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想い出のサン・ロレンツォ/パット・メセニー・グループ
PAT METHENY GROUP/PAT METHENY GROUP

一番好きなギタリストは秋風の中でのwalkingと良く似合う・・・かどうか解りませんがパット・メセニー・グループ想い出のサン・ロレンツォwalkingしました。

現在一番好きなギタリストがパット・メセニーさんです。ソロでの活動やセッションワークではギタリストとしてのパット・メセニーさんを堪能できますが、音楽的なもっとグローバルなミュージシャンとしてのパット・メセニーさんを聴くためには、やはりパット・メセニー・グループの音楽を紐解かなければ・・・と想ったわけです。特に理由はありませんが今までパット・メセニー・グループの作品はあまりレビューしていなかったので、それでは・・・と想い、どれにしようか?・・・と想い、ならば一枚目を・・・と想ったわけなんです。最近あまり聴いていませんでしたので・・・久しぶりです。

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1曲目は想い出のサン・ロレンツォ
ここであえて書くのも恥ずかしいくらいに有名な12弦ギターでのイントロ。以前雑誌にその変則的なチューニングが紹介されていたような記憶があるのですが、今回それが見つかりませんでした。パット・メセニー・ソング・ブックと言う譜面を見てもそのチューニングは載っていませんでした。でも音的にはコードがFm7と言うコード進行で4~6音の和音を、しかもかなり近い音で重ねています。普通、あまり近くの音が重なると歪みや不協和音の原因になるのですが、非常に綺麗で音の広がりがあるのはもちろん当時のIbanezの12弦ギターの力もありますが、この音を選択したパット・メセニーさんのすごさがありますね。このハーモニーを聴くだけで、単なるギタリストではなく、グローバルなミュージシャンとしての力を感じます。

印象的なイントロのギターからE♭69と言う綺麗な響きのコードで全員がイン。そしてベースのマーク・イーガンさんのリフ。幻想的な雰囲気で曲は進んで行きます。

所々で聴こえる、まるで水滴が弾けるようなライル・メイズさんのピアノがさらに幻想的な世界へトリップさせてくれます。

CD Time=1:20からのフリューゲルホーン的な音のシンセのメロディは、現在でも、音源こそ違いますが、パット・メセニー・グループの代表的な音種ですね。

テーマとサビを繰り返しながら曲は更に進んで行きますが、なんと言ってもこの曲での聴き所はCD Time=4:40からのライル・メイズさんのソロにつきます。これが実に美しいです。曲調とテーマにあわせて、決して派手に弾かず、また音数を多く弾かず、それでも強烈に引き付けられる、まさに”美”です。美しすぎて涙が出そうになります・・・。

このソロの部分にはパット・メセニーさんのギターのバッキングもほとんどありません。ですからライル・メイズトリオ!って言う感じさえします。さらにCD Time=7:25からテーマに戻るまでの展開は一瞬静かになったり、ややカデンツアの様になったりして・・・繰り返して言いますがまさに”美”です!

2曲目はフェイズ・ダンス
この曲もギターの変則チューニングを使用していますが、こちらは有名なナッシュビル・チューニングと言う合わせ方です。最近のライヴで演奏されることがあるパット・メセニー・グループの曲の名曲ですね。

テーマはパット・メセニーさん。少し音が歪んでいてあまり綺麗な音とは言えないのですが、基本的には今の音の原型と言えます。ナチュラルトーンにリヴァーブを深くかけて、ドライの音とエフェクト音をミックスすると言うスタイル。この時から現在までゆるぎないポリシーとでも言ったら良いのでしょうか・・・。

そのままテーマからソロに入ります。細かいニュアンスは現在と変わらない感じですが、曲の持っているややカントリーな感じを上手く表現しています。CD Time=2:30からの2~3音、そしてコードを使用したラインなどはまさにそんな感じです。さらに、最近のパット・メセニーさんの定番、クロマティック(半音進行)でのラインがほとんど無いので結構新鮮だったりしますね。細かいテクニックと言うよりはおおらか雰囲気で弾き切っています。

続いてはライル・メイズさんのソロ。このソロもまた多くを語らず、実にリリカルです。CD Time=4:35からのコードワークでのフレーズから速いパッセージを絡めてくるところは絶妙です。

