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ファースト・サークル【1】/パット・メセニー・グループ 
FIRST CIRCLE/PAT METHENY GROUP

数日続いた雨も上がり今日はとても良い天気で快晴。でもいよいよ冬らしく少し空気が冷たい・・・。そう言えばこのレビューも、最初の頃の簡単なものや、一枚で2記事のものもありますが、丁度キリ番の100と言うことになります。その100番の作品は、パット・メセニー・グループファースト・サークルです・・・。

パット・メセニー・グループの5枚目の作品でリリースは1984年。前作のトラヴェルズがライブ作品でひとつ集大成。その後の作品ですので新しい展開が聴ける作品です・・・と私が言うまでもない名盤ですね。

やはり通して聴くのは久しぶり。新しい発見があるでしょうか・・・。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

01:フォワード・マーチ
今でこそすんなり聴くことができる曲ですが・・・。多分リリースされて初めて針を落とした時には多くの方が驚いたと想います。

スティーブ・ロドビーさんのベース・ドラムの4つ打ちでスタート。そこに、この作品からドラムに加入したポール・ワーティコさんがフィールド・ドラムとシンバルを重ねます。フィールド・ドラムと言うのは、マーチに使用される楽器のようでスネアより音が低くて大きいと言うことらしいです。

そして、シンクラビア・ギターとクレジットされたパット・メセニーさんの調子はずれのマーチングテーマ。基本的な旋律は3声の和音で、それをマーチングブラスやスーザフォンのサンプリングでオーバーダビングしている様子です。

この、調子はずれの感じは“下手くそなマーチング・バンドよりさらに下手”と言う遊び的演出?
途中から、ライル・メイズさんのトランペットがトップノートと少しフリー風のラインでマーチングテーマに絡んできます。本物のトランペットですので音程はまとも。下手なバンドの中で“とりあえずまともに吹ける人”って言う感じでしょうか。

そして、ポール・ワーティコさんと同様にこの作品からメンバーのベドロ・アズナールさんがグロッケンシュピールで加わります。グロッケンシュピールとは鉄琴のこと。

最後は盛大に盛り上がってマーチが終わります。

やはりこれはパロディ的なお遊び?と想ったのですが、譜面を見ながら聴くと綺麗な3声の和音だったり、途中3/8拍子が入っていたりとそれなりに凝っています。もしこの曲を上手いマーチング・バンドが普通に演奏したら、とんでもなくカッコ良いマーチになるのでは?

ですから、良く聴くと深い曲で“遊び”なんてとんでもありませんね。失礼しました・・・。

さらに私流に勝手に想像するには、2曲目のヨランダ、ユー・ラーンと8曲目の賛美につながっていると想うのです。

まず、ヨランダ、ユー・ラーンへは音程の不安定さがもたらす浮遊感と言うつながり。ヨランダ・ユーラーンは、テーマの音程がやや不安定な感じで奏でられていて、それが実に良い浮遊感をもたらしています。でもいきなりのヨランダ、ユー・ラーンでは、その不安定さからくる浮遊感の免疫がリスナーに出来ていないと・・・。だから、この曲で一度免疫を創ってからと・・・。
そして、賛美は曲調がゴスペル、賛美歌調。非常にメジャーなメロディの曲。マーチング・バンドと賛美歌。何となくアメリカ的ですね。最初と最後にこのアメリカ的なサウンドを用いることに意味があると想うのです。

そしてもうひとつ、新しいパット・メセニー・グループの夜明け的な意味合い・・・。それは新メンバーでストタートする意気込みと同時に、調子はずれをモチーフにして、ビギナー的なマーチング・バンドをシュミレーションすることで「まだスタート、これからなんだよ、期待して!」と言うメッセージが込められているかと・・・。

あくまでも私流ですので・・・本当の意図は良く解りませんが、まあ聴く方は勝手な想像をするものです・・・。

それにしても、この調子はずれなメロディをどうやってパット・メセニーさんは弾いたのでしょうか?機械的にこのようにすることも可能ですが、そんな感じでもなさそうですし・・・。ギターのチューニングをあらかじめ少し狂わしておくとか・・・。いづれにしても、凄腕のミュージシャンになればなるほど、音程が正確で無ければ弾きにくいはずですので、相当弾きにくかったのだろうと想います。別の意味でパット・メセニーさん恐るべし!ですね。

02:ヨランダ、ユー・ラーン
1曲目が終わってからこの曲へ入るタイミングはすでに肝!です。・・・もう無条件に燃えてきます!

