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パット・メセニー・グループ

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スティル・ライフ【PART2】/パット・メセニー・グループ
STILL life(talking)/PAT METHENY GROUP

スティル・ライフ

パット・メセニー・グループスティル・ライフのレビューの続きです。Track04から総論です・・・。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

04:トーク
ブラジルテイストの強く出ている曲です。ミディアムファーストのテンポにノッたパーカッションが心地よいです。
テーマはヴォイスとギターのユニゾン。どちらかと言うとヴォイスが中心に進みます。サビに入ると今度はギターと笛の音でのシンセのユニゾンでメロディが奏でられます。こちらはギター中心。いずれにしてもギターはテーマを弾いているのですが、時に従になり、時に主になるアレンジがいいですね。

ファーストソロはライル・メイズさん。
ブレイクも展開も無く、テーマそのままのグルーヴでソロに入っていきます。
最初の16小節は4分音での3連をモチーフにした、ゆったりとしたメロディを奏でていきます。そして次の16小節では4分音での3連を基本にしながらも細かいパッセージをジョイントに使用してフレーズを加速させます。そしてサビの部分に入った最初の8小節では、クラシカルにコード奏法を中心に弾き抜けます。CD Time=3:05からのコード和音の重なりはとても綺麗で適度なテンションがあっていい感じです。さらに次の8小節では、リズム隊が16ビートになりますが、ライル・メイズさんの優雅さは変わらず。そのまま、コード奏法をもっとクラシカルに奏でます。CD Time=3:16からのフレーズは歯切れよさの中にも品があって貴族的。見事なラインですね。その流れと雰囲気を継続しながら、最後の16小節を弾き切ってサビに引継ぎます。

長いソロなんですが、センテンスごとの展開と起承転結の盛り上がりを考えたソロで、この作品中でのライル・メイズさんのソロは多くないのですが、ベストテイクだと想います。

ライル・メイズさんのソロから戻ったサビは、最初のサビとは違って今度はヴォイスが主にメロディを歌っています。そのまま後テーマからヴォイスとギターのユニゾンでこの曲の特徴になっているコード進行、C♯m9→C9を繰り返しながらフェードアウトしていきます。


05:サード・ウィンド
アップテンポのラテンリズムが迫り来るような曲。定番のナンバーです。
曲を聴ききながらテンポを取っていると、最初のテーマの切れ目まで、コードがF7sus4が2小節、D♭maj7/Fが2小節の計4小節のように聴こえるのですが、譜面を今回みたら、この部分は8小節。つまり倍の譜割りになっていて、しかもテンポ指示が=300と言う物凄い速いテンポで作曲されていたことに気が付きました。
当然演奏する場合にはこのテンポを意識して奏でなければいけないわけで、聴いている分には同じことなんですが、ミュージシャンのその意識がこの曲のスピード感を創っている要因と言えます。つまり『かなり速いテンポの曲なんだ』と言うコンポーザーであるパット・メセニーさんとライル・メイズさんの意志が明確に指示されていると言うわけですね。

これは意外に大切なことで、ひとつのフレーズを弾くのにも、実は倍のテンポと言うことになると、そのフレーズの切れ目や流れがだいぶ違ってきます。フレーズはひとつのまとまりの中に始めと終りがあるわけで当然、同じ音符の種類で弾くフレーズや1小節が、倍テンポならば、2小節のフレーズになるわけですのでだいぶ違ったアプローチになります。
さらにこれは逆のことも言えるわけで、ゆったりとしたメロディがこの速いテンポの譜割りに乗ると、長めの音符が並ぶことになり、すなわち曲に対してゆったりとメロディを奏でると言う指示になります。

この曲はまさにこの指示で、アップテンポのリズムに対して、ヴォイスとギターでのユニゾンのテーマが比較的ゆったり奏でられているのが相乗効果を生んでいます。もうこれはコンポーザーの意図のまま、見事にハマッタと言う感じですね。
テーマの頭の部分は1拍食ってから付点4分音符で連続します。つまり大きな3連のリズムになります。ですから、なおのこと、ゆったりと奏でられている感じがします。

