Walking de Music

KYLYN 【その1】/渡辺香津美

Better Days レプリカ・コレクション-4 KYLYN (紙ジャケット仕様)

昨日は良い天気でしたが、今日は雨・・・。と言うことで昨日は渡辺香津美さんのKYLYNwalkingをしました・・・。

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この作品は1979年の作品。言わずと知れたJ-フュージョンの名作です。今更レビューも恥ずかしい気もするのですが、先日 milkybar音盤絵巻 さんのブログでその存在を知ったライヴ映像。見てはいけない禁断の世界を見てしまったような罪悪感と興奮があり、流れとしてやはり聴いてみたくなるのが真情・・・。
かなり久しぶりに聴きましたが・・・。

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walkingを終えて聴き終えたときの印象ひと言で言うと『・・・』。

KYLYNにはご存知の通りライヴ作品KYLYN LIVE(*)がリリースされていますが当時、とは言ってもリアルタイムではありませんが、ほとんどライヴばかりを聴いていた記憶があります。
さらに今回は映像を観た後ですので、その雰囲気と強烈なインパクトが先入観になってこの作品に対する過去の記憶が、頭の中で膨張していたのだと想います。
ですから、そのギャップのために『・・・』と言う感想になったのです。

1曲つづ細かく聴いていきます・・・。

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01:199X
2分弱と言う短い曲ながらも、ユニゾンを使用した切れのあるバッキングあり、ブラスの派手めのユニゾンあり、オーケストレーションされた部分がありと、いろいろな展開を持っています。いかにもスペシャルなオープニングに相応しい渡辺香津美さんの曲ですね。

イントロの部分から『ぶっ飛んで』いて、拍が取りにくい構造を持っています。

イントロの最初の4小節は、左チャンネルで白玉を奏でる坂本龍一さん(多分)のエレピと右チャンネルでイントロのメロディリフを奏でる益田幹夫さん(逆?)のエレピ、
そして村上秀一さんのドラム、さらに途中からエレピとユニゾンで渡辺香津美さんが入って来るという構成。

4拍目の終りの8分音符、つまり8分音符食って始まっているように聴こえるのですが、その後の2回目以降のパターンを聴く限りは食っていないと想われます。
しかし、食って聴こえてさらに拍を取りにくくしているのは村上秀一さんのドラムが全て。バスドラとスネアを入れる位置を8分音符分ずれて入れているので、結果として食っているように聴こえてしまうというマジックを使っています。
ですから、村上秀一さんのドラムだけを純粋に聴いていくと、8分音符分少なくパターンが終わっていることが解ります。まあ、実際は譜面を見ないと解らないのですが・・・。
これは、叩く方も難しいのですが、エレピとギターもなかなか合わせるのは難しいかと。

ですから、楽器を演奏したり、バンドをしていたと言う観点で言うと、どのようにカウントを取ってスタートしているのか!拍を取って演奏をしているのか!と言うのを映像で観てみたいですよね。個人的にはこのようなリズムのギミックは無条件に大好きで、特に、2回目に入ったときに感じる『ズレがぴったりと合っていく感覚』がやったり!と言う感じで実にカッコ良い!肝!です。

さらに2回目は、渡辺香津美さんがベースの小原礼さんとユニゾンで対旋律のようなリフを入れます。この展開がまた良いですね。このパターンは渡辺香津美さんのこの後の作品であるTO CHI KA(*)に収録されているユニコーンのアイデアに結びついている感じでしょうか。
また、ペッカーさんのパーカッションがさり気無く入ってくるところがビートに乗りを出しています。

次ぎの3回目、4回目は渡辺香津美さんのややワウをかけたような音でのカッティングが入り全体にスッキリと流れて次ぎのパターンへ入っていきます。4ビート風のパターンに入る前の部分での村上秀一さんのドラムが良いですね。まさにスティーブ・ガッドさんのような・・・と言うのがハマリます。

4ビート風のリズムに乗って渡辺香津美さんが奏でるテーマにブラスが重なってくるところは、かなりの盛り上がり。
でもそれを一度切るようにロングトーンのクラシカルで幻想的な展開に入っていって、次ぎの曲を導くように終わっていきます。


