渡辺香津美さんのKYLYNのTrack05から
細かく聴いてみます・・・。
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05:E-DAY-プロジェクト
渡辺香津美さんの歪んだ音のギターが印象的なスタート。雰囲気はとてもライトなフュージョン。少しポピュラーソングの香りもする坂本龍一さんの曲です。
この作品は、前半の曲とは違うテイストにこの曲から入っていきます。
ヴォコーダーでささやく様にメロディが奏でられていきます。個人的には結構好きなメロディラインやコード進行で、無条件に明るい気持ちにさせてくれるような楽曲だと想います。
テーマからサビ、そして再びテーマに戻り、展開されたサビに入ります。
その展開されたサビの部分では、歪んだ音でロングトーンの対旋律を渡辺香津美さんが奏でます。このフレーズは物凄く気持ちいいですね。多分弾いている渡辺香津美さんはかなり気持ち良かったと想います。
ファーストソロは矢野顕子さん。
速いパッセージなどはなく、少し跳ねたリズムで曲調に合った優しいラインを奏でていきます。それでもCD Time=1:59からの、今まで跳ねていたラインを3連符で平坦なラインにしてソロエンドに向かうところはいい感じです。
再びテーマに戻って、静かな部分に入り渡辺香津美さんがコード奏法でのちょっとしたソロを入れてイントロそしてまたテーマへ・・・。
このテーマの部分が何回も出てくると言うアレンジはポップス的なアレンジですね。個人的には『また?』と言う感じもするのですが。
エンディングは先ほどの気持ちの良く展開されたサビに、さらに気持ち良さそうに渡辺香津美さんがソロを重ねていきフェードアウトしていきます。
ここでの渡辺香津美さんのソロは、チョーキングをアクセントにして速いパッセージを間に挟んでいくと言う展開。
CD Time=4:43は、大きなメロディの動きではなくて、ひとつの音をポイントにしてその周りの音を動かして全体的な上昇していくラインを生み出してCD Time=4:46のチョーキングでアクセント。さらにフレーズを続けCD Time=4:50で再びアクセントのチョーキング。CD Time=4:58からなどは少しラリー・カールトンさんを彷彿とさせるものがありますね。
もう少しゆったりとしたフレーズを挟んでも良かったのかなあ、と個人的には想うのですが、それでも見事に歌っているソロラインです。
ラリー・カールトンさんで想い出しましたが、聴いていると少しスティーリー・ダンの楽曲ような感じを受けました。ちなみに、この部分のコード進行はスティーリー・ダンの滅びゆく英雄のエンディングの部分と同じ流れを持った進行です。
06:アカサカ・ムーン
3曲目に続いて渡辺香津美さんのアコースティックな世界です。左右にディレイで音を振って幻想的な世界を創り上げていきます。
しばらくすると坂本龍一さんのピアノがクラシカルに入ってきます。そのピアノのラインを包むように渡辺香津美さんのアコギの世界が続きます。
途中曲はテンポを上げて、左右のチャンネルをシンセの煌びやかな音が行き交います。その中で渡辺香津美さんのソロがスタートします。
ギターソロの後はフレットレスベースが静かに登場します。このフレットレスベースは渡辺香津美さんの演奏。この雰囲気と言うかフレットレスベースの入り方などは、この後の作品であるTO CHI KA(*)に収録されているSAYONARAのトニー・レヴィンさんを起用したアイデアに結びついている感じでしょうか。
07:KYLYN
渡辺香津美さんのハードなギターソロが少し入ってからリズムはレゲエ風に。そして宙を舞うように奏でられているシンセの音がYMO風?言うならば坂本龍一風レゲエと言ったら良いでしょうか。
テーマはボコーダーで奏でられていきます。この曲に集中していくと、今まで聴いてきた作品とは別の作品を聴いているかのような錯覚を覚えてしまうくらいですね。
それは楽曲やアレンジの部分が大きいのですが、演奏上もドラムが村上秀一さんから5曲目から高橋ユキヒロさんに替わったことも大きいかと想います。
もし全編村上秀一さんが叩いていれば、また違ったサウンドになっていたでしょう。これは、上手い下手と言う意味ではなくてドラマーの個性と言う意味で。
渡辺香津美さんのソロはCD Time=1:47から。
かなり歪んだ音で、さらにトレモロアームを使用した少しスペーシーな展開を聴かせてくれます。途中ブレイクするところでのフレーズが何とも言えない独特の雰囲気ですね。
08:アイル・ビー・ゼア
