Walking de Music

2007年12月26日 00:17にアップしたエントリーです。

ひとつ前のエントリーはブルー・マター/ジョン・スコフィールド BLUE MATTER/JOHN SCOFIELDです。

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マイケル・ブレッカー/マイケル・ブレッカー 
MICHAEL BRECKER/MICHAEL BRECKER

Michael Brecker


クリスマスも終り後は年末になだれ込んで行くだけですね。この時期になると必ず今年を振り返って・・・と言うことになりますがこれも恒例。と言うことで今年を振り返る意味も込めつつ、今日はマイケル・ブレッカーさんのマイケル・ブレッカーwalkingです・・・。


今年のジャズ・フュージョン界で一番大きかった出来事と言えば、個人的にはマイケル・ブレッカーさんのこと・・・。
ですから、どうしても年内に一度は聴きたかったと言う訳です。そこで、どの作品にしようか?と考えましたが、約1年前にレビューさせていただきましたこの作品を再度聴いてみることにしました。
その時は細かいレビューではありませんでしたので、今回はじっくりと聴いてみました・・・。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

01:シー・グラス
シンセのまるで賛美歌の様なコードが響く中、マイケル・ブレッカーさんのテーマがゆったりと始まります。
ドラムのジャック・ディジョネットさんのサイドシンバルが3/4拍子のリズムを刻み始めて、そこに絶妙なタイミングでスネアが絡み、さらに3連4分音符でポリリズム的なフレーズを刻むと、待っていたかのようにマイケル・ブレッカーさんが低い音のブロウからソロを奏でます。

曲はあくまでもスロー。そのテンポにノッて朗々と歌い上げていきます。
そのゆったりとしたフレーズの合い間を繋いでいる速いパッセージが、滑らかでよりスローなフレーズを引き立てています。
CD Time=3:22からの独特な奇数音列のフレーズから、CD Time=3:28の駆け上がりフレーズに続くタイムを少しずらした様なスタッカートなライン、CD Time=3:34のフラジオを使った雄叫びフレーズで登りつめ、低い音から駆け上がってフラジオを叫ぶフレーズを2連続。この流れは肝!です。
特に、駆け上がり2連続フレーズは、どこかで聴いたことがあるようなフレーズ・・・。そう、パット・メセニーさんが名曲ついておいででも使っていたギター・シンセで良く使用するフレーズです。
想わぬ2人の共通フレーズを聴いて、何か嬉しくなりました。

その後は、マイケル爆発!と言う感じで速いパッセージを中心としたフレーズで攻め込んできます。
CD Time=3:55からやCD Time=4:06からのポリリズム的なフレーズは、繰り返しのシーケンスなんですが、まさにマイケル節!CD Time=4:00の息切れしているような高音のひと吹きは、完全にイってしまった!と言う感じさえします。
また、このマイケル・ブレッカーさんの攻めに対して、シンセは悠々と奏でられていて、さらにピアノのケニー・カークランドさんも綺麗に、冷静に絡んでいますが、ドラムのジャック・ディジョネットさんはかなり応戦しています。これが絶妙なコントラストを描いていて、この曲の持っている『マイナーな感じですが綺麗な響き』の中に聴こえる『熱いもの』を醸し出しています。

02:シズィジー
一転してアップテンポの4ビートの曲。マイケル・ブレッカーさんの怒涛のジャズラインに絡むのはジャック・ディジョネットさん。最初の部分は2人のデュオで曲が進んでいきます。
ここでの2人のプレイは驚愕のものがあって凄いです!基本的にはマイケル・ブレッカーさんの『しかけ』にジャック・ディジョネットさんが応戦すると言う形に聴こえます。しかしその応戦フレーズの中に忍ばせている『次なるフレーズ』を、ジャック・ディジョネットさんが『しかけている』のも事実で、このあたりのインタープレイの妙はまさに肝!です。

