繰り返し的なものではなくて、良く練られているのがいいですね。特にCD Time=1:08からの部分は、ピアノとベースの低音でのロングトーンにギターとシンセのテーマが追いかけるようなアレンジに続いて、メロディアスなラインからデミニッシュ的なコードで終わる部分は本当に良く出来ていると想います。
ファーストソロは向谷実さんのピアノソロ。
少し跳ねたラインがジャズっぽい感じを漂わせています。バックの野呂一生さんのカッティングもいいですね。
続いて野呂一生さんのソロです。
8小節づつ交互に、跳ねたリズムと4ビート的なリズムを繰り返す進行のソロです。
跳ねた部分では単音の速いパッセージなどを中心に奏でていますが、4ビートの部分では、オクターブ奏法やコード奏法などを使ってよりジャージーに攻めてきます。野呂一生さんのボキャブラリーの多さと広さを感じるソロです。
また、この曲での野呂一生さんのギターの音は、クリアトーンなんですが、前のセイリング・アローンとは違ってフロントピックアップを甘くセットした音。いい音だと想います。この音でセイリング・アローンも演奏したらよかったのに・・・って想いました。
さらに、この曲で効いているのは桜井哲夫さんのフレットレス。音程も安定しているし、出すぎず、引っ込み過ぎずでかなりいい感じがします。セイリング・アローンの演奏とは別人の様な感じさえしますね。
ただひとつこの曲で気に入らないところがエンディング。ロールして終りそうになるのですが、何故か中途半端な野呂一生さんのコードワーク・・・。そしてそれを半ば強制的に締めた感じさえする神保彰さんのスネア・・・。ライヴ感はあるのですが、良い曲だけにエンディングもバッチリ締めて欲しかったと想うのです・・・。
04:ハヴ・ア・ナイス・ドリーム
野呂一生さんのディレイの強烈に効いたギターのヴァイオリン奏法でスタートするバラードです。この曲は野呂一生さんのワンマンステージ的な曲。テーマもかなりいろいろとフェイクがされていてヴォリューム奏法やコード奏法など、聴き応えがあります。
最初から終りまで野呂一生さんのプレイに終始しますので、テーマとソロの明確な境が解り難い曲なんですが、CD Time=3:33からの、ピックの縁を使用したフレーズなど、じっくりと野呂節を聴かせてくれる、作品の中では箸休め的な1曲です。
05:ブラック・ジョーク
言わずと知れたカシオペアの初期の代表的な曲。ファーストアルバムカシオペア(*)収録のオリジナルより、かなり速いテンポで演奏されます。神保彰さんの16ビートが心地よいですね。
ソロは16小節のパターンを野呂一生さんと向谷実さんが交互に2回つづ演奏します。
野呂一生さんのスタート部分はエフェクターの踏み変えがモロに解ります。
この辺りは、良く言えばライヴの臨場感がある、と言うことなんですが悪く言えば、踏み変えミス、と言うことになります。
エフェクターを踏むタイミングってけっこう難しくて、音を延ばしたまま踏み変えると急に音が変化するので目立つんです。これは2回目のソロではもっと顕著で、最初の3小節は歪みが全く掛っていません。意図してそうしたのかも知れませんが、そうだとしたらあまり効果的ではない様に想います。勝手に邪推すると、踏み忘れたので少しこのままで弾いてからタイミングを見て踏んだのかと・・・。それか、何かトラブル的なことがあったのかと・・・。いずれにしても、ライヴステージではあるかも知れませんが、作品としてリリースしたものではちょっと・・・と想います。
ちなみに同じ様なミストーンとして神保彰さんのカウントの時に野呂一生さんがギターの弦に触れてわずかにノイズが出ています。これはアマチュアでは良くあることで、曲頭を間違えないようにと緊張して、そこの部分を押さえていてつい音が出てしまうと言うパターン。野呂一生さんの場合は緊張してと言うことはなかったと想うのですが、少し出てしまったと言う感じでしょうか。これも含めてミックスの時に何とか処理出来なかったものかと想うのですが・・・。あまりにもライヴ感が出すぎと言うか生っぽ過ぎと言うか・・・。
キメのパターンでそれぞれが短いソロを回す展開の後、神保彰さんのドラムソロです。
粒が揃っていて、しかもテンポが実に正確で見事なソロだと想います。また音がいいですね。さらにこれも今回改めて気がついたのですが、バスドラにかなり深くゲートが掛っています。それがショートで掛っているので、ただでさえ複雑なフレーズをより複雑にしています。作品全体の強烈なビート感に一役かっている効果的なエフェクトでもありますね。
続いて桜井哲夫さんのソロです。
スラップのソロなんですが、リズム中心のソロ展開。フレーズ的にはそんなに複雑なものはなくて、あくまでもビート感とグルーヴ感をポイントにしたソロになっています。ソロのエンドでテーマに戻るラインを奏でるのですが、この部分にもうひと工夫欲しい感じでしたね。なにか唐突にテーマに戻る感じがしてしまいます・・・。