02:ソニック・ブーム
いかにもこの時代のフュージョンサウンドと言えるエッセンスがたくさん詰まった曲です。ただでさえジャンル分けがしにくいフュージョンなんですが、単なるインストと言うことではない、ある意味攻撃的なサウンドであるこの時代のフュージョンサウンド。
その大きな部分を占めるのが、高レベルのインプロヴィゼーション。

ファーストソロは益田幹夫さんのエレピ。
この音もいかにもフュージョンと言える音質です。耳にキンッと来るような高音を使用したフレーズと左手のバッキングを歯切れ良く使用したリズミックなフレーズはエレピソロのお手本のようです。

また、左チャンネルの渡辺香津美さんのバッキングは、単音をややミュートして、さらにフェイザ―かフランジャーをエフェクトした、これまた典型的なこの時代のバッキングパターン。
意外なのは右チャンネルの坂本龍一さんのピアノのバッキング。決してエレピのソロラインを邪魔することが無くそれでも主張をしていて、ジャズ的なバッキングではないのですが、ちょっと耳を想わず傾けてしまう、いい味を出しています。

続くソロは渡辺香津美さん。
当時の愛器、アレンビックのショートスケール・ギターのクリアトーンだと想われます。渡辺香津美さんは、スタンリー・クラークさんのような音をギターで出したいと言うことでアレンビックを使用したと読んだことがあります。
そのおかげかどうか解りませんが、ベースのアレンビックはスタンリー・クラークさんでギターは渡辺香津美さんの代名詞のようになりましたね。
それにしては、少し音質が丸く太いような気がするので、もしかしたら、この作品で使用しているギブソンのレスポールかも知れませんが・・・。どちらにしてもいい音です。

良いのは音だけでは無くてもちろんプレイも見事です。
クリアトーンなんですが、曲の雰囲気とか攻撃的な感じを出すために、あえてジャズ的なスタートでは無く、チョーキングで決めていくところがカッコ良いです。

CD Time=2:58やCD Time=3:00でさり気無く、それでいて粒揃いで切れの良い3連のアクセントはソロラインにスピード感をもたらしています。

CD Time=3:11からのコードを分散したフレーズからスケールチェンジをしてそのまま6度のインターバルにスライドを使用して上昇していくフレーズは、ギターのフレット上を横に移動していくフレーズで、ポジションを正確に押さえるのが難しいのですが、問題なし!と言う感じです。
さらに、この横方向へのアプローチはその後のCD Time=3:23のオクターブを使用したフレーズや、CD Time=3:35の解放弦の音を細かく入れて動いていくフレーズに結びついていきます。

このような一聴派手なフレーズはもちろんアクセントになるのですが、CD Time=3:20のような音の動きは少ないのですが、その選択と運びが見事で抜群にジャージーなフレーズも聴き応えがあります。

ソロのエンド部分が少し尻切れのようにまとまっているのが残念と言うか気になるのですが、それでも、途中何回かミストーンもありますので細かいことより全体的な流れとグルーヴを選んだソロテイクと言うことですね。その意図と選択は全く間違えではなくて、まさに高レベルのインプロヴィゼーションに仕上がっています。

再びテーマに戻ってから、イントロのパターンをバッキングに強力なソロを決めるのが清水靖晃さんのテナーサックス。

スタートでのいきなりのフラジオのロングトーンが既に『ぶっ飛んで』いる感じで良いですね。かなり熱いソロで、トリッキーなフレーズや叫ぶようなフレーズが多いのですが、それでも要所はジャズ的なラインで決めていきます。まさに、マイケル・ブレッカーさんのような・・・と言うのがハマリますね。
清水靖晃さんも真似ているけど物真似ではないのですが、聴いている方は勝手なもので、マイケル・ブレッカーさんだったらここは6連符の速いパッセージで下がるでしょう!などと想ってしまうのです・・・。

このソロで曲はフェードアウトしていきます。渡辺香津美さんのソロでフェードアウトではなくて清水靖晃さんのソロでフェードアウトと言うのは大正解ですね。
それくらい熱く、高レベルのインプロヴィゼーションだと言えます。


03:ウォーター・ウェイズ・フロウ・バックワード・アゲイン
渡辺香津美さんのアコギと坂本龍一さんのエレピ、そして矢野顕子さんのピアノで奏でる和風のテイストがあるアコースティックなナンバーです。この曲はずっと渡辺香津美さんの曲だと想っていましたが、今回お恥ずかしながら矢野顕子さんの曲だと言うことを始めて知りました。