マイケル・ブレッカーさんがテーマに入ると、ベースのチャーリー・ヘイデンさんがややファニーなベースラインを刻み始めます。
しかし、テーマが少し始まると、間には相変わらずマイケル・ブレッカーさんがソロを続ける・・・この感じを繰り返しながらも曲のメロディーは進んで行くと言う展開。まるで波の様にスーッと戻されるようなこの感覚が実にいいですね。

そして、そこから抜け出すようにケニー・カークランドさんのソロがスタートします。
このソロ部分の4ビートのグルーヴは物凄いスウィング感。これは今まで『波の様な感じ』があったから、より感じると言うアレンジの仕掛け。見事ですね。

そのスウィング感を引きずりつつ、マイケル・ブレッカーさんのEWIでのソロがスタートします。
ここでは微妙ながらも良く考えられている音の重なりで、独特の浮遊感と不安定さをもったソロラインを奏でていきます。

そして曲はベースのチャーリー・ヘイデンさんが2分音符のラインに切り替わり、さらにシンセも白球で2分音符のラインに。ドラムのジャック・ディジョネットさんが押さえ気味に4ビートを刻んでいき、少し静かな中にも先ほどのグルーヴがまだ継続しているような感じのパータンへ・・・。パット・メセニーさんのソロがスタートします。

ここでのパット・メセニーさんのソロは、この部分のテーマのモチーフを上手く使用しながらも得意のメセニーフレーズを連発しています。しかしあくまでも冷静に、必要以上に熱くならずに、と言う感じ。いつも以上に正確なピッキングとタイム感が溢れています。テーマとテーマが持っている雰囲気を完全に意識した奏で方で、淡々と綺麗な中にも、『らしさ』が出ている見事なソロだと想います。

03:チョイセズ
ダークな曲調のスローなナンバーです。
ここでのマイケル・ブレッカーさんは、曲調に合わせてかなりダークなフレーズを奏でていきます。速いパッセージはもちろん魅力があって凄いと想うのですが、この曲のソロのように強いタンギングでのフレーズと朗々と歌うメロディや絶妙なアーティキュレーションのニュアンスを聴かせてくれるソロもなかなか良い味を感じます。逆に速いだけではない上手さを聴くことができます。まあ後半のソロ・エンド近くからは、かなり速いパッセージが炸裂してはいるのですが。

04:ナッシング・パーソナル
軽快な4ビートにノッてケニー・カークランドさんのちょっとしたソロからスタートします。ユニゾンのテーマとテーマの間のピアノのフレーズが良いアクセントになっていますね。

ファーストソロはパット・メセニーさん。
ここでのコード進行はブルース進行。チャーリー・ヘイデンさんとジャック・ディジョネットさんの軽快な4ビートにノッてブルースラインを奏でていきます。
CD Time=1:59からはひとつの音、D=「レ」のみで8小節弾き切ってしまうと言う得意技のフレーズ。特にブルースを弾く時には良く出てきますね。
これは1弦と2弦で同じ音、D=「レ」の音を使って奏でます。同じ音を別のポジションでも奏でることが出来ると言うギターならではの奏法ですね。特にアクセントをつけるときに2弦をスライドさせてDの音を出します。フレーズ的には簡単に弾く事が出来るのですが、誰が弾いても『さまになる』と言うものではない、絶妙なアーティキュレーションの技を聴かせてくれます。

続いてマイケル・ブレッカーさんのソロ。
同じくブルース進行なんですが、あまりブルースらしさを感じない洗練されたソロラインを奏でていきます。
CD Time=3:45からの歯切れの良いスタッカートな8分音符の下降していく機械的なフレーズから、CD Time=3:52から始まる16分音符での繰り返しフレーズへ。この繰り返しのフレーズの始まりが小節の頭からではなくて、実に微妙な拍からスタートしているために、ポリリズム的に聴こえる感じが肝!ですね。また、このフレーズに対するジャック・ディジョネットさんの反応も流石です。

05:ザ・コスト・オヴ・リヴィング
マイナーなテーマを持つスローバラードです。哀愁の漂うメロディラインは演歌的とは言いませんが、けっこう日本人好みの感じがするラインですね。パット・メセニーさんのナイロン弦のギターが所々で際立って聴こえて、いい感じを演出しています。

