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シークレット・ストーリー【1】/パット・メセニー

今日のwalking Musicはパット・メセニーさんのシークレット・ストーリーです。この作品は少し前に、今までCDに収録されていなかった楽曲が収録されたものがリリースされました。それはそれで良いとして、やはりオリジナルの14曲が、どうしても私の中では完結しているストーリーになっているんです。ですから、やはりここはオリジナルの14曲にてwalkingをしました。

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01:アバヴ・ザ・トゥリートップス
スタート部分の『ポン』というパーカッションの響きとヴォイス。
そしてそれに重なって厳かに響くストリングス。
始まったとたんに目の前に物凄く綺麗で雄大な映像が浮かんできます。
私の場合は、ライヴ映像のイメージか? ジャケットのイメージか?
タイトルの通りの大きな樹木・・・そしてそれが真っ赤な夕日に照らされてシルエットになって浮かんできます。

ご存知このヴォイスはカンボジアの子供たちの声をサンプリングして、カンボジアの祈りの為の曲のエッセンスを取り上げたもの。
このようなパターンというか手法は昔からよく聴くサウンドなんですが、見事に洗練された音楽に仕上がっているのはさすがのパット・メセニーさんだと想います。

この作品のリリースが1992年ですので、もう16年も前の作品になるんですね。にも関わらずいつ聴いても無条件にワクワクしてしまいます。

曲はサンプリングした子供たちのヴォイスがメロディを奏で、そこに、ナナ・ヴァスコンセロスさんとアーマンド・マーサルさん2人のパーカッションが重なり、さらにオーケストラのストリングスが重なって情緒的に進みます。
このストリングアレンジがシンプルで実にいいです。
必要以上に対旋律が入っていなくて基本的には白玉でコードを刻みます。
そのためテーマのヴォイスがより際立っていると想います。
サンプリングというエレクトリックな技法で抽出したヴォイスは考えて見ればヒューマンなものではないのですが、そのサンプリングヴォイスのヒューマンな声の成分のみを、生ストリングスが上手く引き出している感じがして見事な融合を生み出していると想います。
生ストリングスを使用したというのは大正解でその効果は絶大です。

スタート部分のコードはB♭mですが、ヴォイスでのメロディの頭が丁度11(イレブンス)の音になっていて、この部分はコードがB♭m11とも採れます。
この響きが特徴的です。さらにパット・メセニーさんのソロが始まる部分で一瞬転調してるようにも感じるのですが、実は同じコード。
でも、パット・メセニーさんのソロ部分では11が無いのでより安定したコードに聴こえ、さらに、チャーリーヘイデンさんのベースとパーカッションでのリズムが入ってくるのでより場面展開して聴こえるわけです。見事なアレンジだと想います。

ここでのパット・メセニーさんのソロは非常に短いサイズ。ライヴなどではサイズを延ばして演奏していますが、このサイズが全体のバランスから聴いてもジャストで丁度良いと想います。

使用しているギターはライヴではサドウスキーのエレクトリック・ガット・ギターですね。よく聴くと、サウンドホールがある普通のクラシックギターではない少し硬質な音が聴き取れます。
また、サウンドホールがあるギターが持っている独特のエアー感が無い感じもするので、このトラックでもサドウスキーのエレアコかな?と想います。

このソロなんですが、これをソロ、つまりインプロヴィゼーションと言ってよいかどうか?これは悪い意味ではなくて、最大の賛辞、つまりメロディがあまりにも美しく完成されすぎているということなんです。でも、創ったものかどうか?などということは関係なくここは、その絶妙なギターの響きに耳を傾けるのが正解かと・・・。

ライン自体が単純で比較的簡単なので、ギターを弾ける方であればコピーすることは容易だと想います。しかし!このアーティキュレーションまでコピーするのは至難の業だと想います。

前半の部分はスライド奏法での見事なニュアンス。

まずはCD Time=1:25のスライドダウン。
これはスタート部分の美しいメロディの終止符としてかなり効果的。

さらにCD Time=1:30のスライドダウンは消えそうなくらい優しいニュアンス。

この2つのスライドダウンが、ワンフレーズの終止符になっていて、2つのフレーズが、同じようなパターンで連続しています。しかも、両方ともスライドダウンの終りの音を、このときのコードG♯の構成音に解決をしていて、安定感のあるフレーズになっています。