3曲目はジャコ
jazz Life特別編集・JAZZ GUITAR2007-2008に1980年のパット・メセニーさんのインタヴューが掲載されています。その中でジャコ・パストリアスさんについて、マイルス・デイビスさん、ジョン・コルトレーンさんと同格で”エレクトリック・ベースについては無視されない存在価値だ”と語っています。この曲はそのジャコ・パストリアスさんに捧げたと言う曲。

始ってからふっと想いました。もしかしたらパット・メセニー・グループの構想でパット・メセニーさんの頭の中には、マーク・イーガンさんではなくてジャコ・パストリアスさんがあったのでは?と夢みたいな勝手な想像をしてしまうほどジャコ・パストリアスさんが弾いたらはまる曲だと想います。

そう想うと1曲目の想い出のサン・ロレンツォのイントロのベースラインもジャコ・パストリアスさんによく似合うフレーズですよね。

やや跳ねた8ビートの歯切れの良いドラムはダン・ゴッドリーブさん。地味なんですが良い味を出しています。

パット・メセニーさんのソロはかなりブルージーに展開しています。この曲のソロを聴いていると今のパット・メセニーさんの得意なフレーズの一端をいろいろなところで聴く事が出来て興味深いです。

例えばCD Time=1:54からのフレーズは最近のパット・メセニーさんだったら間違えなくそのまま、かなり高いフレットまで駆け上がっていくと想われるフレーズです。

またCD Time=2:10からのフレーズは最近であればクロマティックのフレーズがもっと連続するところです。そうかと想うとCD Time=2:24のクオーターチョーキングのように今でも定番にしているフレーズがあったりします。

パット・メセニーさんのソロを受けてマーク・イーガンさんのソロです。ロングトーンを上手く利用したフレーズで音の選び方が絶妙で丁寧なソロです。またこのソロの前半のパット・メセニーさんのカッティングは珍しくと言うか、最近ではあまり演奏しない歯切れの良い、いわゆるフュージョン的なカッティングです。

4曲目はエイプリル・ウィンド
カントリー風の弾き方なんですが、曲がマイナーで少し哀しげなギターソロ曲です。変則的なチューニングを使用しているのか、オーバーダビングしているのか解りませんが、実にギターの響きを匠に使った曲です。

5曲目はエイプリル・ジョイ
イントロが日本人好みのマイナー調からスタート。しばらくしてマーク・イーガンさんのメロディが入ると一気にメジャー調へ。でもすぐにマイナー調へ戻る、と言うイントロ部分はコードの展開が絶妙です。この辺りのコードの展開は今のパット・メセニー・グループにも通じるところがありますね。

パット・メセニーさんのソロからテーマへ戻ったCD Time=3:14から、今までの激しいリズムからうって変わって静かな展開へ。パット・メセニーさんのアルペジオに、もうひとつのパット・メセニー・グループの特徴のシンセ音種である、尺八と言うか笛と言うか・・・。そしてテンポダウンしてリズム隊が戻るところは、シンフォニックな展開で印象深く残ります。そしてこの部分が2曲目のフェイズ・ダンスのコード進行であるのがさらに良いですね。リフレイン的で実に見事な構成だと想います。

6曲目はローン・ジャック
最近のトリオ99>00でも演奏している、”何かが迫り来る様な緊張感”のある名曲です。前のエイプリル・ジョイの考えられた構成とは違って、この曲はかなりラフでジャズ的。当然パット・メセニーさんのソロもジャズ的・・・と言いたいところなんですが意外にそうでもないんですね。

このソロはフレーズとフレーズの間のつながり部分に連続性が今ほど無くて、けっこうフレーズ単位で進んで行く感じです。そのフレーズもコードの分散フレーズやロック的なチョーキングなどジャズラインの連続と言う感じではありません。でも若さと曲の持っている、ある意味のロックテイストを加味したソロになっています。

そしてライル・メイズさんのソロです。テンポダウンしていることもありますが、ここも綺麗なソロですね。コードワークが抜群です。実に綺麗な和音のフレーズを奏でています。後半はマーク・イーガンさんと時々パット・メセニーさんが入ってデュオ的に進んで行きます。速いパッセージを連続しつつ、ドラムが居ないので静かにフレーズを展開して行くと言う妙技を聴かせてくれます。そして再びドラムのダン・ゴッドリーブさんが戻って来ると更に盛り上がり、テーマに戻る頃には最高潮に達しエンディングになだれ込みます。

