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TO CHI KA/渡辺香津美 【1】

段々と夏に近づいている感じがする気候になってきました。と言うことで先日は渡辺香津美さんのTO CHI KAwalkingをしました・・・。

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この作品は1980年の作品。前回が名盤KYLYN(*)を聴いてwalkingでしたので、ここは迷わずその続きが聴きたくなったと言う単純な選択。でも言わずと知れたJ-フュージョンの名作。KYLYNプロジェクトで得たものを渡辺香津美さんはこの作品で爆発させているのでしょうか・・・。

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walkingを終えて聴き終えたときの印象は、ひと言で言うと『パワー継続のたまもの!』。

渡辺香津美さんのギターコピーはそんなに数多くしたと言う記憶がありません。しかし、この作品の楽曲は半分以上はしていると想います。ですから想い入れも多い作品と言えます。

今回聴く前は、もっとKYLYNで得たエッセンスをいろいろと散りばめている感じがしていたのですが、どうも少し違った感じを受けました。

この作品は、深町純さんのニューヨーク・オールスターズでマイク・マイニエリさんが来日した時に、楽屋で渡辺香津美さんがダメ元でプロデュースをお願いしたら、意外にあっさりOK。それでも社交辞令だと想っていたらしく、その後YMOのツアーでニューヨークのボトムラインに出演していた時に、ふっとマイク・マイニエリさんが楽屋に来て、「人にプロデュースを頼んでおいて、その後どうなったんだ?」と言われて急激に話しが進んで行ったと言うことです。

このエピソードが本当だとすると、渡辺香津美さんが、いきなりマイク・マイニエリさんにプロデュースをお願いしたのはまさにKYLYNを経て得た自信、そして勢い。さらにそこから派生したYMOのツアー参加。そしてニューヨークでのエピソード。全て良い方向へ、ある意味偶然が重なっていったとも言えます。

しかしこれは全てKYLYNでのパワーが継続した結果だと想うのです。モチベーションを持ち続けて積極的に動くと、事が意外に良い方向へ向いていく事ってありますよね。でも、単純なKYLYNサウンドの延長になっていないところがマイク・マイニエリさんのプロデュースの力かと。新しいギターフュージョンサウンドを生み出したと言えると想います。

1曲つづ細かく聴いていきます・・・。

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01:リキッド・フィンガーズ
スティーヴ・ジョーダンさんのドラムリフから、マーカス・ミラーさんの歯切れの良いスラップが印象的なスタート。さらにケニー・カークランドさんのいかにもフュージョンと言うようなエレピの音にジョー・キャロさんのバッキングギターが加わると、無条件に感情が盛り上がってしまいます。

テーマはナチュラルに歪んだギター。このギターは当時の渡辺香津美さんのトレードマークであったアレンビック・ショート・スケールと言う話もありますし、KYLYNでも使用していたレスポールのアニバーサリーと言う話もあります。音の感じからするとレスポールのような感じもしますが・・・。

ちなみに、ジャケットの裏に映っている黄色いレスポールは、レスポール・スペシャル・TVモデルと言う1950年代後半ごろのヴィンテージもの。私も最近までこの作品のメインギターだと想っていたのですが、実際は、このレコーディングの時に買った楽器と言うことで、ライヴでは使用していたようですが、意外にも今までアルバムで使用したことが無いそうです。デヴィット・スピノザさんがデットストックであったこの楽器をニューヨークの楽器店で試奏していて、悩んだあげく、とりあえず家に帰ったのをいいことに、すかさず銀行でお金を下ろして2,850ドルで買ったと言うエピソードがあります。当時のレートからすると・・・かなり高い!

