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ファースト・サークル【2】/パット・メセニー・グループ 
FIRST CIRCLE/PAT METHENY GROUP

今日はパット・メセニー・グループファースト・サークルの続きです。1曲目から3曲目ですでに、すっかりノックアウトされてしまった感もありますが、中盤からエンディングを聴きます・・・。

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04:イフ・アイ・クッド
パット・メセニーさんの曲で美しいスローバラードです。静かなライル・メイズさんのシンセやスティーブ・ロドビーさんの優しいアコースティック・ベースが美しさを引き立てます。また、ほぼ全編に流れているポール・ワーティコさんのブラシワークが、今までの曲のパワフルな感じとはうって変わった響きで、守備範囲の広さを感じます。

テーマからソロまでパットメセニーさんのナイロン弦の豊で繊細な音色を聴くことができます。このギターはたぶんオベーションのナイロン弦ギター。独特のピッキングと重なって、その音色は単なるナイロン弦やクラシックのそれとは違って完全にメセニートーン。リバーヴが強めにかかっていて、メロディラインに呼応するように響き渡っています。

また、強く弾くと大きくリバーヴがかかり、弱く弾くとほとんど響かないと言うセッティングがされていて、そのセッティングを最大に生かすように奏でているピッキングテクニックとアーティキュレーションは見事としか言いようがありませんね。

ソロのスタート部分のCD Time=3:10では、同じメロディモチーフを繰り返して繋げるラインを聴かせてくれます。この部分のニュアンスも1回ごと弾きわけていて見事です。またここではギターの低音弦のフィンガーノイズもあえて出すように弾いていて、それがまた雰囲気を盛り上げます。そしてこのラインの頭の部分を強く弾いてリヴァ―ブで響かせ、その後の音やフィンガーノイズは密やかに聴かせると言う、ここでも、リバーヴのセッティングを生かしたフレーズになっています。

CD Time=3:26からのフレーズはプリングオフした音を煌びやかに響かせると言うテクニック。簡単そうですが、一瞬の「キラッ!」を出すには、左手の力加減が難しい小技です。

CD Time=4:17の高音の1音の美しいこと!

さらには、CD Time=4:43からのリズムで聴かせるラインからCD Time=4:49からのまるで事前に創ってあったかの様な美しいメロディ!

テーマからソロまでどこの部分を取っても涙が出るくらい美しいフレーズと音の連発で優しい気持ちになります。

だた一点残念だと個人的に想っているのは、CD Time=6:27のドラム。この部分でエンディングに入るために、ブラシワークが一端止まります。しかしあまりにスパッと止めている為に一瞬の静寂で、そこだけ抜けたような感じがするのです・・・。

05:テル・イット・オール
イントロから印象的な鐘の様な音。これはアゴ―ゴー・ベルでしょうか?ライル・メイズさんが演奏をしているようですね。これもまたリズムトラップ的な仕掛けがあって、拍の頭からこの音とリズムが入っているように聴こえますが、実はこれが拍頭ではなくて4拍目スタートなんです。

ですから、あとのペドロ・アズナールさんのヴォイステーマが入って来た時にズレを感じるわけです。さらに、そのテーマがゆったりとしている割りにはリズム隊が小刻みにテンポ良く、さらに同じシーケンスを繰り返しているために、ここでも、少しズレた様な感覚に囚われます。

このように、リズムのシーケンスとはまったく違うような綺麗でゆったりとしたメロディラインを重ねると言うアレンジもパット・メセニー・グループではたまにあるパターンで、私はけっこう肝!なんです。

今までの流れを断ち切るかの様な突然のギターコード「E7♯9」。ここからパット・メセニーさんのソロです。

コード進行はマイナーブルース進行です。もちろんパット・メセニーさんはジャズのブルース進行が得意ですのでここでもジャズ的なラインで弾きぬけていきます。

CD Time=1:01は「Am→Dm」と言うコード進行にジャズで言うところのⅡ-Ⅴと言う仮想進行を入れてフレーズを奏でます。CD Time=1:43に入るコード奏法などは、私では良く解りません。コードはAmなんですが・・・。どうしてこのようなことが出来るんでしょうか?見事にサウンドしているのが、不思議と言うか、見事と言うか、凄いと言うか・・・。