テーマの後、最後に3連16分音符のユニゾンが入りますが、この部分は良く聴くと、けっこう勢いで弾いているような感じです。
細かい部分を突付いた感じになりましたが、それでもバンドのグルーヴと勢いを感じる演奏で熱いものが飛び交っている演奏です。
06:ミッドナイト・ランデブー
曲はもう何も言うことのない名曲です。オリジナルではストリングスやいろいろな音がオーバーダビングされていますがこの演奏の様なシンプルなライヴらしいこの曲もまたいい感じです。
ファーストソロは向谷実さん。
エレピの少しトーンを絞ったような音が良いですね。ジャージーなラインと重なってミッドナイトの雰囲気が出ています。CD Time=2:33のブレイクでのコブシが回っているような速い3連のパッセージに神保彰さんがすかさず反応して応戦するところはかっこ良いですね。
続いて野呂一生さんのソロです。
曲の持っている不穏なコード進行の特徴的なトーンを効果的に選択していて、こちらもミッドナイトの雰囲気が良く出ています。CD Time=3:36のブレイクでの1弦の解放を使用した3連のフレーズをブレイク後も継続していき、チョーキングからCD Time=3:45のリー・リトナーさんの様な、音の出発点を変えてダウンフレーズを繰り返すポリリズム的なライン、までの流れは見事です。
エンディングでは、タイトなリズムを刻んでいた神保彰さんのソロです。
ソロスタートのCD Time=5:53からの見事なシンバルワークは16分音符の3連。実に速いと言うか細かいですね。それに連動していたバスドラとスネアが3小節目から1拍半のパターンになる所はけっこう肝!です。
ドラムのソロでそのままエンディングです・・・。
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今回1年ぶりに聴いて想ったのは、やはり前回と同じで、荒さと若さ。
特に今回じっくり聴いたので、演奏自体のミスや未熟なところなどが特に耳につきました。ですから少し辛口と言うか、重箱の隅をつつく的なレビューになってしまったかな、と想っています。
でも、カシオペアが当時持っていたエネルギーと勢いは超強烈で、それが未熟さをしっかりとカバーしている名盤です。
また、音が全体的に悪いと想いました。これは、それぞれの楽器の音とか音色と言うことではなくて、ミックスダウンでの全体的な音のことです。デッドに録音されていて左右の分離はしっかり出来ているのですがあまりにも生っぽ過ぎる感じがするのです。良い意味でライヴ感があって、まさに目の前で演奏をリアルにしていると言う感じではありますが・・・。
さらに、一番感じたのはかなり“ジャズしている”って言うことです。
どちらかと言えば、カシオペアはバンドアンサンブル重視でけっこうカッチリとしたバンドと言う感覚でしたが、この作品を聴くと、荒いとか適当と言う意味ではない“ラフさ”があって、ソロのバックなどでも決まっているのはコード進行のみで、後は自由にソリストにインスパイアされながら奏でているような部分が多い気がします。
特に2曲目のセイリング・アローンでの野呂一生さんのソロの部分などは、各自がかなり自由に演奏していて、もちろんインタープレイの“しかけ”などもたくさんあり、さらにソロサイズ自体もサインで終わっているような自由さがあります。
このような“ラフさ”のあるジャズ的スタイルは以後のカシオペアではあまり聴くことが出来ない感じがします。
どちらかと言うとアンサンブル重視で、作品も即ライヴ的なものが多く、音もシンプルで、スタジオでの演奏をそのままライヴで展開している感じがするのです。それはそれでもちろん魅力的であって、私も好きなんですが、例えばこの演奏のように、インプロビゼーション重視で“ラフさ”のあるジャズ的スタイルを推し進めていったら、また違ったカシオペアになって、それはそれでけっこう面白いバンドになったかも知れない・・・って想うのです。
ミックスダウンの時にもう少し細工をすれば、荒さやミストーンなどカバーが出来てもっと洗練された作品になったと想います。
しかし、そうしなかったと言うのには、カシオペア持っている良い意味での“ラフさ”の部分と若さが生み出す強烈な勢いをプッシュすると言う意図を感じます。
勝手に邪推をすると、インプロビゼーション重視で“ラフさ”のあるジャズ的スタイルと言うバンドの方向性も、もしかしたら当時あったのかも・・・。
もしそうだとすれば、これは向かう方向性が変わったと見たほうがたぶん自然かと・・・。
そのきっかけが次の作品のメイク・アップ・シティ(*)だと想うのですが、さらにその次の作品のアイズ・オヴ・ザ・マインド(*)がやはりキーアルバムのような気がするのですが・・・。いかがでしょうか?
(CD TOTALTIME:41:57 / Walking消費カロリー:168.64kcal
walkingには・・・勢いのある作品なのでかなり合います!)
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