About

*

バースデイ・コンサート/ジャコ・パストリアス

最近TVでほぼ毎日世界陸上を見ていますが、実に面白くスリリングでテンションが高くなります。こんな時はつい触発されて力を入れてwalkingしたくなってしまうのです。加えて、昨日は聴くだけでもテンションがあがるジャコ・パストリアスさんのバースデイコンサートwalkingしました。

この作品はジャコ・パストリアスさんのビッグバンド、ワード・オヴ・マウスの初ライヴの模様を録音したもの。このビッグバンドには1982年のオーレックス・ジャズ・フェスティバルでのライヴを録音したTWINS(*)と言う名盤がありますが、この初ライヴは幻のテープとも言われていたようです。

リリースは1995年。ジャコ・パストリアスさんがこの世を去って、その後実にいろいろな演奏がCD化されました。出来の悪い作品が多かった中で、このライヴは絶頂期のジャコ・パストリアスさんのプレイを堪能できる貴重な1枚です。

1曲目はソウル・イントロ/ザ・チキン
会場のざわめきとともにジャコ・パストリアスさんのMC。そして拍手、歓声。傍らでサックスの軽いウォーミングアップのフレーズ。かなりリラックスしたムードでグラスの音なんかも少し聴こえる割と小さめなライヴハウスの様な感じ。

そしてジャコ・パストリアスさんのカウントの4拍目にピーター・アースキンさんのスネアが一発!ブラスアレンジが見事なソウル・イントロのスタートです。そのブラスにインプロヴァイズされてマイケル・ブレッカーさんがソロを重ねます。

実はこの作品のポイントの一つがマイケル・ブレッカーさんの参加。実際にこのビッグバンドでのライヴプレイはこの日のライヴのみ。この話だけでもマイケル・ブレッカーファンにとっては、ものすごく貴重な作品だと言うことが解ります。

イントロが終わるとすかさずジャコ・パストリアスさんのあのベースラインが始まります。ベーシストでなくても一度は弾いて見たくなる名曲ザ・チキンです。基本的なブラスアレンジはTWINSと同じで実にカッコ良いライン。そしてジャコ・パストリアスさんの、いつ聴いても歯切れの良いベースライン。いわゆるギターで言うカラピック・・・ミュート奏法が絶妙なグルーブ感をだしています。2:00過ぎのいきなりの和音フレーズなどは唐突ですが絶妙です。

ファーストソロはボブ・ミンツアーさん。かなりファンキーでブルージーなソロです。スタートなのでそんなに飛ばしてもいないのですが、オーソドックスな中にも深みのあるソロです。また、このバックでのジャコ・パストリアスさんのバッキングワークはいつも通り見事で、更に曲を加速させます。

そして、その加速を受けてマイケル・ブレッカーさんのソロ。と想ったのもつかの間。スタートと同時にジャコ・パストリアスさんが今までビートを捨てるかのようなロングトーンと短い和音などでバッキング。その合い間を縫ってマイケル・ブレッカーさんのフレーズ・・・。このあたりはまさに”あうん”の呼吸とも言える絶妙なバランスです。

4:07の部分で、ジャコ・パストリアスさんの小刻みなフレーズにマイケル・ブレッカーさんが答え、さらに細かく早いパッセ―に展開していくと、ジャコ・パストリアスさんも早いフレーズで応戦。短いわずかな部分でも聴かせてくれます。

マイケル・ブレッカーさんのフラジオのロングトーンから2コーラス目。いつものベースラインに戻り、ビートも戻ってきます。それに乗ってマイケル節が連発しています。4:42過ぎの少し抜けた?様な”ボゥ”と言う音を上手くフレーズに組み込みつつ3コーラス目へ。

2コーラス目の終りの”ボゥ”と言う音を組み込んだペンタトニックフレーズでスタート。まるでロックギターの定番フレーズのようなフレーズで、丁度この”ボゥ”と言う音がギターで言うチョーキングのようにも聴こえます。

盛り上がって来たのですが、4:56過ぎ、ジャコ・パストリアスさんがまたフレーズを止めます。しかし残されたリズム隊とマイケル・ブレッカーさんは特に動じた様子も無く”いつものことさァ”と言う感じで淡々とグルーヴして行きます。ジャコ・パストリアスさんが短い和音などで段々と戻ってきて4コーラス目へ。