渡辺香津美さんはエレキをメイン、アコギをデザート、つまり『おやつ』として名作おやつ(*)をリリースしたのですが、最近はめっきり『おやつ』がメインになりつつあります。
その世界観をこの曲で垣間聴くことができますね。その意味ではアコギ渡辺香津美さんのルーツ的な意味合いのある曲とも言えますでしょうか。

ここでのアコギはこれまた名器、オベーションのアダマスと言うギター。当時のアダマスも物凄く高い楽器でした。アレンビックと言い、アダマスと言い・・・。当時の名器のオンパレードですね。

渡辺香津美さんのギタープレイはもちろんなんですが、矢野顕子さんのピアノプレイが光っています。

曲は、ジャズ的でフリーな感じの中にもかなり計算をされたアレンジの跡が伺えます。どちらかと言うとクラシカルな側面を持っていてまとまりのある楽曲に仕上がっています。


04:マイルストーン
言わずと知れたマイルス・デイビスさんの名曲。とにかくカッコ良くて、一時期はこの演奏と言うか、KYLYN LIVEでのバージョンばかり聴いていた記憶があります。そう言えばKYLIN LIVEのバージョンはフェードインしていて全て収録されてはいなかったですね。

ギターのグリッサンドをきっかけにアップテンポでお馴染みのテーマがスタートします。小原礼さんのベースラインが歯切れ良くて、いいブルーヴを生み出しています。

テーマからサビのパターンへいくと想いきや、いきなりソロに入っていくアレンジが良いですね。ファーストソロは本多俊之さんのソプラノサックスです。

コードのベース音を使用したリズミカルなフレーズからスタートします。全体的に音の範囲を狭くして、さらに細かいフレーズのリフレインなどを多用して、どちらかと言うとメロディアスなラインで吹き抜けるのではなくて、感情高ぶるフレーズで攻めてきます。

それもそのはずで、バックの村上秀一さんのタイトなリズムと小原礼さんの絶妙なタイミングのおかずが入ったビート、さらに、左右の坂本龍一さんと益田幹夫さんのエレピのバッキングに、センターで歯切れの良い渡辺香津美さんのカッティング・・・。
この怒涛のビートの中で、感情が高ぶらない方かおかしい?とも想えるぐらいの強烈なグルーヴがあります。

続いてはサビの部分のコード進行をハーフテンポ的にして、トロンボーンの向井滋春さんのソロです。トロンボーンの音がまるで像の叫び声に聴こえるようなアフリカンテイストが漂います。
この部分が今までのアップテンポにひと呼吸を置くと言う意味で、物凄い効果的なアレンジになっていると想います。またペッカ―さんのパーカッションも効いていますね。

そして村上秀一さんのドラムのフィルを合図に再びアップテンポになり渡辺香津美さんのソロがスタートします。先ほどのハーフビート的な展開がさらにこの部分のソロのスタートにインパクトを与えていますね。

ここでの渡辺香津美さんの音は、かなり潰れたような音の歪み系です。線の細さも感じますので、ライナーノーツから拾ってみるとカスタムメイドのストラトキャスターではないかと想われますが・・・。

コード進行はワンコードなので、いろいろな仮想コード進行やいろいろなスケールを多用してバラエティに富んだフレーズを展開しています。
基本的にはチョーキングを使用したロック的フーレズとジャズのⅡ-Ⅴなどを想定したジャズラインと機械的に動いていくシーケンスラインを、これまた絶妙に組み合わせてワンコードと言う一歩間違えば陳腐になってしまうコード進行に、飽きのこない見事なソロを構成しています。

例えば、CD Time=4:18からのバップ的なフレーズからCD Time=4:21で機械的に上昇して行くシーケンスラインへ、そしてCD Time=4:25からのペンタトニックスケールを使用したロック的フレーズから、CD Time=4:28で1音半チョーキングを決める・・・見事な流れを持って迫ってきます。