CD Time=1:50からは怒涛の速弾きの連発です。このラインはどちらかと言うと過去のパット・メセニー・グループでのフレーズと言うよりは、今のパット・メセニーさんのフレーズに近い感じがします。音のインターバルが半音単位で、クロマティックなフレーズが多くなっていく感じででしょうか。

続くCD Time=1:58からは4音ワンパターンで機械的に上がったり下がったりする定番のシーケンスフレーズのかなり激しいヴァージョンを聴かせてくれます。

その後の展開は比較的ブルージーでCD Time=2:36の様なカントリー・テイスト、さらに続いて2声の和音でのフレーズなど。ワンコーラス目がジャズテイストだとすると、2コーラス目はブルース、ロックテイストと言ったらよいでしょうか。5曲目にして初めて弾きまくりと言うソロラインです。

また、このギターはライナー・ノーツにはギターとしか書かれていませんが、多分音からするとGRのノーマルトーンだと想います。そう言えばトレードのES-175が今だ登場していませんね・・・。

パット・メセニーさんのソロを受けてテーマです。和音のトップノートをメロディにしたテーマで、ペドロ・アズナールさんのヴォイスがここでも効いています。

その後で登場がライル・メイズさんのピアノソロ。コード進行はパット・メセニーさんと同じブルース進行なんですが、ちょっと聴いただけではブルース進行と想えないような感じがします。これは、ひとえにライル・メイズさんのアドリブラインが実にメロディアスで、あまりジャズ的なフレーズを使用していないためと想います。また左手のバッキングワークでのコードヴォイシングと言うかリハーモナイズ展開が見事なために華麗な流れが生まれていることも要因だと想います。

CD Time=5:26からのポリリズム的なラインは速弾きなんですが、実にクラシカルで美しいです!さらにそのクラシカルな雰囲気と美しさはCD Time=5:32からの下降していくラインで感動を運んでくれます!

06:エンド・オヴ・ザ・ゲーム
シンセドラムの様な音でのタム回しからスタートする曲。8ビートをリズムに持つ名曲ついておいでの流れを引き継いでいる曲ですね。途中で口笛の様なシンセでのメロディがあったりするのですが、基本的にはテーマらしいテーマがあると言うよりは、シンセの和音でのバッキングモチーフをそのまま連続して、さらに展開して流れていく曲、と言う感じです。

当然と言うか必然と言うか、パット・メセニーさんのソロはギターシンセ。この8ビートのリズムには問答無用に合う音ですね。

転調を繰り返していくコード進行なんですが、当然そんなスケール変更の切れ目を感じさせないで流れるようなメロディアス・ラインです。

続いてライル・メイズさんのソロ。と想ったのですが、実は譜面を見ると、この部分のメロディが書かれているんです。と言うことはこれはソロではなくて中サビのメロディと言うことになります。

ですが、ソロだと想ってしまうのは、もちろんそのメロディラインがピアノソロ的なラインを持っていると言うことがあるのですが、むしろ、いつもライル・メイズさんが弾いているアドリブラインが実にメロディアスだと言うことの証明にもなる部分だと想います。

その後テーマに戻りますが、テーマにギターシンセのロングトーンが重なってきます。このフレーズは音を聴くとチョーキングで奏でているのか、それとも2曲目のヨランダ、ユー・ラーンと同じようにスライドを使用しているのか・・・。どっちにしてもペドロ・アズナールさんのヴォイスとの絡みは抜群です。

