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TO CHI KA/渡辺香津美 【2】

渡辺香津美さんのKYLYNのTrack05から細かく聴いてみます・・・。

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05:ユニコーン
この曲は言わずと知れた渡辺香津美さんの代表的な曲。CMに使用されていたことは言うまでもありませんね。

テーマはいかにもギターがハマるメロディ。ギター以外では考えることが出来ない!と言うようなギターならではのメロディを持っています。その他にギターでなければ!と言うメロディを持った曲と言えば高中正義さんのブルー・ラグーンなどを想い出します。

頭のキメは4拍目の裏で16分休んで2発入ります。そしてマーカス・ミラーさんのベースとジョー・キャロさんのバッキングギターがユニゾンでバッキング・ラインを2拍分奏でます。その2拍目の最後の音に重なって渡辺香津美さんがスライドで食って、テーマを3拍目に奏でます。そして今度は8分休んで16分音符でのキメを4拍目に・・・。

次ぎの4小節のCD Time=0:10ではジョー・キャロさんが音をオクターヴ上げてユニゾンをします。これが結構効いていますね。

テーマ自体が短いので2コーラス目の頭のキメを渡辺香津美さんがオクターヴ音を上げて奏でたり、テーマの終りCD Time=0:43もオクターブ上げたりしてバリエーションをつけています。

このテーマをスコア譜面に起こすと、見事にそれぞれの楽器が適所に重なりながら流れているのが解ります。この複雑で計算され尽くされたアレンジはまさに肝!

CD Time=0:50から8ビートになって渡辺香津美さんのソロがスタートします。バックのリズムが少し跳ねた8ビートになっているのを受けて、基本的には、6連符を3つに分けて3連符のフレーズをひとつのモチーフにして全体の構成を組み立てているソロになっています。

CD Time=0:59は右手の指で押さえるライトハンドでフレーズ。そしてCD Time=1:02からはエドワード・ヴァン・ヘイレンさんで市民権を得た?ライトハンド奏法でのフレーズ。その後は3拍ほどブレイクを創って次ぎのフレーズに入ります。

ちょっとライトハンド奏法のフレーズが今一発展途上と言うか、つい入れてしまったと言うか。3拍のブレイクが個人的にはちょっと間が抜けた感じを受けてしまいますが・・・。1曲目のリキッド・フィンガーズでもハーモニクスを使用しているフレーズはエドワード・ヴァン・ヘイレンさんのプレイを見て取り入れたそうです。

続けて、機械的なシーケンスラインで上昇して行くフレーズを奏でて3連符と16分音符を組み合わせた5音のフレーズで今度は下降していき、CD Time=1:13からは3連符をプリングとハンマリングで連続して行くジェフ・ベックさんなどが得意としていた奏法で弾き抜けます。

この部分なんですが、本当はライトハンド奏法で弾きたかったのかなと?そうすると最初のライト・ハンド奏法のフレーズがイントロダクションになって効いてくると想うのですが・・・。このようなフレーズでライトハンド奏法を絡めてくるのはT-スクエア安藤まさひろさんなどは上手いですね。

CD Time=1:26からは、3連符をモチーフにしてトップノートだけを変化させていくフレーズから3連符を絡めた下降フレーズで弾き抜け16分音符の機械的なアウトフレーズから32分音符の速いパッセージへ、そして6連符の連続技に入ります。

最後はオクターブをばらしながら下降していき、32分音符での怒涛で粒揃いの下降フレーズで締めます。

それにしても、このバッキングでのマーカス・ミラーさんとスティーヴ・ジョーダンさんのビートはグイグイきて良いですね。

再びテーマに入り、マイク・マイニエリさんのソロに入ります。そのソロの入り口部分でマーカス・ミラーさんが奏でるフレーズはテーマのバックのギターとのユニゾンのメロディをモチーフにしています。このアレンジもかなり良いですね。

マイク・マイニエリさんのソロのバックは跳ねていないベタな8ビート。その流れに乗ってブルージーなソロを展開しています。

そして幻想的展開から再びテーマに戻ってエンディング。

まとまりがあってコンパクトな中にもスピード感と飽きさせない絶妙なアレンジが効いている名曲です。

06:ドント・ビー・シリー
マーカス・ミラーさんとスティーヴ・ジョーダンさんが奏でるファンクビートが強烈な曲です。特にマーカス・ミラーさんのスラップのプルがアクセントになっていると同時に曲のイメージを決定づけています。

渡辺香津美さんのソロはCD Time=0:27からスタート。2つのコードが繰り返されているバッキング・パターンですが、ボキャブラリー豊富なフレーズ展開で単調になりやすいソロを上手く組み立てています。

その後続けてギターソロがありますが、今度は音色を変えて奏でます。聴いた感じからするとハーモナイザーでオクターブ上と下の音をエフェクトしているようですが、ライナーを見るとコルグのギター・シンセサイザーのクレジットがあります。テーマの部分でもこの一聴不思議な音が奏でられていましたのでこれはシンセと言うことだと想います。

それでも単純に音色をかえるだけではなくて、フレーズもそれにあった少しファニーで細かいフレーズ展開をしているのが見事ですね。

その後ウォーレン・バーハートさんのオーバーハイムでのソロを挟んで再びテーマに戻りフェードアウトしていきます。

07:サヨナラ
トニー・レヴィンさんのフレットレスベースのメロディが美しいスタートのバラード。それに重なるように渡辺香津美さんのクリアトーンでのメロディが奏でられていきます。漂う哀愁と美しさのある名曲だと想います。