曲はテーマ、サビそしてそのパターンでソロ。再びテーマ、サビと言う解り易いジャズ的な構成。それでもテーマ、サビともにコード進行などバリエーションに富んでいてかなり完成度の高い楽曲に仕上がっています。

渡辺香津美さんのギターソロはCD Time=1:51からスタート。テーマと同じ4小節がワンパータンで進むコード進行で、ワンスケールで弾き抜けることも出来るんですが4小節目のコード、G/Fと言う分数コードの部分の歌い方と展開が見事です。それをアクセントにしつつ、ロックフレーバーの溢れるラインを奏でていきます。

CD Time=2:55からの展開は、ワンスケールで弾くことは出来ない難しいところ。コード進行に合わせたスケールを絶妙に繋いでいて見事に歌っています。このあたりはジャズの基本が本当に身についていると言う感じがしますね。チョーキングでスタートしますが、これが実に気持ち良いフレーズ。そしてCD Time=2:59でスケールチェンジしたフレーズを奏でさらに続けてCD Time=3:01でさらにスケールチェンジ。でも見事に歌が繋がっています。

CD Time=3:03でスライドダウンで低いフレットへポジションチェンジをしてCD Time=3:05の少し異国のテイストのあるフレーズからチョーキングアップへ。さり気無く弾いているようですが、この部分がコピーをしていて実は一番難しかった記憶があります。けっこう弦が飛んでいて、なかなかスムーズに弾くのは大変でした。

次ぎの展開は、ワンスケールで弾ける、コードの展開のほとんどない部分。渡辺香津美さんはCD Time=3:11のような機械的なシーケンスラインやCD Time=3:23のような印象的な6連符のパッセージを挟みながらも、単純になりやすいこの部分をメロディアスに弾き抜けます。

CD Time=3;28からのラインなどは無条件にカッコ良いラインです。

その後、明るいメジャーな展開になって決めのフレーズへソロを繋いでいきます。

これだけバリエーションに富んだ展開と難しいコード進行の中で、約2分くらいのソロを展開するのはまさに見事で、まさに肝!

以前聴いた時には少し粗さも気になったのですが、それがかえって若さとエネルギーになっていて、全体的には物凄いパワーになっている感じがします。

このギターソロは間違いなく名演です。

02:ブラック・カナル
一転してミディアム・シャッフル的なビートの重いナンバーです。スティーヴ・ジョーダンさんのハイハットが歯切れ良く、抜群のビート感を出しています。それに対してマーカス・ミラーさんはピチカートで少しルーズな感じで弾いています。これが、サビの部分に入るスラップの歯切れの良いパターンをより効果的にしていると想います。ピチカートとスラップって切り替えが唐突になってしまうことが結構ありますが、違和感がなくスムーズに切り替わるところは流石です。それにしてもマーカス・ミラーさんはスラップはもちろんですが、ピチカートも抜群に上手いですね。

渡辺香津美さんのソロはCD Time=1:46から。
ナチュラルに歪んだ音で、前半はあえてフレーズを刻み、タメを創りながら奏でていきます。それに比べて後半はそのバックの盛り上がりとともに連続した速いパッセージを奏でます。
サビからテーマに戻り、そのテーマをスーッと持ち上げるようにケニー・カークランドさんのピアノソロがスタートします。この一瞬周りのパターンが静かになるところが何とも言えず良い感じですね。そのまま、ジャージーでクラシカルなソロでフェードアウトしていきます。

03:トチカ
マイク・マイニエリさんのヴァイヴと渡辺香津美さんのデュオ曲。いわずと知れた渡辺香津美さんの代表的なアコースティックで美しい曲です。

ここでの渡辺香津美さんは、アコギでのプレイ。ギターは名器、オベーションのアダマスと言う楽器。このときにレコーディングに使用したアダマスは現在所有していないそうです。何処へ?誰の手に?と言うのも少し気になります・・・。

テーマはマイク・マイニエリさんの綺麗なヴァイヴが語っていきます。それに答えるように渡辺香津美さんのバッキングがささやいています。まさに楽器の会話と言う感じに時を忘れそうになります・・・。

ファーストソロは渡辺香津美さん。アコギの音と打楽器的な特性を生かして綺麗なラインを奏でていきます。

CD Time=1:23の低音弦での金属的な響きと箱が鳴っている感じを正確なピッキングで表現しています。続くCD Time=1:30では、チョップと言う、ミュートしてパーカッシブに弾く奏法で、これまたアコギの特徴を生かしたフレーズです。