07:もっとむこうに
ライル・メイズさんの美しすぎるソロピアノからスタートします。高い音がまるで金属の様な響き。一歩間違うと耳にきつい音になってしまうのですが、それを美しい響き、ぎりぎりで止めているところが実に肝!です。

テーマはペドロ・アズナールさんの歌。歌詞も書いています。良く通る声質でこれまた美しいですね。曲はパット・メセニーさんの作曲ですが、声質と音域を十分理解して創っていて、魅力を引き出していると想います。

また、バッキングのギターはナイロンギター。これはたぶんペドロ・アズナールさん。ボッサのバッキングが心地よいです。

ファーストソロはパット・メセニーさん。前の曲で少し心配していたのですが、この音はまさにES-175!ここに来てやっと登場です。でもソロと言うよりはカウンターメロディ的。すぐにテーマに戻ってしまいました。ペドロ・アズナールさんの歌に絡んで味のあるメロディラインを奏でていきます。

08:賛美
ポールワーティコさんのタイトな8ビートにライル・メイズさんのオルガンがいかにも賛美歌的です。コードもパット・メセニー・グループには珍しく「D→A→G」と言ういわゆるテンションノートが付いていない進行。これが更に明るい感じを出しています。ちょっとベタな感じもしないでもないのですが・・・。

時々「シャカ、シャカ♪」と大きく聴こえる12弦ギターでのカッティングがこれまた効果的ですね。そして、ブリッジの部分ではそのギターを大きくフューチャーした展開でさらに雰囲気を盛り上げます。その後、複雑に展開してからテーマがEに転調してペドロ・アズナールさんのヴォイスがテーマを奏でます。CD Time=2:22からはオーバーダビングで対旋律がさらに加わります。このハーモニーが実に美しい。自分の声でのハーモニーですのでより共鳴しているのですが、メロディラインが良いんですね。この曲もパット・メセニーさんとライル・メイズさんの共作です。まさに高揚する気分を味わうことが出来ます。それはクリスマス気分と言ったらよいでしょうか・・・。

エンディングソロはパット・メセニーさんのシンクラビア・ギターソロです。CD Time=3:02からのソロの入りのフレーズが実にメロディアスでカッコ良いフレーズです!これは肝!。CD Time=3:33にもう一度同じフレーズを使用しています。パット・メセニーさんも気持ちの良いフレーズだった様ですね。

そして厳かな中にも明るい楽しげなムードで幕を閉じていきます。・・・まさにPRAISE!。

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この作品の特徴と、個人的な魅力はそれこそ書ききれないくらいありますが、大きなところで2つほど。

ひとつめは、エレクトリックなものを最大に使用しながらも、非常にヒューマンな感じでアコースティックな香りがあることです。ある意味パット・メセニーさんが、今までの作品の中で模索してきたことと言えるのではないかと想います。それをこの作品でこれまたある意味到達したのではないかと・・・。

ヒューマンな感じはヴォイスがテーマを奏でると言う部分である程度は表現できる、と言う感覚は、ナナ・ヴァスコンセロスさんのヴォイスから得ていたのだと想います。

そこでペドロ・アズナールさんと言う美声の持ち主を発掘したと・・・。

これがこの作品の第一の魅力であって、後のパット・メセニー・グループの指標的なサウンドになると言う、実に大きな成果がになったわけですね。

そしてもうひとつは、作曲やアレンジをしていく中でメロディが重要で、もちろんこの作品のメロディも珠玉の旋律なんですが、それに加えて、リズムをひとつのモチーフにしてアレンジされている曲が多いと言うことです。

例えば、ファースト・サークルのハンドクラップやテーマの頭の部分であったり、テル・イット・オールのアゴーゴー・ベルのリズムであったり、エンド・オブ・ザ・ゲームのテーマ部分のモチーフだったり・・・。ヨランダ、ユー・ラーン賛美は強い8ビートを基調にしていますし・・・。
これはパット・メセニーさんとライル・メイズさんがよりバンドアンサンブル的なことを意識した結果かと・・・。

