今回は渡辺香津美さんの
スパイス・オヴ・ライフでwalkingをしました・・・。
この作品は1996年のリリースです。
渡辺香津美さんは、最近はクラシカルなアコースティックギター作品が活動の中心になっているようですが、その反面、ギタートリオと言うフォーマットも積極的に展開しています。
ギタートリオの場合はあくまでもエレクトリックな色彩が強いものが多く、ハードめなギターを聴かせてくれることが多いです。この作品もかなりハードだった印象がありますが、久しぶりのリスニング、どうでしょうか・・・。
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01:メランコ
いきなり宗教的な香りのする鐘の音から、神秘的な色彩をもったストリング風の音色。今回のライナーノーツを見る限り、キーボードやプログラミングの明記が無いので額面通りに受け取ると、この作品でのシンセの音は全てギターシンセと言うことになりますね。
その神秘的でスペーシーなイントロダクションに渡辺香津美さんのスチール弦のアコギが裂くように現れます。
この曲は以前ギターコピーしてライヴをしたことがありますが、その時、このフレーズが実に難しかったのを想い出しました。
今回聴いて見て想ったのは、もしかしたらギター3本でオーバーダビングしてる?と言うこと。
試しにバラバラにCDに合わせて弾いて見ると、実にしっくりきました。ミックスダウンの時に、1本のプレイを分離することは可能ですが、特にセンターに定位している低音の音は、それだけ単独で弾いた方がハマリます。まあ、あくまでも推測ですが・・・。
細かいフレーズから考えると6/8拍子と想われるこの曲は、独特のビートを持っています。
それを演出しているのは、ドラムのビル・ブラフォードさんとベースのジェフ・バーリンさん。特にドラムのフレーズが良く聴くと和風。お祭りの太鼓のような香りがしませんか?そう言えばメロディと言うか、アコギのリフもそんな和風テイストがありますね。
さらにそのドラムの派手さに対して、ベースのビートが最初の4拍を引きずった感じで流し、次の2拍でドラムに合わせるビート。このコンビネーションがうねりを生み出していると言うことだと想います。
CD Time=2:02からは、ドラムのスネアが3拍目と次の小節の1拍目、5、6拍目に入ります。一瞬4/4拍子になった?って想わせるリズムトラップが逆に心地よい感じがします。
渡辺香津美さんのソロがCD Time=2:12からスタート。
深めにリバーヴをかけて少し奥に定位しています。これはイントロのスペーシーさをそのままコンセプトにした様な音と言えますね。また、けっこう歪んだ音なんですが、輪郭が割合すっきりしていて耳に残る音になっています。
アーミングなどを効果的に使用していて、かなりロックなフレーズ展開。
渡辺香津美さんの凄いところは、このような自分のルーツを素直にさらけ出せるところだと想います。ジャズを演奏していると、つい『ジャズギタリストのロックはこうだぜ!単純なペンタトニック・スケールなんぞは弾かない!』みたいな感じでジャズラインが頻出することが多いのですが、そうではなくて、『ロックする時は純粋にロックする!』と言うある意味少年のような素直さで、一聴ベタになりそうな単純なスケールやトリッキーな奏法を、いかにも楽しそうに奏でるところが素適だと想います。まあ、もともと凄いので決してベタにはなっていませんが・・・。
渡辺香津美さんのソロの後は、怒涛のエンディングに入ります。
この部分は、ベースラインを聴くと4/4拍子に変わっているようですが、渡辺香津美さんはポリリズム的なラインを奏でていて更に、ビル・ブラフォードさんが、16分喰ったところから付点8分音符での3連をバスドラとスネア2発で叩いているようで(分析はしっかりしていませんが、多分・・・)、まるで『ズレた3/4拍子』のように聴こえます。
3つの異なったリズムの重なる様はまるで雪崩。怒涛の如く押し寄せてきます。リスナーが頼れるのはジェフ・バーリンさんのベースライン・・・。ドラムに耳が行ってしまうと・・・拍を失ってわけが解らなくなりますね。この部分は実に見事!で、まさに肝!