実はこの曲は個人的に大好きで、このKYLYNの中でもNO.1、2を争います。一番好きな部分は全体のアレンジで、構成が見事にまとまっているところでしょうか。それから、何と言っても矢野顕子さんの歌が抜群に良いですね。
イントロは、コード進行と若干のストリングス、シンセのメロディで流れていきます。そして矢野顕子さんのロングトーンでのコーラスが入ってテーマへ。
テーマは少し和風の感じもあるメロディラインを坂本龍一さんのシンセと渡辺香津美さんがユニゾンで奏でます。
サビに入ると矢野顕子さんの歌で、左右に振られてハモリます。この部分が今までの和風のテイストを一気にお洒落な感じにしてくれますね。
そしてサビの終り部分が歌で終わりでは無くて、シンコペーションのバックの演奏にシンセのラインが絡んでいき、その後で矢野顕子さんのロングトーンでのコーラス。そして渡辺香津美さんのソロがスタート・・・。この部分の流れとアレンジはいつ聴いても肝!です。
渡辺香津美さんのソロはテーマのコード進行で短いのですが、決して盛り上がり過ぎる事がなく、あくまでも歌もののアクセント的なラインが良く曲調に合っています。
ソロの後は再びサビに入り、そしてテーマに戻ります。
その後でもう一度サビに入るのが定番の作曲の流れなんだと想うのですが、確かにサビには入っているのですが、矢野顕子さんの歌の代わりにストリングスがサビのラインを奏でていきます。そしてそれはそのままエンディングの渡辺香津美さんのソロへと入っていきます。このあたりのアレンジが曲を締めていて非常にまとまりを感じます。
それでも唯一、何?って想うところはタイトルの『アイル・ビー・ゼア』とコーラスが入るところでしょうか。雰囲気は解りますが、これは矢野顕子さんを絡めて欲しかったと想います。
また、このバックでは渡辺香津美さんがソロを展開しているのですが、どうもそれが良く聴こえないと言うのもちょっと不満と言えばそう・・・。ここはソロではなく、あくまでも『ソロでのバッキングプレイ』と言う意味合いで聴くとその意図も良く解りますが、結構いいラインを奏でているので、ギター好きにはちょっと残念かと・・・。
09:マザー・テラ
スロウな8ビートの中にもスペーシーで幻想的なムードが漂っている坂本龍一さんの曲です。
テーマらしいテーマがなく、いたってBGM的に曲は進み、渡辺香津美さんのソロに入ってそのままフェードアウトしていきます。
ここでの渡辺香津美さんは、アコギでソロを奏でます。しかし途中でアコギ?って想ってしまう部分もあります。いづれにしても曲調にあった不思議な音の選択ですね。フレーズはいたってジャズ的。後半にはオクターブ奏法なども聴かせてくれます。
不思議なムードの中、この名作は幕を閉じていきます・・・。
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『もともとが、六本木ピットインでの6日間のライヴで、前半3日は自分が仕切ってジャズを、後半3日間は坂本龍一に任せてレゲエっぽいものやポップス、テクノを演奏し、その複合体がこのKYLYNだ』
と渡辺香津美さんがこの作品を回顧しています。
私が言うまでもなく、この作品はその3日づつのパフォーマンスのコンセプトがそのまま収録されている形なので、前半はジャズ、フュージョンの世界、そして後半は坂本龍一さんの世界。
CDで聴くと、あの超絶な4曲目とライトな5曲目が連続して再生されるので、個人的には物凄い違和感があり、それがwalkingをして聴き終わったあとの感想である『・・・』と言うことになったわけです。
考えてみれば、LPレコードの時代には、5曲目からB面になったので、レコードを裏返したり、その間にコーヒーを入れなおしたり、また用足しにいったり、とわずかな時間ですが現実に戻ったわけです。カセットテープでも、裏返して巻き戻したり・・・。それが違和感を薄めて、2つのコンセプトを明確にしたのだと想うのです。
ですからCD化が逆に作品全体と言う見方をすると弊害の一部にもなったかと。2つのコンセプトが入っていることは、ジャケットの赤と青がしっかりと分かれているデザインにも表れていますね。
また、渡辺香津美さんはこのようにも言っています。
『バンドアンサンブルを交えて新しいものを創りたかった。その結果がこの作品で坂本龍一のアレンジが不可欠だった。ウェザー・リポートやEW&F、スティーリー・ダンなど革新的なものが生まれた時代なので、こっちもうかうかしてられなかった・・・』
その若いエネルギーと革新の気持ちが炸裂してるのがこのプロジェクトと言うことですね。
とかく私もそうなんですが、KYLYNを語る時に、超絶なバンド、この作品で言うならはA面のコンセプトのことになってしまうことが多いです。