また、高音の弦でもアコギらしさのあるフレーズや音を奏でていて、CD Time=1:51の音などはまさにアコギならではの『情緒あるひと響き・・・』。KYLYNの時もアコギのサウンドが実に見事だったのですが、この曲でのプレイは情緒を感じてしまう絶品のプレイですね。

渡辺香津美さんは、エレキがメイン、アコギがデザートと言っていましたが、こんなデザートならメインで食べたい!って想います。まあ最近の活動はそうなっていますが・・・。

続くマイク・マイニエリさんのヴァイヴソロはコロコロと綺麗に音が移動する感じが良いですね。ヴァイヴの音も美しいです。

CD Time=2:54からは同じリズムで2人が絡みます。先に仕掛けたのが渡辺香津美さんのバッキング。しばらく会話を楽しんだ後、CD Time=2;59の渡辺香津美さんのアルペジオをきっかけに再びテーマに帰っていきます。

04:コクモ・アイランド
フレットレスベースのラインが印象的なスタートです。ここでリズム隊が替わって、ドラムがピーター・アースキンさんでベースがトニー・レヴィンさんになります。

テーマはギターとサックスのユニゾン。サックスはマイケル・ブレッカーさん。サックスの音を少し控えめにして、ギターと同化させるようにミックスダウンしているところがマイク・マイニエリさんの技といったら良いでしょうか。それでも、しっかりと存在感があるサックスなのはマイケル・ブレッカーさんの技と言うかオーラですね。

サビの部分で少しラテンのテイストになります。ギターのメロディが心地よい風を運んでくれる感じ。CD Time=1:36のメロディ・ブレイク部分のコードと、エレピとベースのリズムが良い感じ。さらにピーター・アースキンさんのトップシンバル・ワークが効いています。

その爽やかな風を、嵐のような風が包み込んでしまうのが次ぎの展開部分。マイナーなコード進行に渡辺香津美さんがダブルノートチョーキングでアクセントを入れます。さらにCD Time=2:22のトニー・レヴィンさんの高速トレモロが効いています。

ファーストソロは渡辺香津美さん。ここでのプレイはロックテイストを封印したジャズ・フュージョンラインで攻めてきます。

渡辺香津美さんのソロの特徴と言うか、ロックテイストのソロの場合は、少し張り切る為か粗さが目立つ部分があるように想います。でも逆に、ロックの場合はロックだぜ!見たいなこだわりを感じてけっこう好きではありますが。ジャズ的なフレーズにこだわらない部分が魅力でもあります。

それでもこのソロのようなジャズ・フュージョンテイストのラインは抜群な上手さと粒の揃ったラインを聴かせてくれます。

CD Time=2:15のスタートからいきなり少しつっかかったようなカッコ良いフレーズ。CD Time=2:31からのピーター・アースキンさんのバスドラが入るのと同時に、フーレズが段々とリズムの乗っていきCD Time=2:36のスタッカートなラインからCD Time=2:41までの速いパッセージは粒揃い。

その後は少し音数を減らしてブルージーに奏でてCD Time=3:03からのラテンフレーバーのバッキングパターンへ。メロディアスに弾き始めますが、CD Time=3:13からのスケールライクな16分音符のラインから6連符まで息つく暇もなく連続します。

その後も所々で速いパッセージなどを挟みながらも、コード進行を捉えたラインで弾き抜けます。

テーマを挟んでマイケル・ブレッカーさんのソロです。前半の静かなバッキングの部分では、少しルーズに引きずったようなフレーズ展開です。その後のラテンフレーバーのパターンに入ると段々と歯切れの良いライン展開に変わり次第に盛り上がってきます。

CD Time=6:45からはアウトフレーズ。良く聴くと合っていない?ような感じさえする音を選択してちょっと明後日?の方へ行きかけます。すかさずCD Time=6:51で戻り、超スタッカートな上昇フレーズへ。さらにそれをひとつのモチーフにしてCD Time=6:56からリズミカルなラインを奏でます。このあたりの繋がり方と構成は流石の上手さです。

