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ザ・ファルコン・アンド・ザ・スノーマン/パット・メセニー・グループ 
The Falcon And The Snowman/PAT METHENY GROUP

今日はとても良い天気でした。しかし風と空気は刺すように冷たい・・・。いよいよ秋も終りですね。と言うわけで今日は、パット・メセニー・グループザ・ファルコン・アンド・ザ・スノーマンでwalkingです・・・。

パット・メセニー・グループを巡るレビューも5作品を経て、次はいよいよECMから離れてゲフィンと契約しての名作スティル・ライフ(*)へ・・・と想ったのですが、その前にグループ名義でリリースされているこの作品を果たしてパット・メセニー・グループの流れの一貫としてレビューするべきかどうか・・・。

ご存知のこの作品は映画コードネームはファルコン(The Falcon And The Snowman)のサウンドトラック。ジョン・シュレシンジャーさんが監督でティモシー・ハットンさん、ショーン・ペンさんが共演。アメリカを裏切りスパイとなった2人の若者を描く実話スパイサスペンス。

パット・メセニーさんはサウンドトラックをけっこう手がけているようですが、グループ名義でディスコグラフィーにラインナップしている唯一のサウンドトラックと言う作品ですので、多分、一連のグループ活動の中で、それなりの流れと意味があるのかな?と想いレビューをすることにしました。

実のところこの映画は観ていません。また、このサウンドトラック自体もあまりしっかりと聴いていないです。ですから映画と音楽とのかかわりと言うことでは全く解らないのですが、純粋に音楽作品として聴いてみるとどんな感じでしょうか・・・・。

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01:PSALM 121/FLIGHT OF THE FALCON
綺麗な混声合唱からスタートします。CD Time=0:39から時々かすかに聴こえるストリングスの低い音でのロングトーンが、合唱の希望を含んだ美しさとは異次元の暗い響きで、何かがありそうなムードを感じさせてくれます。

CD Time=2:50から静かに消えていく合唱のバックで耳を集中させないと聴こえないギターのチョーキングフレーズに、先ほどの異次元の暗い響きのストリングの低音が重なり、さらにシンセの音が重なってクレッシェンドされると、CD Time=2:57からいかにもパット・メセニーさんらしい明るいアコースティックギターのカッティングが始まります。

パット・メセニーさんのカッティングとベース、ドラムが一体となって16ビートを刻み、それを取り囲むように広がりをもったストリングスがテーマを奏でます。時々、ライルメイズさんのシンセでパット・メセニー・グループの代表的な笛の様な音でのメロディがストリングのテーマをスーッと奪っていく・・・。8分音符のストリングスのスタッカートなラインでエンディングです。

ストレートで、かけ引きなしの楽曲に惹きつけられます。

02:DAULTON LEE
4/6拍子に時々4/4や4/7拍子を挟みながら進みます。リズムもシンコペーションなどを多用しているのでよりテンポが取り難くなっていますね。曲はパット・メセニー・グループの名曲ついておいでなどに代表される8ビートナンバーの雰囲気を持っています。

ハーモニカの音色でのシンセと尺八の様な音のシンセがテーマを奏でていきます。音的にはパット・メセニー・グループ・オンパレードと言う感じです。

この曲にはライル・メイズさんのハーモニカ音でのソロがあります。いかにもライル・メイズさんらしいリリカルなメロディラインです。途中からペドロ・アズナールさんのヴォイスでのメロディが重なってきますが、それに絡むようにライル・メイズさんのソロは続きます。

ブラスの音と尺八風の音のラインが交互に同じメロディを繰り返していくバックで、さらにソロは続いていき、静かにフェードアウト・・・。

03:CHRIS
この曲は5曲目に入っているデヴィッド・ボウイさんとのコラボでヒットしたTHIS IS NOT AMERICAのカラオケバージョンみたいな感じです。映画の中ではこのようなメイン曲のテーマをモチーフにしたカラオケ的な曲はかなり効果的ですね。

スティーヴ・ロドビーさんのベースとポール・ワーティコさんのバスドラが淡々と同じリズムを刻んでいきます。

04:”THE FALCON”
ややゆったりとしたライル・メイズさんのピアノとスティーブ・ロドビーさんのアコースティック・ベースにパット・メセニーさんのスチール弦のアコースティックギターがカッティングを重ねます。すぐに、透き通るようなペドロ・アズナールさんのヴォイスが加わってきて情緒的に曲は進んでいきます。