途中までマイケル節が爆発していたのですが、サビのパターンになりブラスが入ってくるとソロがストップします。演奏は続いているのですが・・・。何が起こったのか!ジャコ・パストリアスさんの真似?かどうかは解りませんが、そのまま次ぎのメルトン・ムスタファさんのトランペットソロへ。

先の2人のテナーサックスにインプロバイズされて熱いソロを奏でます。2コーラス目の6:38過ぎの少しビブラートを大げさにかけたファニーなフレーズにジャコ・パストリアスさんが同じような大げさなビブラートのアップフレーズを絡めてきます。

トランペットソロのバックでのジャコ・パストリアスさんはオーソドックスにパターンを弾きながらもトランペットのソロフレーズに呼応している感じのおかずをさりげなく入れています。このあたりは、勝って気ままに弾いているようで、実に良く人の演奏を聴いていると言う姿が伺えますね。

そしてテーマへ戻りエンディング。かなりラフな感じであったり、リハーサルが不十分な感じもしますが、とにかく聴き所がいろいろあって面白く熱いザ・チキンです。1曲目ですでにチキンを食べ過ぎて満腹!と言う感じになります。

2曲目はコンティニューム
ジャコ・パストリアスさんの魅力のひとつでもあるハーモニクス奏法から、ソロ演奏でスタートです。0:36過ぎのフレットレスベースの特徴を生かしたフレーズがハッとさせてくれます。短い静かな中にも緊張感のある曲です。

3曲目はインヴィテイション
TWINSではビッグバンドアレンジで演奏されている曲。ビッグバンドのアレンジが素晴らしく、また曲もカッコ良いので大好きな曲ですが、ここではクインテットでの演奏です。ここでのジャコ・パストリアスさんのベースワークはちょっと普通では想い付く事が出来ないような次元の違いを感じるすごいものです。

いわゆるサンバ調のアップテンポのラインなのですが、テーマ部分からすでに爆発しています。さらにここでは少しフレーズを前よりに突っ込み気味に弾いていますので一緒にテンポをとることさえ難しくなっています。一瞬テンポが走っているようにも聴こえるのですが、これはジャコ・パストリアスさんのテクニックですね。その、前よりのビートによってテーマからものすごいグルーヴ感と緊張感が漂っているわけです。その中でテーマを奏でるマイケル・ブレッカーさんとボブ・ミンツアーさん。テーマからすでに迫力の演奏です。

ファーストソロはマイケル・ブレッカーさん。このソロのバックでも、ジャコ・パストリアスさんの異次元フレーズは止まらず、元のコード進行は何処へ?と言う感じで、コードやコード進行を逸脱するフレーズや音が連発していて、かなり気合いを入れて聴かないとフリージャズのように聴こえてしまいます。さらに、正確にリズムを刻みながらも、ジャコ・パストリアスさんに果敢に立ち向かっているピーター・アースキンさんと絶妙なコンガワークのパーカッション、ドン・アライアスさんも怒涛のビートを叩き出してマイケル・ブレッカーさんのソロに襲いかかっています。

ところがすごいのが、この状況の中で、時にスケールアウトしたり、時にコード進行に沿って演奏したり、また時にはジャコ・パストリアスさんの異次元フレーズに足を突っ込みながら、インプロヴィゼーションを続けるマイケル・ブレッカーさんです。

マイケル・ブレッカーさんは速いテンポに乗って、これまた高速の16分音符でフレーズを展開して行きます。フレーズ自体はもう何も言うことの無いマイケル節です。

ジャコ・パストリアスさんのフレーズは時にリズムを強力に出したかと想うと、いきなり静まって和音やハーモニクスを弾いたり・・・。マイケル・ブレッカーさんも、それに応えるかの様なフレーズに一瞬なるのですが、構わず速いパッセージで無視するように吹きまくります。

そして、1:50、4:30のように、ジャコ・パストリアスさんとマイケル・ブレッカーさんが協調して重なる瞬間には、恐ろしいほど強力なグルーヴがリスナーに襲いかかってきます。これはまさにバトル。インプロヴィゼーション、インタープレイの奥義を垣間聴いた?想いです。