サビに入る前のCD Time=0:39のAm7/D→A♭/Dと言うコード進行のA♭/Dの部分が、スーッと音が持ち上がるような感じで実に肝!です。
サビの頭がB♭m7ですので、普通にアレンジするとベース音が下がって行って、コードも下がって行く感じになると想うのですが、分数コードを使用してなお且つ、ライル・メイズさんが上手いヴォイシングでバッキングをして、この上がる感じを創っています。

テーマに続くパット・メセニーさんのソロは、このアップテンポを考えたソロで細かすぎるほど細かく、そして速い!展開で迫ってきます。

まずはCD Time=1:35のギターのピックアップ部分。
周りの楽器が全てブレイクしていますのでギターの音を純粋に聴くことができます。好みもあると想いますが、生音がミックスされた音でしかも箱らしさが良く出ていて個人的には好きな音です。この録音での音の感じはES-175の様な感じがするのですが、ライヴ映像でみるとGRのノーマル音を使用していますね。またフレーズは圧巻のメセニー節!一点の曇りもないクリアなフレーズで疾走しています。

そのままの流れでソロの頭の部分を得意技のアップしていくフレーズで繋いでブレイク。そして、ミュート気味のパーカッシブなラインでグルーヴを創っておいてからサビの展開の部分へ入ります。

CD Time=2:06からは、非常にメロディアスに弾き抜けていくのですが、良く聴くとこの部分の最初の8小節で使用している音は9音。最初の2小節が2音、次の2小節も2音、次の2小節が3音で、その次のトリルで2音。
これらの音がコード進行の特徴的な音を的確に捉えていて、なお且つ、絶妙なアーティキュレーションでニュアンスをつけて奏でています。速いパッセージももちろん凄いのですが、このような部分は鳥肌ものの凄みを感じます。まさに肝!フレーズです。

その後は怒涛の速弾きで攻めます。
CD Time=2:38は頭の速い3連符から上昇フレーズを奏で、クロマティックのラインからサビのコード進行へ解決します。このクロマティックの流れが実にコード進行にマッチしていて流石の上手さを感じます。

CD Time=2:50からのポリリズム的なフレーズはコードトーンを絶妙に変えながら、コード感のあるフレーズです。続けて速いパッセージへと繋ぎ、すかさず3連的な緩やかフレーズへ。そしてアクセントを重視したパーカッシブなフレーズからパーカッションのソロへと繋いでいきます。実はこの最後のフレーズはパーカッションソロのバックで演奏しているギターのバッキングに似たフレーズになっています。この一貫した捉え方はやっぱり・・・凄いですね。

笛の音のシンセとヴォイスのユニゾンをはさみながらパーカッションのソロです。
このヴォイスとティンパレスのソロはアーマンド・マーサルさん。ラテンフレーバーの漂う印象的な部分になっています。

シンセのきっかけフレーズが流れ始めて、それがベースとのユニゾンでブレイクすると、一段と劇的な展開に入っていきます。

パーカッションでのいかにも民族音楽的で宗教的な香りも若干するような派手なリズムに遠くからシンセがマーナーなコードを重ねていきます。パット・メセニーさんの得意のモチーフである、速いリズムや一定のグルーヴの流れにクラシカルで幻想的でゆったりとしたラインを乗せる、と言う展開。そして、シンセの和音がフォルテシモになると、ピアノとベースの少し跳ねたリズムが印象的な後テーマに入っていきます。

この部分は今までのテンポ、つまりかなり速いテンポで追っていくと、一聴3/4拍子のように聴こえます。しかもリズムが3連ですのでなおさらそんな感じがするわけです。

しかし、譜面を見ると4/4拍子で、しかも最初のテンポ=300の1/2で譜割りがされています。これは、一瞬迷ってテンポを失いそうになるリズムトラップですね。それがCD Time=6:20あたりから段々と明確にテンポを取れるようになってきます。

