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テイルズ・フロム・ザ・ハドソン【1】/マイケル・ブレッカー

テイルズ・フロム・ザ・ハドソン


今日のwalking Musicはマイケル・ブレッカーさんのテイルズ・フロム・ザ・ハドソンです。

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テイルズ・フロム・ザ・ハドソンは1996年のリリースの作品です。この作品の前までとは違って、打ち込みなどのエレクトリックなサウンドから一変したピュアなアコースティック・ジャズ作品です。
以前にレビューをしたのですが、それから何回となく聴いています。久し振りにwalkingのお伴として持ち出しました。以前にレビューしたときは、ちょうどマイケル・ブレッカーさんが亡くなったときでしたのでだいぶん感傷に浸っていたような感じがありました。

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walkingを終えて聴き終えたときの印象はひと言で言うと
『全編に広がるテンションが快感・・・親しき中にもテンションあり!』
細かく聴いていくと、また違った感覚になるかも知れませんので、1曲つづ聴いていきます・・・。

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01:スリングス・アンド・アローズ
リズム的なユニゾン・フレーズからスタート。テーマに入るとマイケル・ブレッカーさんのテナーサックスとパット・メセニーさんクリア・トーンのギターのユニゾンがメロディを奏で、そのユニゾンのバックで、ジャック・ディジョネットさんのドラムがアップテンポに乗った細かいサイド・シンバル・ワークでリズムを刻みます。

このテーマの部分はちょうど2対2の会話のようになっていて、マイケル・ブレッカーさんとパット・メセニーさんのメロディに喰い込んで、奪い取るようにデイヴ・ホランドさんのベースとジョーイ・カルデラッツォさんのピアノが喰ったフレーズでユニゾンを重ねます。これは1小節づつ交互に演奏されていて、何とも言えない緊張感のあるテーマに仕上がっています。ちなみにこの曲は、マイケル・ブレッカーさんの作曲。

サビの部分は一瞬スローになります。今度はお互いに相手を交換して、マイケル・ブレッカーさんがジョーイ・カルデラッツォさんのピアノとメロディを奏でます。そのバックで、パット・メセニーさんとデイヴ・ホランドさんが少しアウトなコードでバッキングを奏でます。

再びテーマに戻ってから、全体の流しフレーズで一瞬のブレイクの後ソロがスタートします。

このソロの部分を聴いていつも想っていたのが、ソリストの3人とも、フレーズが終わりそうでつながっていたり・・・展開しそうなフレーズだけど2小節分くらい余分に長く感じがしたり・・・聴いていてもコーラスの切れ目がわかりにくいソロだと・・・。

今回しっかり聴いてみたら、このソロ部分のコード進行は、どうも36小節でワンコーラスになっているようですね。そして、コーラス間の切れ目が同じコード進行でつながっていて、ソリストの3人ともにコーラスを『意識していません!』 という感じでフレーズをつなげているので、よりわかりにくかったのだと。
でも、このために、演奏全体にものすごい緊張感があるのと同時に、聴いているリスナーもそのテンションをビシビシと感じることができる 『ソロまわし』 になっていますね。

聴きどころはコーラスの17小節目にあたるコードの展開部分。この部分でスケールをチェンジしますが、そのチェンジへの導入のフレーズとチェンジ後のフレーズをどう奏でているか?ちょっと拍を失うような緊張感が漂っているだけに、この部分でどうやってフレーズをきっちりと決めるか?というのが、ソロ全体をぼけたものしないで 『キッ』 としめる急所だったりするわけです。

ファーストソロはパット・メセニーさん。
スタートはゆっくりと入り、そして飛び出すようなCD Time=0:54の高音にまずはグッときます。すかさずCD Time=0:59から速いクロマティックなパッセージで一聴でパット・メセニーさんと解る展開を聴かせてくれます。
CD Time=1:05でワンコーラスめのスケールチェンジ。ここでは、比較的ゆったりとしたフレーズで入り、そして弾き抜けていきます。
CD Time=1:23から2コーラスめに入りますが、ここは完全につながっていますね。そしてCD Time=1:36のスケールチェンジでは、その前から得意技のアップフレーズを導入として、そのまま見事にスケールチェンジをして、さらにアップフレーズをソロエンド近くまで連続していきます。これはまさにパット・メセニーさんの真骨頂。聴きなれたフレーズですが、やっぱりため息が出る見事な展開です。