ポール・ワーティコさんの速い8ビート。オープンのハイハットが実に効果的です。そしてスティーブ・ロドビーさんのベースとライル・メイズさんのピアノがユニゾンで入ると・・・更に燃えます!

テーマは口笛の音をサンプリングしたシンセ。この音の音程が不安定で、先ほど書いたように1曲目と繋がるイメージがあると同時に、不思議な浮遊感があって、それが強い8ビートと重なると完全なオンリーワンの世界へ突入していくわけです。

CD Time=0:38からの2回目のテーマからは、バッキングにギターのワウのような雰囲気のあるペドロ・アズナールさんのパーカッションが加わり2拍目にアクセントを入れます。さらにシンセやギターの単音でのミュート風バッキングも加わります。そして、4拍目の裏にフロアタムかパーカッションで「ドン!」と言う響きの重い一打が加わります。いろいろな音が加わることでビートが加速していきますね。そして、ポール・ワーティコさんのドラムもオープンだったハイハットをクローズにしているのが凄い効果的で・・・もっと燃えます!

テーマ部分は1回目の笛に重ねて、左チャンネルにパット・メセニーさんのシタールが加わります。ライナー・ノーツではシタールとだけ書いてありますが、まさか本物ではないと想いますのでご存知コーラルのエレクトリク・シタールだと想います。この楽器は現在は入手が出来ませんがレプリカを弾いたことがあります。共鳴弦がたくさんついていて、さらにブリッジ部分が特殊で、あのシタール独特のビリついたような、フレットレスの様なサウンドになります。なかなか、弾いていてもクセになりそうな楽器でした。

サビのやや静かな部分でシタールの響きを味わい、さらにロックテイストの8分音符でのユニゾンを挟みながら後テーマへ。ここの最大のポイントはペドロ・アズナールさんのヴォイスでのメロディ。

今までの作品でも、ナナ・ヴァスコンセロスさんなどのヴォイスがフューチャーされていましたが、それはさりげなくと言う感じがありました。この作品から大胆にメロディとしてのヴォイスを使い始めたその記念すべき1曲目、と言うことになりますね。

もうひとつここで珍しいのはCD Time=2:15からとCD Time=2:28からのパット・メセニーさんのスライドギター。こちらもライナー・ノーツには、スライドギターと書いてあるだけなので、どう言った種類のものなのか解りませんが、ボトルネックを使用しているとすればイメージではないですね・・・個人的には。でも、ペドロ・アズナールさんの歌と絡むギターをスライドギターに・・・と言うことがパット・メセニーさんのイメージだったのでしょう。これはワンポイント、いやツーポイントで、これまた“いい効果”で“いい感じ”ですね。

そしてテーマに戻っていくのですが、ここではペドロ・アズナールさんのヴォイスがさらにテーマに加わります。・・・かなり燃えます!また、単純に「ラ・ラ・ラ♪」ではなくて、いろいろな音、つまり人間が声として出すことができる音、「ウォ」とか「ヨ」とか「ティ」などなど、いろいろ使ってまるで歌詞があるかの様なヒューマンな感じを出しているところが実に肝!です。このヴォイスは後のパット・メセニー・グループの定番スタイルになりますね。