ひとつはベースライン。
スティーヴ・ロドビーさんが、今までの細かいラインから譜面通りのテンポの大きなシャッフル気味のリズムに移行していきます。
そしてピアノのバッキング。
ライル・メイズさんも段々と白玉のバッキングに変わっていきます。
CD Time=6:33では完全にリスナーは4/4拍子を取れるようになります。

今までのアップテンポを継続して流れを創り、その流れのままで3/4拍子的なこの部分に突入して、そうリスナーが想っていると実はこの部分では最初のテンポの1/2のテンポでのシャッフルにすでに移行していると言うアレンジ。
本当に良く考えて、練られて、緻密に計算されて創られていると想います。凄い!を通り越して・・・言葉も出ません。

でも、これって実はなかなかさまにならないのです。
私も、これに触発されて似た様なパターンの曲を創ったことがあるのですが、打ち込みでもバンドでもなかなかこのように段々と移行していくと言うのが難しいのです。これは、もちろんリズム全体の大きな流れと変化がありますが、一番大きいのはスティーブ・ロドビーさんのベースワーク。これが全てをけん引してリズムの移行を引き出していると想います。地味なんですが、上手さの光るベースプレイです。
さらに、それにノッて全体が見事に移行していくところは、アレンジの力もありますが、バンド全体のノリとテクニックの凄さがやはりあります。この作品の中では一番のジャズ的、バンド的な部分ではないかと想います。

このエンディングの部分でパット・メセニーさんのこの作品初のギターシンセでのソロを聴くことができます。ここでのソロは大きなノリと前半部分のアップテンポのノリをミックスした様なラインを奏でていきます。

それにしても、凄い曲だと想います。ミヌワノ(68)と同じ様に完成度が高く、その上フリー的な部分も多くまさにライヴ向けの楽曲だと想います。
そう言えばこの後半の部分も最近のライヴではカットされていますね。だから、これも大不満なんです・・・。


06:ディスタンス
ジャングルでの動物の声の様なSEに陰鬱なシンセストリングが重なってスタートします。このジャングルの感じは名曲ファーマーズ・トラストを想い出しますね。
この曲はライル・メイズさんの曲。クラシカルでオーケストラ的な曲です。3分弱の短い曲ですが、そのまま次の曲へ繋がっていきます。雰囲気的には次の曲のイントロダクションと言う感じでしょうか。盛り上がったサード・ウィンドの熱を冷ますと言う解熱剤的な小曲です。


07:ファミリー
ディスタンスの幻想的なエンディングでのストリングのロングトーンに重なってスタートします。ピアノとギターのデュオにストリングスが優しく絡んでくるリリカルなバラードです。
ここでのパット・メセニーさんのギターはクレジットが無いので良く解らないところはありますが多分Ibanezのミニギターではないかと想います。

非常に綺麗なコード進行を持った曲で、特にCD Time=0:29のB♭maj7♯11/Fと言うコードは肝!です。このコードがこの曲全体の聴き所になっていてエンディングでも繰り返しのフレーズで使用されています。そしてライル・メイズさんのピアノのゆったりとした最後の上昇フレーズに繋がるキーコードになっています。

最後は2人で消えるようにE=「ミ」の音を奏でて、静かに幕を閉じます・・・。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

今回久しぶりに通して聴いて想ったのは
もっとインパクトのある作品と言うイメージだったけど・・・
と言うことです。実質的にはこの作品からパット・メセニー・グループにハマっていったので想い入れは深いのですが・・・。

ひとつはあまりにも緻密なアレンジと計算で、逆に曲が完成され過ぎていると言う部分。これは、ドラムのプレイに良く表れていると想います。
全くと言ってよいほどバスドラムが聴こえず、淡々とリズムを刻む・・・。それを取り囲むようにパーカッションがリズムを奏でる・・・。
ブラジルテイストを十分にかもし出してはいるのですが、ドラムの『おかず』さえももしかしたら決まっている?と言う錯覚さえ覚えてしまうほどの地味さがあります。全々作のファースト・サークルでインパクトのあるプレイをしていたポール・ワーティコさんとは想えないようなプレイです。