さらに、ちょっとギターでコピーをしてみると解るのですが、このスライドダウンは指使いからすると両方ともに小指で押さえてスライドダウンしていると想われます。

1回目は1弦の11フレットから8フレットへ。そして2回目はもっと長く、11フレットから4フレットまでスライドダウンをしています。パット・メセニーさんはよく小指を使用するので納得です。これを小指で弾けるかどうかは、フレーズのボキャブラリーに大きく影響してきます。小指は一番言うことを聞いてくれない指。ですから小指で押さえたところでフレーズが終わっても、すかさず別の指に換えるようにフレーズを回してしまうのが一般的なんです。その意味ではパット・メセニーさんのフレーズの多彩さは小指の使い方にある部分もありますね。

CD Time=1:33からは、スライドとハンマリングの複合フレーズで、どっちが、どっちか?というのも聴きわけるのが難しいほどの華麗なニュアンスで弾いています。CD Time=1:37で、2回スライド(ハンマリングかも?)のフレーズがありますが、半音違いでアーティキュレーションをつけています。非常に細かい部分でまさにワンフレーズなんですが個人的には肝!です。

同じように、ソロ終りの部分のCD Time=1:42の2発のフレーズもいい感じです。

そして1秒置いてCD Time=1:44で、聴こえるか聴こえないかくらいのごく小さい音で、テーマの頭の音、レ♯に戻るためのド♯を奏でてソロを締めています。この音もテーマへ繋がる音という意味で非常に効果的です。

テーマに戻ると今度はパット・メセニーさんがサンプリングヴォイスと一緒にメロディを奏でます。このテーマの頭の部分では、少しパット・メセニーさんの入りが遅れています。また、この部分のテーマの終りでは、メロディを弾くのを止めています。これは意図的かどうか解りませんが非常にライヴな感じがしますね。

そう考えると、ソロの部分から連続して録音をしているという感じがしますので、あの美しいメロディのソロはインプロヴィゼーションのような感じがしますね。

エンディング近くで、ヴォイスとパットメセニーさんのギターが呼応しているところは、これまた肝!です。そしてギターの2音づつの上昇フレーズが上がり切ったところで、静かにダウンフレーズと共にストリングスが厳かにコードを流すところはいつ聴いても感動を覚えます。

エンディングのロール部分でパット・メセニーさんの指一本でのトリル奏法が生み出すフィンガーノイズとともに静かに終わっていきます。フィンガーノイズをもパーカッシブなサウンドにしてしまうところは・・・言葉になりません。

実は個人的にこの曲がこの作品でも屈指のベストトラックだと想っています。

この曲が生み出している世界観がある意味この作品の世界観にもなっていると想うのです。この物悲しげな中にある情緒的で懐かしささえ感じてしまう圧倒的な映像美を感じるサウンドが
この作品の全てと言っても良い!と個人的には想ったりしているわけです。

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曲名
1. Above the Treetops
2. Facing West
3. Cathedral in a Suitcase
4. Finding and Believing
5. Longest Summer
6. Sunlight
7. Rain River
8. Always and Forever
9. See the World
10. As a Flower Blossoms (I Am Running to You)
11. Antonia
12. Truth Will Always Be
13. Tell Her You Saw Me
14. Not to Be Forgotten (Our Final Hour)

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コメント/トラックバック (2件)

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  1. 熱の入ったレビューですね!
    読みながら、早速シークレットストーリーを
    聞き返してしまいました。
    恥ずかしながら、あのボイスが
    サンプリングだとは知りませんでした。

  2. 猫ケーキさん コメントありがとうございます。
    良く聴いてみると、あのヴォイスはテープの逆回転?みたいな、声の連続性が途切れるような、少し変な感じのところがありますよね。全体のサウンドの中だと全く気になりませんけど。
    再開しましたので、またよろしくお願い致します。




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