続いてボブ・ミンツアーさんのソロ。最初、ジャコ・パストリアスさんはマイケル・ブレッカーさんとのバトルに疲れたか?演奏をしません。その間はピーター・アースキンさんとドン・アライアスさんとボブ・ミンツアーさんの静かなバトルです。そして、5:37過ぎに再び目を覚ましたかのようにジャコ・パストリアスさんが参戦して来ます。5:55過ぎにはリズム隊が少し音を抑え始めると、ジャコ・パストリアスさんのソロだっけ?と想わず勘違いをしていまう程のフレーズ。そして段々と静かな感じの中にも激しさのあるバトルが始まったと想うと、また静かになったり・・・。メリハリのあるバトルが展開されていきます。

そしてジャコ・パストリアスさんのソロ。リズム隊だけでフリーなソロです。ジャコ・パストリアスさんの単独のソロは、結構細かいフレーズを弾いては休み、弾いては休むと言うことを繰り返します。でもその短いフレーズのすごいこと!もっと弾いて、聴きたい!と想うとスッと止めてしまう・・・。考えた上手い演出なのか・・・それとも単に心のままに弾いているだけなのか・・・。
ジャコ・パストリアスさんのきっかけで再びテーマへ。

バトルの余韻か少々全体に疲れ気味?のテーマ演奏ですが、今まで演奏を聴くとそれも解るような・・・。でも聴き所はこの後にありました!テーマがワンコーラス終わるとマイケル・ブレッカーさんのカデンッァがあります。

これが実にすごいです。

ものすごく速いパッセージの中にも実にメロディアスで抜群の出来です。いろいろなマイケル・ブレッカーさんのソロの中でも珠玉の演奏だと想います。

そしてジャコ・パストリアスさんとの短い掛け合いをきっかけに再びテーマに戻るところは個人的に大肝!です。

この曲を聴き終わった時にはもう十分に堪能!と言う感じでした。本当にすごい演奏だと想います。

恐るべし!ジャコ、そしてマイケル!

もちろんこの作品のベストプレイ。この曲だけでも聴く価値はあると本当に想います。

4曲目はスリー・ヴュース・オヴ・ア・シークレット
ウェザー・リポート時代の曲です。メロディの良いワルツのリズムのバラードです。マイケル・ブレッカーさんのテーマにソプラノサックスやバスクラリネットでボブ・ミンツアーさんが絡んで行き、さらにホーンアレンジが加わって盛り上がります。

5曲目はリバティ・シティー
いかにもビッグバンドらしい曲。実に楽しげなメロディとビートを持った曲でスリリングな展開は無いのですが良くまとまった演奏になっています。しかしこのような感じの曲をジャコ・パストリアスさんが書いたことには少し驚き、同時に音楽的なセンスを感じます。

6曲目はパンク・ジャズ
ミディアムテンポの曲。重く、しかもスローで単純なベースラインを淡々と聴かせて行く中にも、強烈なグルーヴを感じさせると言う、ジャコ・パストリアスさんの一面を聴くことが出来ます。

7曲目はハッピー・バースデイ
この曲はまさにバースデイソングをビッグバンド用にアレンジしたと言うもの。この日はワード・オヴ・マウスの初ライヴと同時にジャコ・パストリアスさんの30歳の誕生日。サプライズで本人に知らせず演奏したそうです。

8曲目レーザ
アジアンテイストの神秘的な曲。ちょっと捉えどころのない曲なんですが、不思議な魅力があります。途中のフレンチホルンが実に良い味を出しています。

9曲目はドミンゴ
ジャコ・パストリアスさんの未発表曲と言うことで、この作品の聴き所のひとつと言われています。曲としては雄大な感じでスタートするのですが、途中からテンポアップして行きます。ブラスのテーマが、短いのですが大変カッコ良いです。雰囲気的には3曲目のインヴィテーションに近いですね。

ソロはマイケル・ブレッカーさん。この曲でも素晴らしいソロです。特に終盤の4:15からの展開はジャコ・パストリアスさんのベースやブラスも加わって、ただでさえ見事なソロが、更に見事に装飾されています。5:00過ぎからのエンディング部分で、ジャコ・パストリアスさんの同音での16分音符のバッキングはすごい迫力です。

10曲目はバンド・イントロ
これはメンバー紹介ですね。ひとつのトラックになっているので一応・・・。ここではオーディエンスの盛り上がりがすごいです。まあこの演奏を聴けば・・・こうなりますね。