続くソロはマイケル・ブレッカーさん。
導入は、単純なモチーフを展開してつなげていくというフレーズ。そして、速いパッセージからCD Time=2:06のスケールチェンジへ。コードが変わった瞬間に速いパッセージから強いタンギングの歯切れ良いフレーズ展開。
その後は速いパッセージで切れ目なく2コーラスめまで突入していきます。そしてCD Time=2:35のスケールチェンジ。ここでも歯切れの良いフレーズを展開していますがややラウドに決めていきます。また、この部分に入る前のCD Time=2:34のクロマティックな2小節のフレーズが実に肝!見事な導入フレーズでこの展開部分につないでいます。
マイケル・ブレッカーさんのソロは3コーラス。3コーラスめの展開部分はCD Time=3:04の駆けあがるような速いパッセージから入り、今度はポリリズム的なフラジオを挟み込んだ得意技フレーズを聴かせてくれます。このあたりではバックの演奏も含めて、最高の緊張感が漂っていてまさに肝!

そしてその緊張感をそのままつないで、次のジョーイ・カルデラッツォさんのソロに引き渡されていきます。
左手でのバッキングを歯切れよく演奏して、それが右手を牽引するように最初は細かくフレーズを展開しますが段々と速くクロマティックなフレーズ展開に変わっていきます。CD Time=3:33のスケールチェンジ部分は左手のコードワークがソロを牽引します。
その後から2コーラスめは、左手のバッキングワークが細かくなっていき、段々と左手主導から右手の速いパッセージが主導権を握っていくような感じのフレーズ展開をしていきます。そしてCD Time=4:01のスケールチェンジ部分は、その前の導入部分のモチーフをそのまま使用してつなげていますのでスケールの変化をさりげない感じで奏でています。
さらにCD Time=4:30の3コーラスめのスケールチェンジ部分。ここではイントロとテーマ部分のミックスしたようなフレーズをモチーフにしてからスケールチェンジ部分に突入しています。これは実に見事です。まさに肝!

ソロまわしの緊張感がいったんサビに入って落ち着いてからテーマに戻ってエンディングへ。

エンディングはジャック・ディジョネットさんのソロにマイケル・ブレッカーさんがソロをからめながらフェードアウトしていきます。2人のからみがフェードアウト近くになってかなり面白いので、このままエンディングまで聴きたいところですが・・・残念ながらのフェードアウト。

いつ聴いても実にテンションがアップする演奏でまさに肝!です。完全ノックアウトと言って良い、まさに時代の残した名演のひとつだと想います。

02:ミッドナイト・ヴォヤージ
ミディアムファーストのテンポでゆったりとした流れでスタート。大変心地よいテンポとリズムを持ったマイナー調の曲でブルージーな雰囲気の中にも適度な緊張感があるのは、1曲目のそれをそのまま引き継いでいるためでしょうか。

ファーストソロはマイケル・ブレッカーさん。
コード進行はセブンスコードを中心としたブルース的なもの。ですから、ここでのマイケル・ブレッカーさんは、1曲目とは違ったオーソドックスなジャズ・フレーズを中心に展開しています。これが実にいい感じです。

続くパット・メセニーさんのソロもブルージーに奏でていて、フレーズとしてはマイケル・ブレッカーさんと同じ様に比較的オーソドックスなラインです。しかし、教科書的ではなくてあくまでもメセニー的オーソドックスフレーズ。
その分パット・メセニーさんのフレーズがわかりやすくなっていますので、フレーズ研究やギター・コピーにはもってこいのソロだと想います。組み立ても良くて、まとまったソロだと想います。
エンディングはテーマの初めのメロディをリフレインしていく中でジョーイ・カルデラッツォさんがピアノソロを重ねていき、最後はブルージーにエンディングを迎えます。

03:ソング・フォー・ビルバオ
いわずと知れたパット・メセニー・グループの名曲です。
テーマは、マイケル・ブレッカーさんとパット・メセニーさんのギターシンセがユニゾンで奏でます。この曲は特にソロまわしが聴きどころの曲ですね。まさに、セッションに最適です。
ソロのコード進行はテーマ部分と同じです。テーマ自体は短いのですが、実に上手く演奏ポイントが組み込まれています。

24小節でワンコーラスになりますが、まずは5小節めでC7sus4からG♭maj7♯11にかわる部分のスケールチェンジ。そして17小節めのポリリズム的な部分。ここは3/4拍子に変わるのですが、ここの弾き抜け、吹き抜け方がポイント。

ファーストソロはマイケル・ブレッカーさん。
静かな入りのワンコーラスめ。曲のリズムがアフロ・キューバン的なラテン・リズムですので、それに乗るように短い音符をつないだフレーズでスタートします。CD Time=1:15の流れるような8分音符のフレーズから連続してスケールチェンジ部分に入り、そのままCD Time=1:22まで吹き抜けます。ここはひと呼吸で一気にという感じでしょうか。