またもうひとつリズム的な特徴として、2拍4拍の強いビートがほとんど無いと言うことがあります。
これは、ブラジルテイストを全面に出しているので、必然的ではありますが、なかなか取っ付き難いのも事実です。実際に、今まで2拍4拍のビートが強いフュージョンを聴いていたので私も少し時間が掛りました。

想像するに、かなりの部分までパット・メセニーさんとライル・メイズさんの段階で創って、創って、創り込まれていたのでは?と想います。それがほぼ完成形に近くて、ほとんど変える余地が無かったのかな?と・・・。

手前味噌ですが、私もオリジナルのフュージョンバンドをしていて曲を書いていましたが、作曲の段階で創り込んでデモテープをメンバーに渡すとなかなかそのイメージが頭にこびりついて、違う冒険や工夫をし難いのが現実です。かえって、コードとメロディだけくらいしか出来ていない曲を渡した方が、結果面白い曲になったりすることは良くありました。

コンポーザーとしては、イメージ通りに曲が仕上がるのですが、ことジャズ的なエッセンスと言う部分から見ると、出来上がりがやはり少し物足りない感じがあります。

また、ライナーノーツで青木和富さんが『良い意味で売れるアルバムを創った』と書いています。それは『コビを売って人を酔わそうとしているのではない』と言う注釈がついていますが、そうは言っても、かなりBGM的で優しく聴き易い曲郡はそんな感じがしないでもないですね。

古い作品からパット・メセニー・グループの作品を聴いて、この作品まで辿り着くと、ECM時代のパット・メセニー・グループの方が良い!と言う方々もたくさんいらっしゃるのが良く解ります。私も今日の段階ではECM時代の作品の方がどちらかと言うと好きです。

そこには若さとラフさもありますが、それでも勢いとジャズ的な面白さがあります。この作品は異常なほどの完成度がありますが、アドリブライン以外の部分でのジャズ的な面白さや演奏の面白さなどがやはり欠けていると想います。

その分楽曲としての面白さやアレンジの面白さがあって、今回のレビューもその部分に集中した感があります。この作品をジャズ、フュージョンと言う捉え方ではなくて、もう少しグローバルな音楽作品として捉えると、これが実に良い作品で名盤と言えるのだと想いました。

それでも、アルバム全体に流れるブラジルテイストと言う一貫したコンセプトが明確で、さらに1曲つづ聴いていくと、実に名曲が揃っているのも事実です。
また、先に書いたように2拍4拍の強いビートがない楽曲って、実は大変演奏が難しいのです。それをさらりとこの完成度で演奏してしまうと言うところも含めて、やはり名盤!それは不変的なものですね。

この作品で大きく線引きが出来るのは明確なんですが、それでも古い作品から連続した流れで聴いていくと、ブレない、一本通った芯を感じるのもまた事実です。

(CD TOTALTIME:42:33 / Walking消費カロリー:171.05 kcal)

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スティル・ライフスティル・ライフ
パット・メセニー・グループ デイビッド・ブラマイアーズ マーク・レッドフォード

曲名リスト
1. ミヌワノ(68)
2. 胎動
3. ラスト・トレイン・ホーム
4. トーク
5. サード・ウィンド
6. ディスタンス
7. ファミリー

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ファースト・サークルファースト・サークル
パット・メセニー・グループ
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あとがき
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スティル・ライフ【PART1】/パット・メセニー・グループ
STILL life(talking)/PAT METHENY GROUP

スティル・ライフ


新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
と言うことで昨日は天気も良く、寒さも少し和らいだ感じ。新年一発目に選んだ作品は
パット・メセニー・グループスティル・ライフです・・・。


