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MASUOライヴ/増尾好秋 【1】

昨日は増尾好秋さんのMASUOライヴでwalkingをしました・・・。

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この作品は1980年のリリース。ほぼリアルタイムに近い時に本当に良く聴いた作品です。

増尾好秋さんの作品はこのライヴが実は最初に聴いた作品で、その後でセイリング・ワンダーグッド・モーニングを聴いたと言う逆の流れを辿っていきました。その為、このライヴでのハードな面とソフト&メロウな面のギャップに戸惑い、その後ほとんど聴かないままに増尾好秋さんの作品は自分の中である意味お蔵入りとなってしまったわけです。

先日、たまたまこのライヴを含めて3枚ほどのCDを手に入れることが出来ました。どの作品をレビューしようか?と考えた時にやはり当時聴いた順番にと言うことで、今回は、下手をしたら20年ぶりくらいに通して聴くことになるであろうこの作品でwalkingをしました・・・。

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walkingを終えて聴き終えたときの印象はひと言で言うと
『やっぱりすげェ・・・これは』

『すごい』では無くて『すげェ』と言うニュアンスがミソで、とにかくその圧倒的なパワーがまさに『すげェ』と言う感じでした。さらに細部に渡って覚えているんですね。これが。人間の記憶と言うものは、こちらも『すげェ』と想いました。ソロなどはメロディをしっかりと覚えていて一緒にフレーズを歌うことが出来ました。

特に良く覚えていたのはベースのT.M.スティーヴンスさんのプレイ。今聴くと粗さはかなりあるのですが、それでも強烈なパワーとインパクトがやはりありました。

細かく聴いていくと、また違った感覚になるかも知れませんので、1曲つづ細かく聴いていきます・・・。

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01:ディーリング・ウィズ・ライフ
ドラムのロビー・ゴンザレスさんのカウントにオーディエンスの拍手と歓声が重なり、1拍早く増尾好秋さんのフレーズがスタート。このイントロの部分をカッコよくしているのは、リズムやメロディもありますが、大きな部分としては分数コードを連続しているところ。

分数コードと言うのは、文字通り分数で表示されるコードのことで、例えば、F/GとかG/Aとか。非常にお洒落なコードで、特に現代のポピュラーソングには欠かせないコードと言えます。この時代のフュージョンはこの分数コードを多用することが多くて、それがひとつのサウンドの特徴になっていたりします。

この後のブレイクでのT.M.スティーヴンスさんのベースが無条件にカッコいい!基本的にはこの曲のベースパターンを刻んでいるのですが、1回目はパターンの後、スラップのかきむしり的な荒々しいフレーズで締め、2回目はパターンの後、ハーモニクスで締めます。

そしてドラムがインして、絶妙にスネアと連動したパターンに変えて、最後は6連符の速いダウンフレーズで締めます。それを受けて、ドラムのロビー・ゴンザレスさんのスネアが同じく6連符で決めて、全体のリズムがインしてきます。

この部分は、本当に肝!で、過去に何回となく聴いたのですが、やはり今回も何回か想わずリピートをしてしまいました。・・・無条件降伏です。

リズムが入ってからも超絶なベースパターンは続いているのですが、耳に飛び込んでくるのは左チャンネルのヴィクター・ブルース・ゴッジーさんのエレピバッキング。これはフェンダーローズの音だと想いますが、歯切れの良いバッキングがいかにもこの時代のサウンド。少し歪んでいるところもまた味ですね。

テーマに入る前のT.M.シティーヴンスさんのベースパターンが8分音符をルーズめに弾いていて、超絶だけではない絶妙な音運びを聴かせてくれます。それを受けて増尾好秋さんのテーマは良く歪んだギターサウンド。

当時、増尾好秋さんがどのような機材だったのか全く解りませんので何とも言えないのですが、ジャケの裏側を見るとセミアコのようですが、表のピンスポが当たっている、実に渋い写真から判断してサンバーストのヤマハのSGでは無いかと想われます・・・。

かなりブーストしているらしく、フィードバックが掛りそう、と言うか少しハウっているのがライヴな感じでいいですね。

CD Time=1:09からのサビの部分は、少しラテンのリズムが入った3連のポリリズム的なパターン。ここで増尾好秋さんは、今までの少し甘いフロントピックアップからスイッチングで煌びやかなリアピックアップに切り替えをしていると想われます。それはCD Time=1:20でテーマの戻る部分の音色と比べると良く解ります。細かいところなんですが非常に効果的な選択ですね。