そしてワンコーラスめの展開部分。ここでは、サビのメロディを少しだけフェイクして吹き抜けています。

2コーラスめは途中から、倍速の速いパッセージに段々と変わっていきます。そしてCD Time=1:49からフラジオを組み込んだポリリズムでの得意技フレーズに突入。フレーズの音を微妙な変えながら、CD Time=1:15のスケールチェンジ部分になだれ込み、CD Time=1:56のロングトーンまで怒涛のごとく吹き抜けます。この部分は見事な展開で肝!です。その後も、速いパッセージで攻めてCD Time=02:03の低い音での「ブォ」のひと吹き。そして展開部分へ。

1小節目はコード「F」のトーンを分散的に使用して、次の「E」のコードトーンにつないでいます。そして後半は喰った短い音符でコードの3度とルートの音をアクセントフレーズにして吹き抜けています。単純なラインで無難な音の選択をアーティキュレーションとリズム・センスで吹き抜けている感じです。

続いてピアノソロ。この曲ではマッコイ・タイナーさんがプレイをしています。
スタートはラテンのリズムに乗った展開でブルージーに奏でます。最初の展開部分は、そのままコード和音をフォルテシモでクラシカルに弾き抜けます。そして、その後はそのクラシカルな雰囲気でワンコーラスを終わらせて2コーラスめへ。

CD Time=2:57からのフレーズは、よりラテン的な感じになります。右手のメロディ・パターンを統一して流しそれに、左手のバッキングの音を少しづつ変えながら流麗に奏でます。この部分のソロラインのため、曲全体の雰囲気が一瞬変わります。単調になりがちな曲調中で見事なアクセントになっていますね。スケールチェンジのCD Time=3:11はかなりブルージーなフレーズ。

そして展開部分は、一回目と同じ様にコード奏法でクラシカルに奏で次のソリストに渡していきます。

最後はおなじみの音色のパット・メセニーさんのギターシンセです。
長めの音符でだんだんと下がっていくフレーズからスタートして、スケールチェンジ部分でブルージーなフレーズを決めます。そして、8分音符でのラインに変わっていき、展開部分に入ります。

CD Time=3:51からの展開部分は、4小節を2つにわけて考えるアプローチで2小節でワンパターンのフレーズをそれぞれのスケールに合わせて弾いています。やはり自分の曲で、何度も演奏をしている曲ですので、このフレーズ展開と構成はやはり前の2人よりも見事ですね。
その後は2コーラスめに向けて、だんだんとハイフレットにフレーズが移っていきます。

CD Time=4:06から2コーラスめ。叫びのような高音でのフレーズがいかにもパット節。ここでギターシンセのオクターヴをフットペダルで切り替えて上げているのではないかと想います。高い叫びの合間をクロマティックでのダウンフレーズの速いパッセージで挟みながら展開部分に向います。

CD Time=4:26からの展開部分は、ややアウトなフレーズにも聴こえるのですが、実はコード進行が動いているのに追従してトーンを選んで奏でています。でもこれが取ってつけたようなフレーズになっていなくて一拍半のリズムにしっかりと乗りながらフレーズが連続して流れているのがさすがですね。続けて、ひとつのモチーフをだんだんと上げていって、最後にスライドを絡めた連続フレーズでエンディングに突入します。

パット・メセニーさんの最後のフレーズがずっとテーマ頭まで連続しているのですが、そこにマイケル・ブレッカーさんが入ってきてテーマに戻るところは肝!ものすごくカッコ良いと想います。無条件にグッとっくる展開ですね。その後のテーマで2人がハモルのもかなりいいです。
そしてエンディングのロール部分で、パット・メセニーさんのギターシンセとマイケル・ブレッカーさんのサックスが、残響をなごり惜しむように奏でる掛け合い部分が、また良かったりします。

パット・メセニー・グループでのバージョンを含め、いろいろなテイクがある曲ですが、この作品でのテイクは個人的にNO.1、2を争うテイクだと想っています。

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今回はここまで。続きは後日レビューします。

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曲名リスト
1. スリングス・アンド・アローズ
2. ミッドナイト・ヴォヤージ
3. ソング・フォー・ビルバオ
4. ボー・リヴァージュ
5. アフリカン・スカイズ
6. イントロダクション・トゥ・ネイキッド・ソウル
7. ネイキッド・ソウル
8. ウィリー・T.
9. キャビン・フィーヴァー

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