パット・メセニー・グループのレビューもいよいよこの作品まで辿り着きました。
この作品は、パット・メセニーさんがECMからゲフィンへ移籍してから、グループ名義としては最初の1987年の作品です。
個人的にはパット・メセニー・グループを初めて深く聴いた作品として印象深いものがありました。当時は過去の作品から順番に聴いていったと言うことではなくて、どちらかと言うと、この作品から過去の作品へ戻って聴いたと言うのが実際です。
ですから、パット・メセニー・グループのサウンドはこの作品のサウンドが代表でECM時代の作品と自分の中で一線を引いていた部分があります。
このブログで過去からさかのぼって聴いて来て辿り着いたこの作品は、どんな印象になるのでしょうか・・・。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

01:ミヌワノ(68)
パット・メセニーさんのギターとライル・メイズさんのピアノの印象的な流れるフレーズから静かにスタートするイントロ。ここは、8分休符食って入るギターとピアノがそのまま8分音符食って進むので、結果として4分音を8分づつずらした形で進んでいきます。しかし食っているのはギターとピアノでその他の楽器は全て頭で入っています。少しずれているような感じがしそうなんですが、そんな感じは全くなくて、逆にイントロ部分の華麗な流れを創っているのが不思議と言うか見事と言うか・・・。

さらに、ここで実に良い味とアクセントを出しているのがベースのスティーヴ・ロドビーさん。
基本的にはロングトーンなんですが、小節頭のロングトーンの前に入れる8分音符が絶妙なアクセントです。さらにこの部分では、音の伸びの少ない、つまりサスティーンのないウッド・ベースがより効果的で、その音の必然性を感じます。

そして何と言ってもヴォイス。
ここでのヴォイスはご存知のアーマンド・マーサルさん、デヴィッド・ブラマイアーズさん、マーク・レッドフォードさんのトリオ。このイントロの部分を歌っているのは実際に誰か良く解りません。お恥ずかしい話ですが、結構最近までこの部分は前作まで参加していたペドロ・アズナールさんだと想っていました。
実はライヴ・アンダー・ザ・スカイでのパフォーマンスをTVで放映した時のビデオを良く観ていましたので、そのイメージが強烈だったと言うことなんです。

イントロのワンコーラス目は低い音程で「へ、ヤ、ハ」などの発音で歌っています。そして2コーラス目では、オクターブ音を上げて、今度は「ウ、エ、ヤ」などハミング調で歌います。この発音が実に自然で、歌詞があるよりヒューマンな感じがしますね。そして、この様なヴォイスがこの作品のひとつの大きな特徴になっています。実際にはこの作品以前の作品からヴォイスと言うポジションは積極的に使用されていたのですが、より顕著に全面的に使用したと言うことですね。

これらが一体となって創り上げているこのイントロ部分。見事なアレンジと構成で個人的にはかなり肝!なんです。しかし、最近のライヴパフォーマンスではこの部分はカットされていますね。パット・メセニーさん曰く『ライヴの流れを止めないため』と言うようなことのようですが・・・。

イントロが次第に盛り上がったところ、CD Time=:2:47からBm7→F♯m7と言う繰り返しのパターンがスタートします。
ライル・メイズさんのオルガンの音が頭打ちで2拍入るのがアクセント。さらにスティーヴ・ロドビーさんが淡々と4分音符で3音を刻みます。この2つが強力な3/4拍子を創り出しています。
それに対してバックのピアノとリズムはどちらかと言うと細かく刻んでイントロからの流れである6/8拍子を創ります。特にドラムのポール・ワーティコさんのさり気無いサイドでのシンバルワークが効いています。
この2つの拍子が絶妙に組み合わさってひとつの大きなグルーヴを生み出していると言えますね。この感じが、ブラジルの季節風『ミヌワノ』のイメージでしょうか。どのような風かは知りませんが、頭の中に明確にイメージ出来る見事な映像的な音とアレンジになっていると想います。
そしてCD Time=:2:55のファンの間ではお馴染みのギターのミュート音による弾けるような「ポッ」と言う音からテーマに入ります。