02:ハイパー K
渡辺香津美さんの歯切れの良いクリアなカッティングとジェフ・バーリンさんのベースラインがピッタリ合っている様が、いいノリを生み出しているミディアムテンポのナンバー。
しばらくしてインサートされるギターのアルペジオは指を開いて押さえなければいけない、いわゆるストレッチコード。聴いていると音程が順番に上がっていくので、ギターの低い弦から高い弦へ向かって弾くように想うのですが、実は何も押さえない解放弦を巧みに使用しています。
1回目のアルペジオは1弦の解放弦を使って4弦、3弦、1弦、2弦と弾いています。そして2回目は4弦、1弦、3弦、2弦と言う順番に弾きます。
この解放弦を使用することで、微妙な音程間隔でコード和音を響かせることが出来ます。まさにこれは、ギターの特性。最大限に生かした綺麗で見事なコードワークです。
テーマはショート・ディレイをかけてクリアトーンで渡辺香津美さんが奏でます。
コード奏法なんですが、これも実に微妙で、不協和音の数歩手前のような不安定な響きが逆にいい感じになっています。
続くテーマは急展開の8ビート。一転歪んだトーンで前進、また前進!と言うようなポジティブなメロディを奏でます。
するとまた転じて、今度はベースが綺麗で情緒的なメロディでテーマを引継ぎます。それが終わると、少しベンチャーズ的なノリの8ビートへ再び突入していきます。
渡辺香津美さんのソロも、1曲目とは違って、速いパッセージの中にもメロディアスなラインやコード進行を捉えたフレーズがあって、ジャズ的な香りのする落ち着いたフレーズを展開しています。
目まぐるしく変わる展開の曲なんですが、つながりに無理やりなところがなく、綿密に計算されたアレンジと言う感じがします。
03:シティ
左チャンネルのクリアトーンのギターと右チャンネルの歪んだトーンのギターにベースが絡んだユニゾン。その間を埋めるように響くドラムのスネア・ロールが、嫌でも気分を高めてくれるイントロです。
ビートは16ビート。ベースの印象的なラインから、ギターとのユニゾンに入ります。
そして再び左右のチャンネルに振られたギターの歯切れが良いカッティングに、まるでマシンのような正確さで16分音符のビートを刻むベースラインが重なります。強烈なスタートですね。
テーマの渡辺香津美さんは、やや線が細いながらも良くドライヴの掛った音でメロディを奏でます。それにしても心地よいのはベースライン・・・。
渡辺香津美さんのギターソロは、1曲目と同じように『ロックだぜ!』と言うフレーズ。かなりトリッキーな奏法を連発していきます。
それでもCD Time=2:18からのダウンフレーズから超速弾きラインの流れは、流石の上手さを聴きくことができます。それにしても心地よいのはベースライン・・・。
イントロのパターンで、そのブレイクを埋めるように渡辺香津美さんが怒涛のソロラインを展開し終わると、今まで心地よいラインを刻んでいたジェフ・バーリンさんのソロへと流れていきます。
まずソロの入りが、その前から続いている心地よいラインと見事に繋がっています。これを聴く限り、多分オーバーダビングなしの一発録音のような感じがしますね。
ソロのコード進行はワンコードなんですが、その中に実に巧みにコードを想定しながらラインの組立てをしています。
CD Time=3:19はジャズのⅡ-Ⅴ進行を想定したバップ的なフレーズ。CD Time=3:25のラインも実にコードの動きを感じさせるフレーズですね。エンディングに向かって繰り出される、ギターのようなスラーを多用したフーレズも見事としか言いようが無いラインです。
テーマに戻って、2コーラスめは再び怒涛のベースラインで加速して、ユニゾンフレーズからエンディングへなだれ込みます。
それにしても心地よいのはベースライン・・・。
04:ピリオド
リム・ショットとリズムの複雑なユニゾンでスタートします。
コード進行とベースラインの不安定さを感じさせるラインに、これまた不安定さを感じるギターの音がテーマを奏でます。全体的に不思議なムードを持った曲ですね。
CD Time=2:18からの渡辺香津美さんのソロは、今までのロック的なフーレズから、今度はいかにもフュージョン!と言う感じの展開です。
コード進行はワンコードなんですが、実にいろいろなスケールを操って、吸い込まれるような魔力を持って迫ってきます。
CD Time=3:16のジェフ・バーリンさんの高速トレモロフレーズを合図に、ドラム、ベースともにテンポアップしていきます。それに合わせて渡辺香津美さんも熱いソロで攻め込んできます。
