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キャプテン・フィンガーズ/リー・リトナー 【2】

リー・リトナーさんのキャプテン・フィンガーズのTrack04からレビューの続きです・・・。

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04:マルガリータ
ちょっとマイナーで先の展開が想像しにくいイントロ。リー・リトナーさんが変わっていくコード進行に合わせてフリーな感じでメロディを重ねていきます。

ブレイクの後、ダウリィ・ゴンガさんのエレピのバッキングが印象的な、テンポアップされたパターンに入ります。ハービー・メイソンさんのハイハットのアクセントにユニゾンのバッキングラインがビシッと決まっていきます。言ってみれば攻撃的なサウンド。それはフュージョンと言うのに相応しいエッセンスのひとつですね。

リー・リトナーさんのソロはCD Time=2:24からスタート。テーマのメロディをモチーフにしたフレーズを最初の2小節はチョーキングのアップダウンで締め、次ぎの2小節は音程を変えてスライドを絡めて締めます。そして次ぎの2小節は中間を8分音符のダウンフレーズからトリルで締めて、次ぎの2小節はモチーフ自体で締めます。

今までの3回は全て前の小節の4拍目からスタートしているのですが、この最後は頭を1拍休んでスタートしています。この休符が絶妙な間を創ります。最初の8小節のこのモチーフの展開は、技術的に難しいわけではないのですが抜群のセンスと上手さを感じます。

さらに、この後の8小節は速めのパッセージが段々と出て来て盛り上がっていくのですが、終わり部分のCD Time=2:50で再び最初のモチーフで締めています。ここに再び登場させるところは心憎いものがあります。

その後のラインは16分音符を連続させたラインを軸にして奏でていきます。特にCD Time=3:06からのコード進行に合わせてスケールが動いていく感じは物凄く気持ちの良いラインです。

このソロはスタートの展開が良いこともありますが、ジャズでもなく、ロックでもない。いかにもフュージョン!と言う感じのソロラインだと想います。

05:可愛いアイシャ
デイヴィッド・フォスターさんの重厚なエレピに乗せて、リー・リトナーさんのヴァイオリン奏法がお馴染みのメロディをスローに奏でていって段々をテンポを創り、ジェフ・ポーカロさんのタムがインしてきてブレイク。

ビル・チャップリンさんの歌が入って再びブレイク。そのブレイクにワウを使用したレイ・パーカー・Jrさんのギターカッティング。そしてビル・チャップリンさんの歌い始めに重ねて、ジェフ・ポーカロさんのおかずとマイク・ポーカロさんのベースのアクセントからインテンポに・・・。
いいスタートです。しかも超豪華なメンバー!

曲はそれこそ言わずと知れたスティービー・ワンダーさんの超代表曲。でも、この曲をフュージョンテイストでこの作品に収録すると言うセンスが、リー・リトナーさんの単なるギタリストではない、プロデューサー的な部分を物凄く感じます。

ジェフ・ポーカロさんのドラミングがタイトで良いですね。もちろんリズム隊としてのマイク・ポーカロさんとのマッチも完璧です。さらに左チャンネルのレイ・パーカー・Jrさんのカッティングがファンキーで見事。そして右チャンネルのリー・リトナーさんのカッティングは(多分・・・)単音をミュートして奏でる得意技。

その抜群のリズムに乗ってビル・チャップリンさんが朗々と歌っていく感じがまた良いです。
テーマを挟んでリー・リトナーさんのソロです。

ここはテーマのメロディをギターで奏でると言う感じのソロまわしなんですが、絶妙なのはそのフェイク。そしてアーティキュレーション。何も難しいフレーズを展開しなくても、テーマに沿ってフレーズを展開していくだけでも十分インプロヴィゼーションとして成り立つと言う典型的なラインだと想います。

CD Time=2:23から展開をしていきます。このソロバックのアレンジもインパクトになっています。そしてブレイクに、デイヴィッド・フォスターさんのエレピでのダウンフレーズが入って転調をしたテーマ部分へ入ります。

この転調はGからG♯への半音転調。コーラスのフロントでビル・チャップリンさんがテーマをフェイクしてパワフルに歌っていきます。この半音転調と言うのが、パワフルさと声のツヤを演出しています。半音上がっただけでもシャウトしやすくなるんですね。

その意味でも先ほどのソロバックのアレンジは単なるインパクトのみならず、半音転調を違和感なくするための見事なアレンジと言えます。

そしてリー・リトナーさんとビル・チャップリンさんのユニゾンプレイに入ります。ジョージ・ベンソンさんのようにギターと同時に歌う場合は別として、どちらかを先に録音するのか、それともラインを決めておいて同時録音するのか、興味がありますね。リー・リトナーさんの場合は、ソロも譜面起こしをしていたと言う噂もありますので後者のような気もしますが、それにしても良く合っていてグルーヴやのりもいいですね。

エンディングに向けてビル・チャップリンさんのシャウトを奪い取るようにリー・リトナーさんのソロが続きます。ここでは、ワンコードに乗って、かなり速いパッセージをたたみ掛けるように展開します。可愛いアイシャの可愛いと言う雰囲気を壊す、熱いソロでフェードアウトとなります。

それにしても名曲。テーマが結構コンパクトにまとまっていますのでテーマ回しをしてアドリヴをしていくだけでも面白いですね。セッション向きの楽曲とも言える名曲です。

06:スペース・グライド
何とも味のあるファンキーテイストのギター・カッティングでスタートします。このカッティングは作曲者でもあるミッチ・ホルダーさんだと想います。