また、このサビの部分のバッキングのベースパターンがこれまた超絶なパターン。

そして転調をして再びテーマのモチーフに入ります。ここでは、テーマのメロディの合い間に入るパーカッションが効果的と言うか、少し唐突な感じもしますが、これはこれでいい感じではあります。パーカッションはシャーリーさん。増尾好秋さんの奥様ですね。

CD Time=2:22の増尾好秋さんのピンポイントの低い音でのスライドをジョイントにしてエレピのヴィクター・ブルース・ゴッジーさんのソロに入ります。リズム隊の強力なビートに乗って軽快にフレーズを重ねていきます。かなりリズム隊に触発されたのか、CD Time=3:00から後はエレピが歪みまくります。かなり力の入ったソロで増尾好秋さんに引継ぎます。

ここでの増尾好秋さんのフレーズはブルース・ロック的なフレーズで単純に速弾きでたたみ込むようなフレーズ回しではありません。一聴、もっと激しいフレーズをとか、上手くないじゃん、見たいに感じるところもあると想いますが実はフレーズのひとつひとつがとても丁寧で且つメロディアス。良く聴いて見るとギターが歌っている感じが物凄くします。

CD Time=3:50からは、チョーキングでのフレーズを決めてからCD Time=3:52のブルージーなフレーズへ。さらに、そのブルージーなフレーズをモチーフにしたラインを決めて再び同じフレーズに戻ります。そしてCD Time=3:58とCD Time=4:01でもそのモチーフを決めます。短い間に4回同じモチーフを決めて、その間をモチーフの展開で繋いでいくと言う流れになっています。計算されつくされたかの様な見事なフレーズ展開で肝!です。

CD Time=4:40からはロングトーンのチョーキングフレーズを2回決めてCD Time=4:46から3連の細かいプリングを絡めたフレーズから、エンディングをさらにチョーキングフレーズで見事に閉めます。ソロの終りをきちんと閉めるって結構プロでも難しいと想います。ライヴだとつい力が入り過ぎて、終わりたくないけど終わってしまい唐突だったり尻切れだったりすることがままあるのですが・・・。キッチリ終わっているフレーズはまさに歌っていると言うことと、組立てがしっかりしていると言うことだと想います。

増尾好秋さんの、サウンド全体を見ているプロデューサー的な冷静さが生み出している名演だと想います。

まあ、バッキングが熱いので、逆にこの冷静なソロ回しは効果的ですね。特にT.M.スティーヴンスさんは、ちょっと『あっちの方?』へ行ってしまったかの様な迫力のバッキングです。

再びサビに戻ってテーマに入り、CD Time=5:48からT.M.スティーヴンスさんのソロです。
このソロの弾き方について、当時組んでいたバンドのベーシストが、これはスラップのプルで弾いていると言っていたのですが、当時それが本当か?と言うちょっとした内輪の論争になっていたことを想い出します。

今回聴いてみて、確かにスラップのプルのようでもありますが、多分、T.M.スティーヴンスさんは右手のフィンガリングが物凄く強いのではないかと想います。それこそベースの弦がビビルくらいに強いフィンガリングがプルのような効果をもたらしているのではないかと。普通、スラップとピチカートだと、断然ピチカートの方が弱いので音色やヴォリュームも下がり気味になるのですが・・・。

ですからT.M.スティーヴンスさんの場合は、スラップとピチカートを混ぜて弾いていても違和感なく音色が繋がっているのでは無いかと想うのです。

例えばCD Time=6:12は明らかにプルの音だと想いますが、続くCD Time=6:15からのフレーズはプルではかなり難しい速いパッセージ。その後のCD Time=6:18からのフレーズは間違えなくスラップだと想うのですが、その後の3連のポリリズムフレーズから続くCD Time=6:30でのダウンフレーズはピチカートっぽいし・・・。

と言うことでどなたかお解かりの方がいましたら、教えていただきたいところですが・・・。とにかく荒々しいのですが、猛烈な迫力で迫ってきてまさに肝!実はこの作品を想い出すときには必ずこのソロを想い出していました。それぐらい当時もインパクトがあったソロでした。今回も強烈なインパクトでした。やはり・・・。

それにしても強烈な曲です。この力は当時のフュージョンが持っていたパワーと言ったら良いでしょうか。歴史に残る名演だと想います。やはり・・・無条件降伏です。個人的な想い入れもありますが・・・。

02:グッド・モーニング
いかにも爽やかな雰囲気を持った曲で言わずと知れた増尾好秋さんの代表的な曲です。特に印象的なのはサビの部分。コード進行がD/Gと言う分数コードから半音づつ上がっていく感じが非常に朝の陽が昇る時の清々しさがあります。