05:UNT
厚いシンセサウンドで雄大な感じのするイントロに続いて、渡辺香津美さんの特徴がよく出ている、ちょっと和風なメロディライン。ここではベースとのユニゾンで聴かせてくれます。
一転サビに入ると、ポップなメロディに変わります。ビートもノリの良いラインで、ウキウキするような楽しさのあるサビですね。
エンディング近くで、サビのパターンで笛の音でのソロがありますが、これは多分ギターシンセだと想います。ちょっとウェザー・リポートでも意識しているのでしょうか?そんな感じもしますね。
ここでもバッキングフレーズが見事なのはジェフ・バーリンさんのベースライン。ノリとメロディの両方を上手くミックスしたラインでグルーヴを演出しています。
06:ナスタロヴィア
中世の香りがするシンセのパフォーマンス。これも多分ギターシンセで奏でられていると想われます。そこにクリアトーンのギターが絡んできて、幻想的なムードがさらに加速します。
その響きの元になっていたギターのリフが一転して、メジャーな響きのリフに奪われて、ドラムとベースがインサートしてきます。今までが闇だとすると、この部分はそこに差し込む光。
それでもベースが主導するテーマ部分から、次第にまたイントロの持っているマイナーで闇の世界に引き込まれていって、渡辺香津美さんのギターソロで再び中世の闇に戻されます・・・。
コード進行や切れのよいバッキングがかなり神秘的な雰囲気を醸し出しています。リッチー・ブラックモアさんが出てきそうな雰囲気?
渡辺香津美さんのソロラインもその雰囲気を十分に匂わせるラインで奏でます。
そのまま、段々とフェードアウトしていき、ギターのフィードバックのロングトーンが『叫び』のような響きで、次第に闇に引きずり込まれて消えていきます・・・。
07:林風
スチール弦のゆったりとしたカッティングから、クリアトーンのエレキでのアルペジオが絡んで来ると一瞬2曲目のハイパーKのリフレイン?と想ってしまいます。
ところが曲は全く違って、もっとまったりとした、ちょっと南国風なムードも漂わせながら進んでいきます。
CD Time=1:19からドラムの2拍4拍のビートが入ってくると、次第に曲は様相を変えていって、ギターがサビのメロディを弾き出すと、世界は一気に和風。CD Time=1:33からのラインは何となく童謡風と言うか、想わず「もういくつ寝ると・・・」と歌ってしまいそうな・・・。
渡辺香津美さんの創る曲の特徴のひとつがこの和風テイスト。特にメロディラインに良く表れています。そのテイストとジャズやロックのテイストが絶妙にブレンドされているのが見事ですね。
その和風テイストを裂くように、CD Time=1:58からファンク色を強めていきます。
この部分では、ベーシックなミュートでの単音カッティングをバックに歯切れの良いカッティングでのソロを聴かせてくれます。
08:J.F.K
オーソドックスなロックンロールの8ビートが刻まれてスタートします。
テーマの部分でハーフビートになると、ちょっとウェザー・リポートのバードランドのような雰囲気。テーマを何回か繰り返す間に、段々といろいろな音を重ねていって、CD Time=0:43からの最後の部分では、同じテーマのモチーフでコード展開を変えてきます。このワンポイントが非常に効いていて印象的。
さらに曲は展開して、今度はメジャーなメロディと8ビートでT-スクエアのような雰囲気。そして、再び8ビートへ戻っていきます。
CD Time=1:40からの渡辺香津美さんのソロは、軽快な8ビートにノッてクリアトーンでメロディアスに奏でていきます。そして、バックがハーフビートになると、エフェクトオンで耳あたりの良い歪みサウンドに切り替えて、複雑なコード進行を意識させないメロディアスで技巧的なラインを奏でます。
いろいろな要素が詰まっている曲で、バラエティに富んでいて楽しめる楽曲です。
09:レイジ・イン
幻惑されそうなムードのイントロ。ちょっとプログレ的なムードももちつつSE的な音をエレクトリック・ドラムやギターシンセで重ねていきます。
かなりフリーな感じで曲は進んでいきますが、ここで唯一、ノーマル音で勝負しているジェフ・バーリンさんのラインが実にヒューマンな感じを出しています。フレーズのみで、このエレクトリック軍団に立ち向かう姿は実にいいですね。
この3人の織り成す不思議な世界に段々とハマっていって、最後には・・・やっぱり幻惑させてエンディングです。