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先にご紹介したインタビューで自らの音楽的な要素と言うことでグループの音楽、フォークタイプの音楽、トリオなどのジャズ的なもの、そしてECM的スペーシーなものと語っています。この4つスタイルは基本的には今の活動でも変わっていないところがこれまたすごいところで、時代にあまり左右ない姿勢は敬服に値します。

また、その要素がこの作品には全て収められていると言う感じがしました。

想い出のサン・ロレンツォエイプリル・ジョイなどは今のパット・メセニー・グループに、もちろん通じるところがありますし、エイプリル・ウィンドなどは後のソロ作品ワン・クワイエット・ナイトに通じます。そしてローンジャックなどは4ビート系のユニットやギタートリオに通じている気がします。でも逆にパット・メセニー・グループがこの作品後、いろいろな方向に行く可能性があったと言うことにもなるわけですね。

パット・メセニーさんがやりたい音楽を凝縮して、すでに未来の作品を見据えていた!と想うのは考え過ぎでしょうか?・・・過ぎですね。

もうひとつこの作品でのポイントはライル・メイズさんです。やはりこの強烈な影響力と言うのは無くてはならないもので、この作品が前作ウォーター・カラーと同列にも関わらず、グループ名義になったのはまさにライル・メイズさんの存在価値が増してきたからと言うことに異論のある方はいないと想います。

事実、この作品でのソロは珠玉の出来だと想います。パット・メセニーさんのソロが少々聴き劣りするほどですね。でも、これには、あえてグループ色を全面に出したパット・メセニーさんの強い意図を感じます。

作曲のおいての競作が多いことや、何と言っても1曲目の想い出のサン・ロレンツォライル・メイズさんを大きくフューチャーして自らはソロを取らないと言うところからもそれは感じ取れます。つまり、ギタリスト個人と言うより総合的なミュージシャンへの一歩と言う気がするのです。

実際に、この後もギタリストとしては、ソロ名義やセッションワークの方がはるかにクリエイティブで良いソロを展開していると想います。

もちろんパット・メセニー・グループでも抜群のソロなんですが、あくまでも、”楽曲に必要な要素の一部としてのソロ”と言う姿勢をパット・メセニーさんのソロやセッションワークのプレイと比較すると感じるのですが・・・いかがでしょうか?

ここから、ライル・メイズさんとの二人三脚が始りました。その意味では記念碑的な作品だと個人的には想っています。

曲名リスト
1. 想い出のサン・ロレンツォ
2. フェイズ・ダンス
3. ジャコ
4. エイプリルウィンド
5. エイプリル・ジョイ
6. ローン・ジャック

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  1. 『想い出のサン・ロレンツォ』! 『ザ・ウェイ・アップ』までは,私のPMGの最愛聴盤でした。私も最近聴いていなかったので,ayukiさんのレビュー片手に聴き直してみたところです。
    ayukiさんの批評も実に細かいところまで書かれていますね。かなり聞き込んだ跡が見え隠れして関心しました。さすが同じギタリスト! そのayukiさんが敬愛するNO.1ギタリスト!
    やっぱりメセニーっていいですよねっ。

  2. パット・メセニー・グループ / 想い出のサン・ロレンツォ

    アナログレコード
     読者の皆さんは,ある音楽を耳にして映像のイメージが脳裏に浮かび上がる,という経験をしたことがおありですか?
     よくある過去の出…

  3. ayukiさんこんにちは。これは問答無用で最高な一枚ですね。
    ギターのチューニングの事などよく知らないので、興味深く拝読しました。この頃のギターソロのスタイルなど、最近とは随分違いますよね。
    速くPMGの次作が聞きたいのですが、まだ予定はないんでしょうかねえー。

  4. セラピーさん
    コメントありがとうございます。
    名盤『ザ・ウェイ・アップ』が誕生するに至った流れはやはりこの作品から紐解かないと・・・と想った訳です。まだ先は遠いんですが、この機会にじっくり順番に聴いて見たいと想った次第です。

  5. 猫ケーキさん
    コメントありがとうございます。
    確かに最近のパット・メセニーさんのソロフレーズはワンパターンと言う批評もありますね。ですからかえって新鮮だったりします。この頃はギターを弾いている!と言う感じがものすごくするのですが、最近はギターを弾いている!と言うより、あふれ出る言葉が止まらない!って言う感じがするプレイだと想うのですが・・・。




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