特にオーディエンスの反応が大きかったのはもちろんマイケル・ブレッカーさん。そしてピーター・アースキンさんです。

ピーター・アースキンさんはこの作品のプロデュースもしています。またライナーノーツも1曲づつ細かく書いています。このライナーノーツはもちろん当事者のミュージシャンの言葉だけに
非常に面白く興味深いんです。

11曲目はアメリカ
ジャコ・パストリアスさんと言えばこの曲、と言う程の代表曲、ソロパフォーマンスです。この曲もいくつかのバージョンがありますが、その中でも官能的な感じと、情緒的な感じがもっともするソロです。哀愁が漂ってるんです。不思議と・・・。これはプロデュースのピーター・アースキンさんのトラップではないかと・・・。

この曲はライヴのプログラムの中でも最後の曲ではないはずです。ところがCD作品の一番最後に持ってくることで亡き朋友をしのんでいる・・・と言うことではないでしょうか。それが解るだけにリスナーにもそんな感じが伝わってくるのだと・・・。

最後の部分で16分音符で速いパッセージを弾いてけっこう派手に終わるのが定番なんですが、ここでは実に静かで、綺麗な和音で、消えるように終わっています。この部分も心を打つんですよね。

残念なことにこの和音に絡んでノイズが入っているのですが、それでもこのテイクを使用したピーター・アースキンさんの想いが伝わって来ると同時にリスナーにも同じ想いを・・・と言うトラップ。見事に私ははまりました!またこれから聴く方は素直にはまりましょう。

ライナーノーツでこう言っています。
”ジャコの短いソロより以上に良い締めくくりがあるだろうか”・・・と。

ワード・オヴ・マウスとしての初ライヴでしたので、まとまりと曲の完成度と言う点ではかなり不十分な部分があります。TWINSと比べるとかなり差を感じます。その為にお蔵入りの音源だったのでしょうか・・・。

しかし、パフォーマンスの熱さと言う点ではTWINSをはるかに上回っていると想います。特に1~3曲目にかけては絶品です。

また、くどいようですが3曲目のジャコ・パストリアスさんとマイケル・ブレッカーさんのインタープレイはどちらかのファンの方であれば必聴!と言いたくなるようなプレイです。

walkingをしながら再び聴き直しているCDコレクションですがこれが埋もれていたとは・・・。久しぶりにインパクトのある作品との再会でした。

『バースデイ・コンサート ジャコ・パストリアス』アマゾンで検索

曲名リスト
1. ソウル・イントロ/ザ・チキン
2. コンティニューム
3. インヴィテイション
4. スリー・ヴューズ・オブ・ア・シークレット
5. リバティ・シティ
6. パンク・ジャズ
7. ハッピー・バースデイ
8. レーザ
9. ドミンゴ
10. バンド・イントロ
11. アメリカ

関連記事

コメント/トラックバック (4件)

トラックバック用URL:

この投稿のコメント・トラックバックRSS

  1. 来ましたね。ayukiさんのジャコパス批評!
    ギタリストから見るジャコパス批評が興味深いです。
    【スリー・ヴュース・オヴ・ア・シークレット】が好きです。2管なのに極上ワルツ! ジャコパスのベースってホーンと合いますよね。

  2. セラピーさん。
    コメントありがとうございます。
    ジャコ・パストリアスさんってすごいギター的な感じがするんです。それは和音とコード感覚が実に優れていると想うからです。また、今回改めて聴いてみて、仰る通りにホーン対しても実に音楽的に理解していると言う感じがしました。

  3. おっしゃる通り,ジャコパスはベーシストの枠を越えたジャズメンですよね。トータルなバランス感覚が,あのベース・プレイの秘訣でしょうね。このライブ盤にはトータル・ミュージシャンとしてのジャコパスが記録されていると思います。

  4. セラピーさん。
    コメントありがとうございます。
    ジャコ・パストリアスさんの持っていた音楽に対する感覚って実に不思議と言うか理解してみたい!ってすごく想います。なんでこの時にこの音でのフレーズ?と言うベースプレイがあったかと想うと見事なブラスアレンジだったり・・・多分私ごときでは一生解らないと想いますが・・・。




管理人にのみ公開されます

PAGE TOP ↑