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実にいろいろなマテリアルが入っていて、ギタートリオを言う枠を超えている作品です。
前にも書きましたが、ライナーノーツをそのまま受け取ると、ほとんどの音がギターシンセで奏でて、オーバーダビングをしていると想われます。
実際に、これだけのことをするのであれば、キーボード奏者を入れたフォーマットにしたほうがすっきりする?と想うのは少し安直。
それは、ギターで奏でているシンセフーレズが実にギター的だからです。しかも、ノーマルなギター音を実にうまく絡めているので、その意味ではどう聴いてもギタートリオ作品と言うことがあてはまります。
それはまさに、スタジオ録音と言うことを意識したギタートリオ作品で、先日レビューをしたパット・メセニーさんのギタートリオ作品のライヴを意識したジャズ的アプローチとは異なりますね。
そうすると、今度はこのフォーマットでライヴをする場合に、どの音のマテリアルを取り出して演奏するかと言うことに注目しながら聴けば、楽曲の中でどの音、マテリアルが渡辺香津美さんにとって重要なポイントの部分であるのか!と言うことが解ると言う楽しみがあります。
このトリオでの映像作品スパイス・オヴ・ライフ・イン・コンサート(*)がDVDでリリースされていますが、その検証は後日に改めて・・・と想っています。
また、かなり肝!になっているのは、やはりベースのジェフ・バーリンさんプレイとタイトなドラミングのビル・ブラフォードさんのプレイ。
考えてみれば・・・考えなくても凄いメンバーで、ここにギタートリオに於けるメンバーチョイスの妙を見ることができます。
特にジェフ・バーリンさのプレイは、純粋にノーマル音で、しかもほぼオーバーダビングなしの勝負。このエレクトリックトリオの中でも、純粋なフレーズとノリの勝負になっていて見事です。
渡辺香津美さんらしい和のテイストも盛りだくさんで、聴き所の多い名作です。
(CD TOTALTIME:46:51/ Walking消費カロリー:188.34kcal)
![]() | スパイス・オブ・ライフ 渡辺香津美 曲名リスト 1. メランコ 2. ハイパーK 3. シティ 4. ピリオド 5. アント 6. ナスタロヴィア 7. 林風 8. J.F.K. 9. レイジ・イン Amazonで詳しく見る by G-Tools |
(*)本文に登場したCD・DVD
![]() | THE SPICE OF LIFE IN CONCERT 渡辺香津美 ビル・ブラッフォード ジェフ・バーリン by G-Tools |
![ジェイ・グレイドン・オール・スターズ・ライヴ・イン・ジャパン 1994.1.19 エアプレイ・フォー・ザ・プラネット[限定盤]](http://images-jp.amazon.com/images/P/B000XAMCA8.09.TZZZZZZZ.jpg)









コメント (4)
お邪魔します。
このアルバム私も大好きです。貴兄のブログを相づち打ちながら読ませて頂きました。
今でもよく聴きますが、あの緊張感がたまらなく刺激的です。また、何時聴いても新鮮で・・・凄い人が集まれば3人でもこれだけのサウンドをつくれるのだた認識させられた有難い一枚です。兎にも角にも凄いアルバムだと思います。
因みに一年前(苦笑)に「Ⅱ」をやっと入手してコチラもお気に入りですが、DVDは・・・まだです(涙)見たいですネ
投稿者: FUSION | 2008年02月02日 19:30
FUSIONさん
コメントありがとうございます。
実は「Ⅱ」がまだてに入っていないんです・・・。最初の作品もだいぶプレミアみたいですが・・・このような名盤は再販して欲しいですね。
投稿者: ayuki | 2008年02月03日 14:25
基本的には5人くらいのバンド・サウンドが好きなんですけど、トリオでありながら僕好みのサウンドだったと思います。
この頃になるとあまり聞き込まなくなっていて、曲を覚えるまでには聞いてません。
ライブはLDを買ってますが、DVD-Rに焼いて済ませています。
投稿者: WESING | 2008年02月03日 21:46
WESINGさん
コメントありがとうございます。
サウンドを聴くと5人くらいで演奏している位の音のマテリアルが入っていますね。
投稿者: ayuki | 2008年02月06日 13:27