渡辺香津美さんのソロは単音をスタッカートに奏でるフレーズからスタートします。クリアトーンでのソロはこの作品ではこの曲のみになりますので優しい音色に少しホッとします。

途中に聴かせてくれるコード奏法が綺麗で良いですね。また、速いパッセージのラインもメロディアスで且つ粒揃いで見事です。個人的には、クリアトーンの渡辺香津美さんのフレーズの方がどちらかと言うと好み。これだけ粒の揃ったフレーズを奏でるのはなかなか難しいです・・・。また全体的にとてもメロディアスなのがグッと来ます。

その後を受けるウォーレン・バーハートさんのピアノソロも美しいです。

08:マンハッタン・フルー・ダンス
シャッフル・ビートのライヴ、セッション的な乗りのある曲。テーマは再びマイケル・ブレッカーさんとのユニゾンで奏でられていきます。

以前この作品を聴いた時に、この曲だけやけにラフでライヴな感じがしたのですが、やはり今回も同じ感覚を持ちました。それぞれがラフに演奏していて、特にトニー・レヴィンさんが結構重いビートと言うよりは浮遊感のあるようなフレーズ展開をしているのが印象的です。マイケル・ブレッカーさんのソロスタート部分のフレットレスのスラップなどは意外と言えば意外な展開。そのためかどうか解りませんが、ピーター・アースキンさんが今一歩弾けていないのが残念な感じもありますが。

渡辺香津美さんのソロは弾きまくり大会。ソロの細かい構成などはとりあえず置いておいてセッション的な乗りで弾き抜けています。

マイケル・ブレッカーさんはかなり大人しめのフレーズ展開で、ブルージーと言えばそうなんですが、もう少しこちらも暴れて欲しかったと個人的には想います。それでもライヴな感じは最後の曲に相応しい華やかさがあります。

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walkingを終えて聴き終えたときの印象の『パワー継続のたまもの!』は、細かく聴いた後もやはり同じように想いました。

とにかく勢いとパワーを感じる作品で、言うまでも無く、それを引き出しているのがKYLYNでの活動とマイク・マイニエリさんのプロデュース力。さらに、バックのミュージシャンの余裕を感じるような技とノリ。

でも、このメンバー選択はマイク・マイニエリさんの絶妙な選択。渡辺香津美さんが曲を創ってマイク・マイニエリさんに聴かせると、その場で電話連絡をしてオファーしたそうです。

また、実際は、最初ゆっくりとしたスピードで合わせていって30分もするとほぼ曲が出来上がっていると言う凄腕ミュージシャンたちの中で、渡辺香津美さんはかなりの緊張状態にあったようです。

その緊張を上手く取り除いてリラックスさせたのもマイク・マイニエリさんのアドヴァイス。『もっと力を抜いて自然体でやった方がいい』と。

さらに、マーカス・ミラーさんが自転車に乗って鼻歌混じりでスタジオの中まで入ってきて、それでいてプレイすると凄い!と言うエピソードを始めに、仕事だけど音楽を楽しんでいると言う部分も凄腕ミュージシャンたちから学んだと聞きます。

リラックスした為か多少ラフなプレイもありますが、逆にそれが自然体の渡辺香津美さんのプレイになって、それは今も継続しているのだと想います。

それにしても名盤です。これだけギターを弾きまくっているフュージョン作品って、日本のみならず海外でもあまり多くないのでは?と想います。

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曲名
1. LIQUID FINGERS
2. BLACK CANAL
3. TO CHI KA
4. COKUMO ISLAND
5. UNICORN
6. DON’T BE SILLY
7. SAYONARA
8. MANHATTAN FLU DANCE

2008/05/20 | 渡辺香津美

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コメント/トラックバック (4件)

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  1. お邪魔します。
    詳細な分析・・・何時もながら流石ですね!勉強になります。
    全曲傑作ぞろいの名盤中の名盤ですネ。私も何度聴いた事か・・・フュージョン全盛期に作られた、まさにに時代が必要としたアルバムだと思います。それと香津美さんのロック色を上手く引出したマイク・マイニエリのプロデュースの功績も勿論大きいですが、それをここまでリアルのサウンドに仕上げたエンジニアの業績がもっと評価されるべきだと個人的に思っています。
    ギター・サウンドですが・・・絶対にハンバッカーのサウンドだと思っています・・・多分(汗)

  2. こんばんは。
    このアルバム良いですね。
    マイケルのソロといい渡辺さんのプレイといいおっしゃるようにパワーを感じます。
    ギターいいですね〜。
    管から入ったフュージョンですがこちらのブログや上記のフュージョン様のところへお邪魔するようになってからギターにとても惹かれています。

  3. FUSIONさん
    コメントありがとうございます。
    エンジニアの業績・・・なるほどです。いつも影に隠れていますが、プロデューサーやミュージシャンの思想を具体的にするテクニックって難しいですね。仰る通り、この作品についてももっと陽が当たってもいいですね。
    bonejiveさん
    コメントありがとうございます。
    ギター好きの欲目ですが、ジャズにおいてもフュージョンにおいてもギターの役割ってかなり大きいと想っています。お手軽な楽器ゆえの難しさ。だから成功者の多くが突出した名演を残す・・・と言う感じでしょうか。

  4. こんにちは。かなり細かく分析されててすごいですね。TO CHI KAは、私もかなり聞き込みましたね。ギターのコピーなんかもやりましたけど。
    確か、リリースされた時に、全米ビルボードJAZZフュージョン部門で20位にランクされたと聞いていますが。
    本当に完成度の高い作品ですね。




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