ソロはライル・メイズさんのアコースティック・ピアノ。あくまでもサントラと言うことを意識してのプレイで、けして全面には出ず、さりげなくメロディラインを奏でています。途中THIS IS NOT AMERICAのコード進行をモチーフにしたような部分もあって、一貫したコンセプトを強く感じます。

05:THIS IS NOT AMERICA
先ほども書きましたがデヴィッド・ボウイさんとのコラボでヒットした名曲。

このオリジナル・バージョンももちろん良いのですが、個人的にはDVD作品ウィ・リヴ・ヒア・LIVE IN JAPAN 1995(*)でのマーク・レッドフォードさんとデイヴィッド・ブラマイアーズさんのヴォーカルが気に入っています。2人を見つめながらカッティングをするパット・メセニーさんの“子供を見る親の様な眼差し”がまたいいんですよね・・・。また機会があればこのDVDもレビューして見たいと想っていますが。

イントロのベースラインが少し3曲目のカラオケ的THIS IS NOT AMERICAとは違って2小節ごとに4拍目に細かい16分音符を入れています。ウッド・ベース独特のパーカッシブな入れ方でグルーブを生み出していますね。

デヴィッド・ボウイさんの太く搾り出すような声とささやくような声。上手く使い分けながら訴えかけるようなメロディラインを朗々と奏でていきます。

ワンコーラス終りの特徴的な“Sha la la la la♪”と言う部分は、その発音からけっこう陳腐な感じになりそうなんですが、そうなっていないのはアレンジの力でしょうか。CD Time=1:24から今までのGmからA♭mに転調するのですが、この“Sha la la la la♪”があってこその転調効果倍増!と言う感じがします。

今回歌詞の意味を訳していないので意味は良く解りませんが、時々”ファルコン”とか”スノーマン”と言う言葉も出てきますのでかなり映画に即した内容だと想われます。THIS IS NOT AMERICAはそのままの意味だと想うのですが、途中に何回か入る“NO!“と言う叫びの様なヴォイスがやけに哀しく響き、より曲のタイトルの意味を際立たせていますね。

パット・メセニーさんはこの曲では地味にミュートカッティングをしているのですが、これがけっこう効果的に響いていて曲の特徴のひとつを創りだしています。エンディング部分では、さらにそのカッティングを発展させて、2声の和音で歯切れ良くカッティングラインを刻みます。
派手な展開やソロは無く、実にコンパクトにまとまっている曲なんですが、強いコンセプトが伝わってきます。更にコンパクトゆえに、CD Time=1:24の転調は抜群に効いていますね。名曲だと想います。

06:EXTENT OF THE LIE
映画の一番面を観ているかのようなSE的なサウンドの後、ポール・ワーティコさんのバスドラとスネアがリズムを繰り返し、それにパット・メセニーさんがゆったりとしたやや陰鬱なテーマを奏でます。

ここでのパット・メセニーさんは歪み系の音。多分今までのパット・メセニー・グループの楽曲の中ではテーマとしてこの歪み音を使用するのは初めてではないかと想います。ギターの種類や歪みのエフェクトの種類は解りませんが、後のザ・ロード・トゥ・ユーハーフ・ライフ・オヴ・アブソルーションイマージナリー・デイルーツ・オヴ・コンシデンスに繋がるような感じの歪み音色です。そうするとシンクラヴィアでの歪みと言うことでしょうか。
映画と言う性質上、必要な音であったと想われるのですが、いきなりグループ作品での使用ではなくてワンポイントの異流ともとれるサウンドトラックで試験的に演奏したと言う感じもしなくもないですね。

途中からギターのメロディをオクターバーで上の音を重ねると同時にライル・メイズさんのオルガンも厚い音を重ねていきます。そしてブレイクからパーカッションのアップテンポのリフへ・・・。

パーカッションのリフを無視するかのように、厚いストリングスやSEが重なります。そして、パーカッションがフェードアウトすると今度はストリングスにスペーシーなシンセのSEが・・・。すると再びパーカッションのリフがフェードインしてきます・・・。

曲は目まぐるしい展開で、次々に様子を変えながら変化していく、まさにサウンドトラックです。

07:THE LEVEL OF DECEPTION
重厚なストリングスにパット・メセニーさんの綺麗な音のナイロン弦アコースティックが響き渡ります。しかし、それもわずかな間で、すぐに様子はスパイ映画的なサウンドに変わっていきます。

この曲もSE的で特にメロディがあるとか言う感じではなくて、いろいろなメロディやサウンドをミックスしたり次々に展開させていくサウンドトラックです。

途中、オフランプ舟歌で使用されていた心音の様なドラムの打ち込みがありますが、このサウンドの中では本当に心臓の音のようにサスペンスな雰囲気を盛り上げています。
特にCD Time=4:10からのストリングの旋律が静かに終わると同時に心音。そしてガラスが割れるようなエレピでのSE。この辺りは映画を観ていなくても、十分サスペンス的な雰囲気を味わうことが出来ます。