そしてここからエンディングまでがパット・メセニーさんのソロ。ライナー・ノーツではシンクラビア・ギター。音はローランド・ギターシンセですので、シンクラビアシステムにサンプリングしての使用だと想います。ギターは、ローランド・ギターシンセを改造した、ファン御馴染みの変な?シェイプのギター。無造作に紙に印刷されたセットリストがボディにテープで貼ってあるギターですね。

ライン的には大きく8ビートを捉えていて、ゆったりとしたメロディアスなフレーズ展開です。まあこのテンポで16分音符のフレーズは難しいでしょうし、また超速弾きになってかなりロック的になってしまうので、ここでのラインはまさに曲調にあった適材なソロラインだと想います。

全体的にスティーブ・ロドビーさんのベースラインが地味ですがいい感じですね。エレクトリック・ベースなんですが、CD Time=4:17でのピチカートラインの中にさりげなく聴かせるスラップのプルとか小技が効いているところがたくさんあります。

そして、ポール・ワーティコさんのバスドラムと絶妙に合っているのも、この曲のスピード感とグルーヴの一因になっています。スタートから、心音の様な歯切れの良いバスドラムに見事にベースラインが合っていて気持ちが良いです。

フェードアウト間際に聴こえるライル・メイズさんのロングトーンのシンセ。そしてそれに緩やかに乗るパット・メセニーさんのソロライン。さらにスティーブ・ロドビーさんの高音へアウトするフレーズ・・・と、もっと聴きたいと言うところで無情にも音はなかり小さくなっていきます。・・・燃え尽きます!

03:ザ・ファースト・サークル
ライヴでメンバーがハンドクラップを始めると、オーディエンスの歓声と共に皆で一緒に始めるハンドクラップ。パット・メセニー・グループのライヴでは定番の風景です。中には完璧にマスターしている方もいたり、周りに合わせ合わせしている方もいて・・・。私も実際のライブで何回かチャレンジしました・・・。

この曲の拍子は22/8拍子。これは12/8+10/8と分解できるのですが、超難解な拍子。ですから余計ハンドクラップが解り難いわけです。このハンドクラップは8分音符食ってからスタートすれば完璧に合うのに、どうしてもそう聴こえないと言う方もたくさんいらっしゃると想います。このようなリズムトラップはまさに肝!大好きです。

ピアノとスチールギターのベルの様な二ュアンスの音に、ペドロ・アズナールさんの綺麗なヴォイスとナイロンギターでのメロディが重なります。ここではパット・メセニーさん以外のプレイヤーがギターを弾くと言うパット・メセニー・グループの劇的な変化を聴くことができます。
ペドロ・アズナールさんのメロディで、ようやく曲の頭を意識するとこが出来てリズムトラップから抜け出せそうになりますが、その後の「B♭maj69」と言うコードでのロングトーンで再びそのトラップにはまります・・・。そしてハンドクラップの3つ打ちが静かに終わると、曲はピアノとギターの綺麗なアルペジオに加えて、計算されたベースラインとシンバルワークが重なった美しい世界へと繋がっていきます。

ここでは右チャンネルからセンター部分に定位しているスチールギターがパット・メセニーさん、そして左チャンネルに定位しているナイロンギターがペドロ・アズナールさん。先ほどの部分ではメロディだけでしたので、テクニック的なことは良く解りませでしたが、ここでのベドロ・アズナールさんのギターアルペジオはかなり上手いです。

テーマはパット・メセニー・グループの特徴的な音である尺八風のシンセ。前半の4小節はG=「ソ」の音に2音だけA=「ラ」の音が入っている単純な音階。その音を“リズムの流れ”で聴かせます。この“リズムがモチーフ”になっているテーマは、まさに最初のハンドクラップと同じで、楽曲の強いコンセプトを感じます。素晴らしく、見事なメロディラインですね。

さらにテーマはメロディアスで映像的なラインで進んでいきます。そして2コーラス目でペドロ・アズナールさんのヴォイスが重なると更に圧倒的な美しさに襲われます。このヴォイス、かなり肝!です。魅惑のヴォイスとでも言ったら良いでしょうか・・・