ファーストソロはチャーリー・ヘイデンさん。
スローなテンポに合わせたリリカルなラインでメロディアスに奏でていきます。このような感じは一聴地味なソロなんですが、速いだけではないと言う典型的な円熟のラインだと想います。

そのチャーリー・ヘイデンさんの気を受けてマイケル・ブレッカーさんも前半はリリカルに奏でていくのですが、後半は効果的に速いパッセージを入れたソロを奏でます。

06:オリジナル・レイズ
EWIの多重奏法からスタートします。それにしても何とも言えない音の重なりです。合っていないようで、聴いていても違和感の無いと言う不思議な感覚のラインです。

インテンポになってからはステップス・アヘッドの曲の様な感じで進んでいきます。ずっとEWIでの多重奏法で奏でられていたメロディが途中からサックスに変わります。この部分になると個人的にはホッとします。やはりサックスの方がいいですね。急にヒューマンな感じが漂ってきます。

ファーストソロはパット・メセニーさん。
曲調がおおらかで、ややカントリー的な感じもあるので、パット・メセニーさんの世界にマッチしています。ソロラインもそれに準じたフレーズで、おおらかに歌います。

続くマイケル・ブレッカーさんのソロも前半は同じように、カントリフレーバーの少しあるラインをおおらかに奏でていきます。途中から段々と激しさを増していき、CD Time=5:22では再び16分音符の繰り返しフレーズ。それにジャック・ディジョネットさんが素早い反応で絡んでいきます。盛り上がったところでマイケル・ブレッカーさんの怒涛のパッセージ。CD Time=5:31からの明るいコード進行の部分でのメジャーなラインからラウドなフラジオで次のコーラスへ。見事な流れを持ったラインでいい感じです。
その後も激しさとメロディアスな部分を上手くミックスしながらソロを奏で、悟ったかのように静かにテーマに戻っていきます・・・。

07:マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ
マイケル・ブレッカーさんのカデンツァでスタートする超有名なスタンダードナンバー。
速いパッセージの連続からお馴染みのテーマへ。それでも絶妙なフェイクと時折挟む速いパッセージが見事です。
CD Time=1:00からの速いダウンフレーズからスタッカートで上昇していってテーマへ。そしてCD Time=1:09のラウドなフラジオのロングトーンに続いて、すかさずピアニシモのひと吹き・・・。このメリハリは凄い!のひと言です。
この後に続く、ラインの強弱を含めたアーティキュレーション、テーマとインプロヴィゼーションラインの融合は、言葉にならないくらい美しいラインです。

ドラムとベース、そしてギターでのバッキングでインテンポに。
この部分はカデンツァの部分と同じように、テーマなのか、アドリブなのか良く解らないくらいに、テーマのメロディとソロラインをミックスして奏でていきます。
テーマとして聴くならば、その絶妙なフェイクとアーティキュレーションにため息が出ます。
ソロとして聴くならば、そのテーマラインの使い方と全体の曲調を損なわない見事なラインに感動します。
まあどちらにしても凄い言うことで、まさに肝!です。

CD Time=3:28のサビ前の、コードトーンを的確に捉えたラインから、いわゆる艶のあるメロディを奏で、そして、CD Time=3:48の気だるく息を抜いた感じのダウンブロウから、CD Time=3:51からの少し詰まったような音を効果的に織り込んだラインを奏で、CD Time=3:59からの絶妙な音運びのラインで繋いでテーマに再び戻るところは、まさにサックスの色気を感じるプレイだと想います。