多少荒削りな部分もありますが、それは全体の乗りやビートから考えると、かえって興奮状態が解って、さらにライヴ感があってよかったりします。

そしてその興奮はCD Time=5:15からのトレモロを連続するフレーズから頂点に達していきます。

CD Time=5:18では渡辺香津美さんも雑誌で言っていた『ワンコードの場合に有効な奏法』である、同じフレーズを繰り返すパターンをトレモロで奏でます。この感じはちょっとラリー・コリエルさんの影響が聴けますね。
その後のCD Time=5:26も同じパターンの繰り返しフレーズですが、今度は奇数でのポリリズムのラインを高速で連続します。このあたりはジョン・マクラフリンさんと言った感じでしょうか。
またバックでの村上秀一さんのハイハットとサイドシンバルを巧みに使用したドラミングがさらに興奮を高めていきます。

ソロの最後の部分は、コードが上昇して次ぎのパターンへのブリッジになっていきます。
この部分はスケールもどんどん変わっていく難しい部分なんですが、ここでの渡辺香津美さんのフレーズは、もう言葉にならないくらい見事で、コードの特徴的な音を捉えつつ、なお且つ興奮も持続しているような・・・感動すら覚えてしまうラインでまさに肝!です。

その後、ベースとギターのユニゾンをモチーフにしたパターンに入り再びテーマに戻ります。
そして、CD Time=6:51のテーマのフェイクとも取れる印象的な部分・・・。このアレンジは見事と言うか無条件にカッコ良い!アレンジです。また、曲中で1回しか出てこないのがさらに印象的です。

そしてテーマに戻って今度はサビに入ります。サビもここのみ一回しか出てきません。このアレンジも憎いものがあります。

さらにテーマに戻って、終りの部分ではテーマが8分音符を頭で奏でていくのに対して、バックの演奏をその裏ビートでユニゾンをさせてエンディングになります。

曲の面白さはもちろんなんですが、これだけ凝ったアレンジは実に聴き応えがあります。
それでも曲自体が単純なコード進行なので、勝負は言うまでもなくインプロヴィゼーションにかかっている部分が大きいです。

と言うことで、この勝負・・・もちろん勝ち!ですね。


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続きのトラックは次回に・・・。


(CD TOTALTIME:45:34/ Walking消費カロリー:183.18kcal)

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渡辺香津美 矢野顕子 坂本龍一

曲名リスト
1. 199X
2. SONIC BOOM
3. WATER WAYS FLOW BACKWARD AGAIN
4. MILESTONES
5. E-DAY PROJECT
6. AKASAKA MOON
7. KYLYN
8. I’LL BE THERE
9. MOTHER TERRA

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(*)本文に登場したCD・DVD

Better Days レプリカ・コレクション-5 KYLYN LIVE(紙ジャケット仕様)Better Days レプリカ・コレクション-5 KYLYN LIVE(紙ジャケット仕様)
渡辺香津美 G.Vannelli 矢野顕子
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Better Days レプリカ・コレクション-6 TO CHI KA(紙ジャケット仕様)Better Days レプリカ・コレクション-6 TO CHI KA(紙ジャケット仕様)
渡辺香津美
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おやつおやつ
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コメント (5)

ayuki様、記事内リンクありがとうございます。
このアルバムはA面もB面も大好きなんですが、やはり冒頭の「199X」(特にイントロ部分)が最高です!
今となっては時代を感じさせるクサイ部分もありますが、久しぶりに聴くと新鮮な驚きがある作品ではないでしょうか。

milkybarさん
コメントありがとうございます。
仰るとおり「199X」のイントロはかなり良いですね。
当時はA面ばかり聴いていたのですが、今回B面もかなり良い感じでした。これは個人的には新鮮な驚きになります。

僕もこのアルバムが好きでよく聞きました。ライブ盤の方がさらに良くて、その辺りや松岡直也&ウィシングから僕が聞こうとするミュージシャンがさらに多くなりました。
映像があるのを別のところで知りましたが、見ていません。PCが逝かれ状態なので映像が止まります。(苦笑)

キリンの中では、特にソニックブームのエレピソロが大好きでした。当時はあまり「ジャズ」は聞いてはいなかったのですが、このソロにはジャズを感じてエらい大人っぽくてかっこいいなあ、と思ったものです。

ここで言う事でもないかもしれないですが、milkybarさんのところの映像にはビックリしましたよね!

WESINGさん
コメントありがとうございます。
この作品に参加しているミュージシャンは単独でもいい作品を創るので、仰る通りに聴くミュージシャンが増えますね。

猫ケーキさん
コメントありがとうございます。
本当に衝撃的な映像でした。このようなお宝映像はまだまだたくさんあるんでしょうね。

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