さらにメロディはコードを分散したアルペジオでメロディが構成されています。ちょっとサビの前半をコピーをして見たら、コードを押さえて少し指を動かすだけでソロギターとしてギター1本でも十分に奏でることができます。ですから、間違いなくこの曲はギターで作曲をしていて、そのメロディとコードを含めてギタリストが創ったギターの為の曲になっていると想います。

ギターソロはレゲエ風のリズムになって、ゆったりとしたメロディを刻んでいきます。このリズムを醸し出しているのは右チャンネルの増尾元章さんのギター。増尾好秋さんの弟さんですね。

CD Time=3:05からのフレーズはA=「ラ」の音を連続的に奏でてその上にスタッカートで高い音を細かく変化させていくと言う面白いフレーズ。連続的に奏でている音に微妙にヴィブラートが掛っていて、その感じが少しファニーな雰囲気を出しています。ピックを高速でトレモロしながらメロディを奏でる奏法をハミング・バードと言うのですが、ここでの増尾好秋さんのフレーズも、朝の光の中で、さえずっている鳥の声のように聴こえませんか?

エンディングは増尾兄弟のソロの掛け合い。でもここは掛け合いと言うよりは、増尾元章さんのソロに、増尾好秋さんがバッキングメロディを奏でていると言う感じ。

増尾元章さんの音が右、左にパンされると言うエフェクトが掛っています。これはスタジオでのミキシングの時のエフェクト処理だと想いますが、ちょっと聴きにくいと言うかあまり良い効果とは言えない気がしますけど。

03:ルック・アウェイ・フロム・ミー
綺麗なピアノの音色からスタートするソロ演奏の曲です。ライナー・ノーツによると、これはヴィクター・ブルース・ゴッジーさんが即興で演奏したものらしいです。

CD Time=2:00過ぎくらいから、今までの美しい雰囲気から段々激しいフリージャズ的なアバンギャルドな雰囲気になっていって、最後は鍵盤をたたき付けたようなダーティーな響きを残したまま、次ぎの曲のイントロのエレピに入っていきます。

04:ア・スリーサム
タイトル通りにスリー、つまり増尾好秋さんとヴィクター・ブルース・ゴッジーさんとT.M.スティーヴンスさんのソロの掛け合いを聴き所にした攻撃的な、いかにもフュージョンと言うテンションのあるアップテンポのナンバーです。

ソロの掛け合いはCD Time=1:48から。Fmで8小節。G♯mで8小節。D7で8小節。この3つのパターンを繰り返していきます。なかなか凝っているのは、単純にこれを均等に分けて3人がソロを取っているのではないところ。

最初はFmでエレピ。そしてG♯mでベース。そしてD7でギター。次ぎは、エレピ・・・と行きそうなところをギターがFmとG♯mの部分を続けてソロを取ります。そして次ぎのD7ではエレピ・・・と言う具合に少しずらしてソロを展開しているので、単調にならずに聴き応えのある掛け合いになっています。

極めつけは最後の部分で、2小節づつの掛け合いから、1小節づつ、2拍づつ、と段々減っていき、最後の1拍つづ、8分音符づつはドラムのスネアも入れて4人で掛け合います。これは、まさにカシオペアの『ドミノ倒し』のパターン!

まあ、カシオペアの『ドミノ倒し』の場合は、後期になってくると、ほとんどどうやってあわせているのかすら解らない複雑なリズムになっていましたが・・・。

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と言うことで、続きのトラックは次回に・・・。

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曲名
1. ディーリング・ウィズ・ライフ
2. グッド・モーニング
3. ルック・アウェイ・フロム・ミー
4. ア・スリーサム
5. アイ・ウィル・ファインド・ア・プレイス
6. 豪風

2008/06/08 | 増尾好秋

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  1. 増尾好秋はロリンズ絡みの演奏しか知りません。増尾好秋の「ドミノ倒し」とは是非聴いてみたいです。
    それから最近のレビューは前後半の二分轄なのですね。さらに細かく深く切り込んでいらっしゃるので読み応えが増尾好秋ですねっ。これからも楽しみに読ませていただこうと思います。

  2. セラピーさん
    コメントありがとうございます。
    私は逆にストレート・ア・ヘッドな増尾好秋さんをあまり知りません。増尾好秋さん=この作品 みたいなイメージが強烈に頭に焼きついているんです。
    レビューはセラピーさんのように1曲ごとにとも考えたのですが、まあ書いていて熱が入ってきたら2回に分けると言う感じにしていきたいと想っています。




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