マイケル・ブレッカーさんの色気を感じるソロに続いてパット・メセニーさんのソロです。
なかなかこの様な『超』が付くスタンダードでのパット・メセニーさんのプレイを聴くことは少ないのですが、そのオーソドックスなコード進行に対してのアプローチに際立つものを感じ取れる演奏です。
ギターの場合、この様なスタンダードなコード進行に対してはどちらかと言うと、ギターの上下方向、つまり1弦から6弦に向かって、あるいは逆のパターンを使用したようなラインが弾きやすいラインと言えます。
これはコードを押さえた時に、それを分散してメロディを弾くことが出来ますし、コードトーンも捉えやすいと言えるからです。
しかし、パット・メセニーさんのこのソロはどちらかと言うと左右、つまりフレット間の横の動きでメロディを組み立てている感じがします。
この場合には、横方向でのコードトーンを理解していないと弾けないのは前提ですが、メロディが自由に選択できる分、よりメロディアスに弾けると言うことになります。

CD Time=4:51から連続するメロディは、まさにメロディが縦横無尽の特に横の動きに連動した音の移動のバリエーションを感じる演奏ですし、その反面CD Time=5:49の同じパターンを繰り返してグルーヴしていくと言う、ある意味ノンコード的なラインまで見事な演奏です。またソロエンド部分のコード奏法などは、完全に横の動きと言える珠玉のフレーズです。この演奏はまさに肝!個人的には名演と言いたい演奏です。

ソロの後のテーマは、解りやすくシンプルにメロディを奏でます。
そして、再びマイケル・ブレッカーさんの短いカデンツァがあって静かにエンディングを迎えます・・・。

この演奏がベストテイクだと想います。前回レビューしたジョン・スコフィールドさんの作品で電気が走ったと言う感覚を覚えたことを書きました。しかしこの演奏はその上をいきました。何回も聴いている演奏なんですが多分『今の私』に相当マッチしたのだと想います。
綺麗な言葉を選んで書くよりも、ストレートの方が伝わり易いでしょうか・・・体の中心から下のほうにかけて震えが来る感覚・・・。言葉にはし難いのですが、男性諸氏ならばお解かりいただけるであろう感覚と言いますか・・・。

いい演奏です。本当に・・・。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

それにしても凄い作品です。今までに何回も聴いていますが、今回改めてじっくりと聴いてみて、まさに名盤と言うのに相応しい作品だと想いました。
マイケル・ブレッカーさんのプレイは近作の方がテクニック的なことに加えて、『極めたオーラ』の様なものがバンバン出ていて円熟の域に達していると想うのですが、熱さとエネルギーと言う点においては、この作品の方に軍配をあげます。

それにしても、聴くたびに新しい感動を与えてくれるマイケル・ブレッカーさんはまさに恐るべし!です。
この作品に対して本人曰く
「5年経っても新鮮さの感じられる上質なジャズレコードを作りたかった・・・」
と言っていますが5年どころではありませんね。多分いつまでたっても新鮮さは失われない作品だと想います。

この作品に限らず、マイケル・ブレッカーさんの作品は
『現実にはありえない新作』がリリースされるのと同じように
聴くたびにニュー・リリース作品として自分の中では聴いていくことができる・・・
この作品を聴いてそんな風に想ったのです・・・。

まだまだ聴いたことの無い作品も沢山ありますので
私の中のマイケル・ブレッカーさんのニュー・リリースは多分永遠に続くのだろうと想います・・・。

(CD TOTALTIME:54:29 / Walking消費カロリー:219.02kcal)

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Michael BreckerMichael Brecker
Michael Brecker

曲名リスト
1. Sea Glass
2. Syzygy
3. Choices
4. Nothing Personal
5. Cost of Living
6. Original Rays
7. My One and Only Love [*]

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コメント (2)

ayukiさんこんにちは。

このアルバム、なんといってもNothing Personalが好きです。カークランドが参加した来日ライブを見たのですが、この時はイントロのピアノソロが怒濤の様で(しかも長尺)ものすごかったです。

O.ピーターソンといいブレッカーといい、世代こそ違うものの巨人が次々と他界した一年でしたね…。改めて合掌です。

猫ケーキさん
コメントありがとうございます。
人が亡くなるのは仕方のないことですが、作品を通して再び出会うことができる音楽って、やはりいいですよね。

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