タイトなジェフ・ポーカロさんのドラムが入ってから左チャンネルに入ってくるワウを効かせたレイ・パーカー・Jrさんのカッティングがさらにファンキーさに色を添えます。

スライドを使用したようなフレーズ展開から、得意の速いパッセージを聴かせてくれるリー・リトナーさんのソロの続いて、テーマのサビに絡んで対旋律を奏でていたアーニ―・ワッツさんのソロです。

この作品では唯一のサックスと言うことになります。今までギターオンリーのサウンドでしたので、ここでのサックスラインが実に効いています。一瞬にしてサウンドが華やかになるのが、まさに管楽器の力と言う感じでしょうか。

エンディングはアーニ―・ワッツさんのソロを受けて、リー・リトナーさんがソロを。掛け合いか!と想った瞬間にフェードアウトしていきます。ここは、やはり掛け合いですよね?かなり残念なフェードアウトです・・・。

07:サン・ソング
クラシックギターの綺麗な響きからスタートするバラードです。ここでのリー・リトナーさんはライナーノーツからYAMAHAのクラシックギターだと想われます。

リー・リトナーさんはクラシック・ギターの名手とも言われています。具体的にクラシックのメソッドを学んだのかどうかは良く知りませんが例えば、CD Time=1:47からのコードでの音を、その後のCD Time=1:50でメロウな音に音色を変えるテクニックなどは、まさにクラシックの奏法的と言えます。

インテンポになるとそのままギターソロになっていきます。ナイロン弦になることで、急激にヒューマンになるのがまさにクラシックギターの魔力ですね。もちろん、弦だけの変化だけではなくて、リー・リトナーさんのフレーズも全く違うのはもちろんなんですが。

最初はソロと言うよりはテーマでしょうか。創り込まれたような綺麗で丁寧なメロディです。CD Time=2:39からは、クロマティックラインや3連符などをアクセントしたフレーズや16分音符の丁寧なフレーズを繋いでいきます。

CD Time=3:00からは、コード奏法を聴かせてくれます。リー・リトナーさんはクラシックギターでも、ピックを使用してカッティングのように歯切れの良いコードを奏法を得意としているのですが、ここでは、ピックと指を使用して弦を摘むような、ちょっとボサノバの奏法のような繊細なコード奏法です。

その後は作曲者でもあるデイヴ・グルーシンさんのエレピソロです。高い音を細かいフレーズで繋ぎ、少しファニーに可愛らしく奏でていきます。CD Time=4:03から歯切れの良いコード奏法。バックのストリングと同化していく感じが良いですね。

エンディングのCD Time=6:03からストリングスの旋律にリー・リトナーさんのソロが重なってきます。最初はストリングスのメロディに答えるように進んでいくのですが、フェードアウトし始めると16分音符の連続したパッセージを奏でます。

CD Time=6:25から6:31までの約5秒間なんですが、流れが実にスムーズで、しかもメロディアスでまさに肝!でも、無情にもその5秒後にはフェードアウトで曲はエンディング・・・。ここでも少し短いエンディングソロが残念です・・・。

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walkingを終えて聴き終えたときの印象は『やはりインパクトが薄め』でしたが、細かく聴いてみたら、インパクトと言うことでは変わらない感想なんですが、作品としては、丁寧で創り込まれている感じを受けました。非常にクオリティの高さのある作品だと想います。

1曲づつ聴いていくとフュージョンの持っている攻撃的な面があるのですが、例えば先日レビューをした渡辺香津美さんのトチカキリンのような尖がった鋭さはなくて、全体を通してみると非常にポップと言うか、聴きやすいサウンドです。これも、インパクトが薄いと言う印象に繋がった部分と言えます。

ジェントル・ソウツでの演奏やライヴ映像をみると、そちらのインプロヴィゼーションの方がかなりアグレッシブでいい感じがします。ライヴの方がよりクリエイティヴでインパクトのある演奏をするように想います。多分、スタジオ録音の場合は考え過ぎと言うか、練りすぎなのではないかと言う感じが、この作品を細かく聴いてみて想ったわけです。

スタジオ・ミュージシャンとしての名前が先行して、ギターと音楽を本当に認めていた人は少なかったのでは・・・と言うことをリー・リトナーさんが言っていたことがあるとライナーノーツに記されています。

この作品では、売れっ子スタジオミュージシャンと言う枕詞が両肩にずっしりと乗っているリー・リトナーさんの、もう一歩型を破り切れていない部分を感じるのです・・・。
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曲名
1. キャプテン・フィンガーズ
2. ドルフィン・ドリームス
3. フライ・バイ・ナイト
4. マルガリータ
5. 可愛いアイシャ
6. スペース・グライド
7. サン・ソング

2008/05/29 | リー・リトナー

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  1. 「この作品では、売れっ子スタジオミュージシャンと言う枕詞が両肩にずっしりと乗っているリー・リトナーさんの、もう一歩型を破り切れていない部分を感じるのです」には同感です。
    これにはリトナーはもとよりスタッフのリトナー像も影響しているのではと思います。デイヴィッド・フォスター,ジェフ・ポーカロ,レイ・パーカー・Jrの起用と聞くと,何となくイメージが…。それにしても『キャプテン・フィンガーズ』はもっと評価されてもいい名盤だと思っています。

  2. セラピーさん
    コメントありがとうございます。
    仰る通りに周りが創り上げていったリー・リトナー像ってありますね。そう言えばリー・リトナーさんは『フュージョン・ギターの貴公子』などと言われていました。そんなイメージが先行していたのですね。




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