確かに、walkingで聴き終えたときにはその感じがありましたが、1曲づつ細かく聴いていったら、B面の世界もかなり『いけてる』かな、と想いました。YMO自体をあまり聴かなかったので良く解らないのですが、このB面のテイストってあるんですよね。
渡辺香津美さんもYMOのツアーに参加していましたし、そのままメンバーへ・・・と言うのも流れとしては面白かったかも知れません・・・。
もうひとつKYLYNをそのままレギュラー・バンドとして継続・・・と言うもの良かったかも知れません・・・。
つまり、このプロジェクトが2つの大きな音楽の流れを生んだわけで、その意味においても、今まで半分の面しか聴いていなかったことはちょっと反省です。
それでも、実際はこの経験を軸にして名作TO CHI KAが生まれるわけで、その選択はファンにとっては最高の選択だったと言うことでしょうか。
いずれにしても、歴史にいろいろな意味で絡んでいるエポックメイキング的な傑作。
そこには、『何かがしたい!』と言う若いエネルギーが炸裂しています。
しかし、この作品やライヴを聴くことが出来たリスナーはもちろんですが、ここでエネルギーを爆発させたミュージシャンたちのその後の継続した活躍を聴くと、そのミュージシャンたちの『糧』になったのがこのKYLYNプロジェクトの最も歴史的な意味だったとも言えるような気がします。
(CD TOTALTIME:45:34/ Walking消費カロリー:183.18kcal)
【参考・引用/jazzLife別冊:JAZZ GUITAR 2003・2005】
![]() | Better Days レプリカ・コレクション-4 KYLYN (紙ジャケット仕様) 渡辺香津美 矢野顕子 坂本龍一 曲名リスト 1. 199X 2. SONIC BOOM 3. WATER WAYS FLOW BACKWARD AGAIN 4. MILESTONES 5. E-DAY PROJECT 6. AKASAKA MOON 7. KYLYN 8. I’LL BE THERE 9. MOTHER TERRA Amazonで詳しく見る by G-Tools |
(*)本文に登場したCD・DVD
![]() | Better Days レプリカ・コレクション-5 KYLYN LIVE(紙ジャケット仕様) 渡辺香津美 G.Vannelli 矢野顕子 by G-Tools |
![]() | Better Days レプリカ・コレクション-6 TO CHI KA(紙ジャケット仕様) 渡辺香津美 by G-Tools |

































コメント (3)
お邪魔します。
大変興味深く拝見しました。是だけのミュージシャンが一つのグループとして存在した事は日本の音楽シーンにおいては奇跡的といえますが、今考えると必然的だったのかもしれません。仰るように・・・『何かがしたい!』と言う若いエネルギーが炸裂しています。・・・まさにそれこそがこのアルバムの本質なのかも知れませんね。ただ、やはり是だけのエネルギーを維持していく事は至極困難だったのも事実だったと思ういます・・・ですから惰性や様式だけで多くのアルバムを作るよりも潔くこの「2枚の作品」が残された事はある意味それでよかったのかも知れません・・・ネ
>ミュージシャンたちの『糧』になったのがこのKYLYNプロジェクトの最も歴史的な意味だったとも言えるような気がします。
至極名言だと思います。同感です!
投稿者: FUSION | 2008年05月13日 21:32
こんばんは。tochikaは来日中のマイク・マイニエリが香津美さんのステージを観て是非ということで始まったプロジェクトだと読んだ記憶があります。やはりtochikaの誕生もこの流れの延長線上だったのでしょうか。この辺りのことは最近知ったことで、勉強不足を痛感しております。
この時期のフュージョン界はすごいエネルギーが爆発していたのですね。
リアルタイムで肌で感じていたらもっとすごいことになっていたのかと思うと残念でもあります。
投稿者: bonejive | 2008年05月13日 22:34
FUSIONさん
コメントありがとうございます。
仰る通りに2枚だからこそ、価値があったとも言えますね。その意味では本当は映像は世に出ない方が良かった?と言う本心と相反した気持ちもあるんです・・・。
bonejiveさん
コメントありがとうございます。
わたしもリアルタイムより少しずれていますので、残念なんですが・・・。TO CHI KAは今日聴きましたので、明日以降アップしたいと想います。
投稿者: ayuki | 2008年05月15日 18:37