そしてそのバックでフィードバックとトレモロアームを使って、歪み系の音でロック的リフを奏でているパット・メセニーさんのギターが更に雰囲気を盛り上げます。この様な激しいロックリフ的なプレイは多分ほとんど聴く事ができないフレーズですね。サウンドトラックならではと言ってしまえばそれまでなんですが・・・。

08:CAPTURE
THIS IS NOT AMERICAをモチーフにしてストリングスとライル・メイズさんのピアノが静かに奏でます。そこに、パット・メセニーさんのナイロン弦が再び重厚なストリングスに囲まれながら綺麗なメロディを奏でます。

途中からまた大きく展開していき、2曲目がリフレインされます。それも途中で切れると同時にストリングスの哀しげなメロディでエンディングです。

09:EPILOGUE(PSALM 121)
ストリングスでの和音を中心として、ゆったりとまさにエンディング的なサウンドの曲。今まで曲中で使用されてきたストリングは弦でのストリングだと想われますが、この曲は何故かシンセのストリングス。弦でのストリングスだと生々しい感じがするところをあえて抑えて、少し幻想的でスペーシーな感じに仕上た意図は映画のエンディングに関係がありそう?

途中から入るペドロ・アズナールさんのロング・トーンでのヴォイスが実に綺麗です。

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後半の6曲目以降は、メロディや演奏と言うことよりも、本当に映画のサウンドトラックでやはり純粋に音楽作品として聴くのは難しいと想いました。

それでもTHIS IS NOT AMERICAなどは単独の曲としても名曲ですし、演奏的にはライル・メイズさんが多くはありませんが、所々珠玉のメロディを聴かせてくれたり、パット・メセニーさんも美しいナイロン弦のラインや珍しい歪み系の音でのロックリフを聴かせてくれたりして摘み採ると聴き所があります。

また、当然映画をコアにしている作品ですので、楽曲のもっているコンセプトは一貫しています。まあ、当たり前と言えば当たり前なんですが・・・。でも、これが実は重要なポイントなんです。

ファースト・サークルのレビューの時に、いつもお邪魔しているブログアドリブログセラピーさんから『アルバムとしての統一感に欠ける・・・』と言うコメントをいただきました。確かにファースト・サークルは演奏的には通ったものがありますが楽曲同士はけっこうバラエティに富んでいて、そのコメントになるほどと想った訳です。

そしてこの作品はそのファースト・サークルの次の作品であり、また映画サウンドトラック。嫌でもコンセプトが一貫していまします。ですから、一枚通して聴き終えると、まさに映画を観終わったあとの様な感覚に襲われました。

それはまさにトータルコンセプト。

その裏に秘めているのは、通して聴くことによって見えてくるサウンド、そして主張。けしてコマーシャルやラジオ的に“良いとこ取り”で聴いていては見えてこない強い主張。

そして、それを感じたパット・メセニーさんは、最終的にTHE WAY UPの約70分1曲収録と言うコンセプトにたどり着いていく・・・相当強引ではありますが・・・。

この後にリリースされる作品が、トータルコンセプトが一貫していてひとつの強い主張を感じることが出来れば、まさに、このサウンドトラックがTHE WAY UPへ繋がる第一歩と言う仮説の立証になる!・・・と、またも強引に結論づけ・・・かなり苦しいですが。

異流の作品と言って良いと想いますし、演奏的にも光る部分は少ないのですが、それでも、今回あらためて聴いて見てなかなか佳作だと想ったのは確かです。

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曲名
1. Psalm 121/Flight of the Falcon
2. Daulton Lee
3. Chris
4. The Falcon
5. This Is Not America
6. Extent of the Lie
7. Level of Deception
8. Capture
9. Epilogue (Psalm 121)

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  1. こんにちは。
    映画サントラということで音楽自体が主役になるような作りではないですけれども、当時のメンバーの資質を生かした透明感の感じられるサウンドですよね。私も映画の方は見ていないのですが、この音楽がどういう形で映像にあてられているのか興味あります。

  2. 猫ケーキさん
    コメントありがとうございます。
    仰る通りにメンバーの資質を良く生かしていると想います。
    またパット・メセニーさんが映画のラッシュを観て曲を創ったとすれば、映画を観ることで、パット・メセニーさんの映像的音像の一端を垣間見ることができるかも?知れませんね。




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