テーマはクリアトーンのギターと口笛の様な音のユニゾン。
ここでのギターは今では懐かしいギブソンのES-175。音がまた良くて、何とも言えないウォームな音に少し煌びやかな生っぽい音がミックスされていて、さらに、そのミックス音にはしっかりとした骨格があって、その周りを少し強めのリバーヴで取り囲む感じ。普通リバーヴをギターにかけると、ギターのノンエフェクト音にリバーヴが重なって掛っている感じになるのですがパット・メセニーさんの場合は、エフェクト音との分離を明確にしていて絶妙なバランスで定位させています。これは機材の問題もありますので、アマチュアではなかなか再現できませんが個人的にはかなり好きな音です。さらに生っぽい音は、実際にフルアコースティックギターのマイク録りの生音をミックスしているらしいですね。

口笛はこれがシンセなのか、誰か吹いているのか解りませんが、後のライヴなどの映像を見ると、この時の音をサンプリングして使用しているようですが・・・。ギターと連動はしていないようで、実際に先のライヴ・アンダー・ザ・スカイでもテーマのミストーンに対して口笛はそのまま流れています。でもマーク・レッドフォードさん口笛を吹いていたような気がしますね・・・今回は検証しませんが。

2コーラス目からはギターがオクターヴ上がり、更にヴォイスが加わります。
実際に一緒に歌って見ると、これが実に気持ち良いんです!曲の感じからすると、メロディから出来たと言うよりは、リズムやコードから先に出来たと言う感じのする曲なんですが、メロディラインが実に見事にリズムとコードにハマっています。

そしてCD Time=:4:19からパット・メセニーさんのソロです。
スタートからレガートなフレーズで少しルーズな感じで奏でています。速いパッセージも無く、どちらかと言うと大きな流れでフレーズを捉えている感じでしょうか。それでも、かなりメロディアスなフレーズですね。
CD Time=:4:40からは段々と16分音符をはさみながら、レガートでルーズなフレーズが歯切れの良いフレーズになっていって、CD Time=:4:57からは得意のクロマティックなラインから、CD Time=:4:59の1拍半のフレーズを繰り返すシーケンスへ。更に2コーラス目の頭も同じシーケンスラインを音を変えて奏でます。このあたりは本当に上手いですね。
そのまま速い怒涛のパッセージでラインを創り、CD Time=:5:06の効果的なグリスでのアップフレーズから大きなノリのフレーズを展開します。
その大きなノリのままメロディアスに奏で、CD Time=:5:24から和音を使ったフレーズを展開して、さらに、CD Time=:5:28からペダルトーン的にA=「ラ」の音を鳴らしながら、和音をコード進行に合わせて変えて行くと言うフレーズを聴かせてくれます。

この曲でのパット・メセニーさんのソロは、どちらかと言うと大きなノリでゆったりとしたメロディやリズムリック的なフレーズが多く、実にメロディアスでいい感じです。
ライヴになるとどうしても盛り上がってしまうのか、速いパッセージと得意技フレーズで攻めのフレーズになってしまう感じがありますが、逆にテンポが速い曲なのでこのようなフレーズの方が、風に乗って浮遊している!と言う感じがして、曲のコンセプトに合っていて印象的です。

パット・メセニーさんのソロの後は、曲が劇的に展開します。
クラシカルな感じとプログレ的な感じのミックスされたフレーズでマリンバとピアノの緻密に計算されたユニゾン的ハーモニーが見事です。
さらにこの部分の2回目では、コードの切り替わり部分にベースなどで強いアクセントを刻み、さらに複雑なアレンジになっていきます。そして、一瞬静かになるとベースがメロディを奏で、そのメロディがハモると、ベースラインと絡む複雑な譜割りのシンセフレーズへ。

この部分の譜面を見ると一応3/4拍子で譜割りがされていますが、実に複雑なリズムになっています。また、シンセの和音の部分とベースラインの絡みが絶妙にアレンジされています。