それに一役買っているがポール・ワーティコさん。ドラム個人としてのテクニックやリズム感の部分はもちろんですが、ここではスティーブ・ロドビーさんとのコンビネーションを指摘したいところ。これが実に合っています。どの部分を聴いてもピッタリと言う感じがします。

これは、上手いもの同士が組んでも必ず上手く行くとは言えない部分で、そのバンドのグルーヴを生み出します。

ダン・ゴッドリーブさんはマーク・イーガンさんとのコンビネーションが良かったのですが、スティーブ・ロドビーさんにはやはりポール・ワーティコさんだと想うのです。ですからこのメンバーチェンジも結果的には大成功と言う感じがするのです。このコンビがパット・メセニーさんとライル・メイズさんのリズムをモチーフにしたアレンジと言う部分をインプロバイズしたのではないかと想うのです。

それから、パットメセニーさんのギターについてですが、先にも書いた通りに別の人のギターを入れると言うことは、そのままライヴ対策と言うことだと想います。

そして、シンクラビアをフルに使っているサウンドで、もちろんギターにおいてもギターシンセとともにフル可動です。その分、ES-175の出番が非常に少ないのは残念なところですが。
前の4作品とは線を引くことができるくらいに、良い意味で変貌を遂げている作品。ですから好みのも分かれますね。

今回あらてめて聴いて見るとやはり凄い作品だと想います。でも音楽は百人百様。もちろん前4作品も好きですが、個人的にはこの作品からのパット・メセニー・グループの流れがやはり好きです。

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曲名
1. フォワード・マーチ
2. ヨランダ、ユー・ラーン
3. ザ・ファースト・サークル
4. イフ・アイ・クッド
5. テル・イット・オール
6. エンド・オブ・ザ・ゲーム
7. もっとむこうに
8. 賛美

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  1. ayukiさんの『ファースト・サークル』批評,すっごい力作ですね。このボリュームは「半端じゃない思い入れ」と読みました。
    「前の4作品とは線を引くことができるくらいに、良い意味で変貌を遂げている作品。ですから好みのも分かれますね」の記述は,正にそうです。
    私はECMのメセニー派ですので『ファースト・サークル』は「あんまり派」です。
    『ファースト・サークル』は一曲一曲はいいんですが,アルバムとしての統一感に欠ける気がするんです…。
    でもayukiさんのこのボリュームを読まされたら。もう一度聴いて出直そうと思います。

  2. テル・イット・オールでギターソロが終わった後に入って来るボイスのテーマ(?)部分、エンドオブザゲームで延々と続くシンセギターソロ、ラストの賛美で訪れる高揚感など、素晴らしい点ばかりですね。
    PMGでどれか一枚を人に薦めるとしたら、聞き易さという観点ではスティルライフかと個人的には思っているのですが、やはりこのファーストサークルも最強です。よくあるパターンかと思いますが、初めはフォワードマーチに面食らいました。でも、今ではそれも込みで大大大好きなアルバムです。

  3. セラピーさん
    コメントありがとうございます。
    確かに想い入れはありますが、今回聴きながら段々とヴォリュームが多くなっていってしまったのが真相です。
    また、1曲目と最後の曲の統一感はあると想うのですが、途中は仰る通り、統一感に欠ける部分がありますね。バンドアンサンブルやリズムの様な演奏面での統一感はあると想うのですが、楽曲に対しては、前4作品の様な強力に一貫したコンセプトは薄いように想います。前4作品が大きく捉えると、広大な古き良きアメリカの大地とするならば、この作品は都会に出てきた学生の様に、都会に馴染みつつも試行錯誤している・・・そんな感じもします。
    猫ケーキさん
    コメントありがとうございます。
    この作品、実は私も初めて聴いた時に、なかなかとっつき難かったです。ですから、人にPMGをお薦めする場合は、仰る通りにスティルライフか、後はウィ・リヴ・ヒアを薦めています。




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