この部分でのギターは、パット・メセニーさんが得意の掻きむしりカッティング。完全にリズム楽器と化していて、ドラムやベースと一体になってグルーヴを形成しています。そして、ペドロ・アズナールさんがボサノバ的と言ったらよいでしょうか、見事なコードワークで、かなり上手いバッキングを聴かせてくれます。

テーマが終わると静かにライル・メイズさんのピアノソロがスタートします。高音でのメロディは絶妙なアーティキュレーションで感動的なラインを奏でていきます。次第にバックも盛り上がっていってソロも熱くなってきます。CD Time=6:12からの、右手で弾いたラインに左手のバッキングが答える“ひとりエコー”の様なフレーズには想わずため息がでます。後半は、今までの単音のライン中心からコードワークを中心としたフレーズに展開していきます。CD Time=6:43からのクラシカルな展開からCD Time=7:00の何とも言えない劇的な展開まで息をつかせないメロディの渦にリスナーを巻き込みながらブリッジへ突入・・・。そしてそのままのノリ+盛り上がりで後テーマへなだれ込んでいきます。

そして、エンディングでは、テーマの最初の部分の“リズムの流れで聴かせると言うモチーフ”をコードを変えながら展開して、一番最後に一番最初のハンドクラップを重ねて終わります。
コンセプトのひとつがリズムで、そのリズムを使ったモチーフを最初から最後まで見事に流れの中に取り込んでいるアレンジ。完成度が非常に高く、また美しい曲。名曲って数々ありますが、この曲のことを指して言うのだろう・・・と本当に想いました。

ところで、この曲はアルバムタイトル曲なんですが、タイトルには「The・・・」がついていませんが、ライナー・ノーツでの曲目には「The・・・」が付いています。これは何か意味があるのでしょうか・・・。

だいぶ力が入ってしまい長文になりました。と言うことで続きは次回に・・・・。

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曲名
1. フォワード・マーチ
2. ヨランダ、ユー・ラーン
3. ザ・ファースト・サークル
4. イフ・アイ・クッド
5. テル・イット・オール
6. エンド・オブ・ザ・ゲーム
7. もっとむこうに
8. 賛美

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コメント/トラックバック (4件)

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  1. 100番目達成おめでとうございます。節目にふさわしい作品ですね。
    フォワード・マーチを初めて聴いたときは、「何だこりゃ?」という感じでしたが、解釈次第だと言うことがわかりました。(笑)
    あと、ザ・ファースト・サークルは、ライブの定番ですが、ある年の大阪公演では、聴衆の不器用なハンドクラッピングに、パットが演奏一時停止、”unbelievable!”とため息を漏らし、場内爆笑、気を取り直して再度演奏開始、という一幕もありました。
    賛美は、教会音楽のような荘厳な響きですね。タイトル曲が余りに有名ですが、こちらも名曲ですよね。

  2. swingさん
    コメントありがとうございます。
    音楽の良いところのひとつに、楽曲のイメージやコンセプトを勝手に解釈出来ることがありますね。私なんぞはまさに勝手気ままに解釈しています!
    ザ・ファースト・サークルの仕切りなおしは、まさにパット・メセニーさんらしいエピソードですね。

  3. こんにちは。
    フォワードマーチとヨランダユーラーンの繋がりに関するご意見、なるほどと拝読しました。
    ファーストサークルはいうまでもなく希代の名曲ですが、ヨランダも大好きなんです。今のメンバーで再演してくれないかなといつも思っています。
    このアルバムに関しては、一回の記事で書き切れないと言うのもよく分かります(笑)

  4. 猫ケーキさん
    コメントありがとうございます。
    以前、猫ケーキさんのブログで問題提起されたことを考えてみて、勝手な解釈をしてみました。
    また、ヨランダユーラーンの再演もいいですね。突然に古い曲を再演するサプライズがPMGのライヴの面白みでもありますね。




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