CD Time=7:11はキジが鳴くようなひと吹きフレーズをモチーフにして吹き進めます。この部分でそれに答えるように、フレットレスベースの不安定な音程を利用したやや変態チック?なフレーズをトニー・レヴィンさんが奏でます。そしてマイケル・ブレッカーさんがそれを断ち切るロングトーン。さらに、CD Time=7:26から速いパッセージの連続技に入ります。

CD Time=8:12からフェードアウトまでは、リズムを中心としたラインで渡辺香津美さんのバッキングギターと絡みます。それでもフェードアウト近くでは怒涛の速いパッセージが爆発しています。

全体的にリズム的なアプローチやひとつのモチーフを連続して組立てて展開すると言う部分が多く、セッションと言うかライヴ的なソロに仕上がっている感じがします。怒涛の速いパッセージが少ないような感じもありますが、全体のグルーヴを引き出そうと言うような一歩引いた余裕を感じるソロですね。

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続きのトラックは次回に・・・。

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曲名
1. LIQUID FINGERS
2. BLACK CANAL
3. TO CHI KA
4. COKUMO ISLAND
5. UNICORN
6. DON’T BE SILLY
7. SAYONARA
8. MANHATTAN FLU DANCE

2008/05/17 | 渡辺香津美

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コメント/トラックバック (6件)

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  1. 名盤ですね!当時はケニーカークランドって誰?って感じでしたが、後にあれほど活躍するとは。素晴らしいギターソロだけでなく、凄いメンバーの、しかも各人の代表作とも言える様な名演が聞ける嬉しいアルバムですね。

  2. 『トチカ』は,J-FUSIONの金字塔ですよね。ayukiさんの批評も,いつになく喜びの表現が多いような…。かなり細かく聞き込んだ跡が表われ,参考になります。
    ベーシスト=マーカス・ミラーの素晴らしい演奏が印象的です。マイルス・デイビスと渡辺香津美。リーダーの違いがマーカス・ミラーのプレイ・スタイルの違いです。また香津美とマーカス,共演してくれないかなぁ。ayukiさんはいかがですか?

  3. 大名盤ですね。
    A面で一番好きなのは、やはりコクモ・アイランドです。
    風を運んでくれるサビ部分のアースキンのトップシンバルに痺れてます!
    黄色いレスポールはメインではなかったんですか。。。

  4. 猫ケーキさん
    コメントありがとうございます。
    メンバーが今考えると物凄いのですが、当時はまだ若く、その意味では各人の代表的な作品になりましたね。
    ケニー・カークランドさん、仰る通りに良いプレイです!
    セラピーさん
    コメントありがとうございます。
    喜びの表現が確かに多いですね。つい力が入りました!
    マーカス・ミラーさんのプレイは良いですね。そう言えばこの『トチカ』のツアーでマーカス・ミラーさんも来日していたんですね。その秘蔵映像なんかもあれば見てみたいですね。また、熟練した2人の共演も仰る通りいいですね。
    milkybarさん
    コメントありがとうございます。
    私もずっと黄色いレスポールがメインだと想っていました・・・。さらにあのレスポールはジャケットだと黄色なんですが、実際はナチュラルのようですね。
    ピーター・アースキンさんのさり気無いドラミングが全体を締ったものにしていますね。

  5. ご無沙汰しております。
    この作品、特にコクモ・アイランドにおけるブレッカーのテナーソロは、フュージョン史に残る名演といってよいと思います。
    中学の頃はLP盤で何回も聴き込んで(といってもカセットテープにダビングして)、頭の中で曲全体の流れを暗記してしまいましたが、ayukiさんの記事を読んで、本格的に分析するとそういうことだったのかと改めて感心しました。
    アースキンとレビンのリズムも、ブンブン跳ねていてすごいとしか言いようがありませんね。

  6. kuさん
    コメントありがとうございます。
    コクモ・アイランドのマイケル・ブレッカーさんのソロは少し引いた感じが良かったりしますね。
    『本格的に分析・・・』と言っていただくには、お恥ずかしい程度のものですが、またコメントいただけれと想います。




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