本当にマリンバの部分からこの部分までの間のアレンジは緻密で、クラシックのオーケストレーションの様な『音の複雑な重なり』を感じて実に肝!です。

壮大な中間のフレーズをはさんで再びテーマに戻ります。
後テーマは最初のテーマとは比較にならないほど盛り上がっていきます。そして更にコードが展開しながらエンディングを迎えます。このエンディングの直前で、この曲ではほぼ初めてポール・ワーティコさんのタムを聴くことができます。

実はこれがミソで、この曲でのドラムは、ほとんど遊びが無く、淡々とリズムを刻むことに徹しています。さらにドラムのバスドラムの音がほどんど聴こえません。
また、これはドラムに限らず、ベースもパーカッションもあえて言うならば、ピアノのバッキングさえも、かなり決められたアレンジの中での演奏と言う感じがします。

イントロがあって、テーマがあって、ソロがあって、中間部分があって、テーマに戻り、エンディング。全てが交響曲の様に創られていて、曲のアレンジがきめ細かく、更に完成度が非常に高い曲だと想います。
まさに名曲・・・ではありますが、逆に言うと・・・ジャズ的な即興性やインタープレイなどの『しかけ』は全くなくて、ある意味物足りない部分も今回は感じました。

これだけの曲だと、多分ライヴでもジャズ的要素を絡める隙間はないのではないかと想います。だからこそ、イントロ部分を最近演奏しないのは、やはり不満です。個人的には、ライヴの流れが止まるとは全く想いませんけど・・・。

クラシックのコンサートプログラムで、交響曲の特定の楽章だけ演奏されてもやはり面白くないですよね。そのようなコンセプトのコンサートであれば別ですが・・・。


02:胎動
サルサの様なリズムにストリングスが絡むイントロからスタート。
テーマはパット・メセニーさんのクリアトーンのギター。1曲目よりもさらにアコースティック的な生音を感じる音色です。そしてリバーヴはもちろん掛っているのですが、少しディレイが強めの感じがします。

ファーストソロはライル・メイズさん。
優しく、丁寧なフレーズを奏でていきます。もう少しアタックの強い音でメリハリをつけても良かったような気がしますがスーッと通り過ぎていってしまう感じがしてしまって少し残念ですね。フレーズ自体はメロディアスさと適度なテンションがあってなかなかグッ!とくるラインなんですが。

続くパット・メセニーさんのソロもフレーズ自体はCD Time=:4:31の様なメセニー節などのパッセージを奏でていて、こちらもグッ!とくるラインなんですが、同じようにスーッと流れていく感じがあります。

これは1曲目と同じでバックの演奏が淡々と流れていく為だと想います。打ち込みとまではいきませんが、悪く言えば単調。その為に全体的に平坦でふわふわした感じに仕上がっていて、結果ソロも引き立たないと言うことなのかなと想います。全体に音と演奏が優しいですよね。


03:ラスト・トレイン・ホーム
ドラムのポール・ワーティコさんのブラシでのスネアワークが印象的な曲。テーマはエレクトリック・シタールをパット・メセニーさんが奏でます。

このエレクトリック・シタールは、フレットレス・ギターとも違う独特の音の響きを持っています。以前、レプリカモデルを弾いたことがありますが、かなりやみつきになりそうな不思議な楽器です。もちろん、弾いたのはこの曲のテーマでした。これが実にさまになる、と言うか誰が弾いてもパット・メセニーさんになれる!と言うのは大げさとしても、それくらい個性の強い楽器なんです。

カントリー、フォークのテイストを持ったアメリカ的なメロディラインはまさにトレイン。でもあくまでも蒸気を動力にしているトレイン。決して電気ではない・・・。そんな感じが良く伝わってきます。もちろん汽笛のSEも入ってはいますが。

コード進行もテンションノートのないノーマルなコードに分数コードなどでベースラインをクリシェしたりしながら進みます。でも実に情緒的で感動的でさえあるコード進行ですね。特にテーマの最初の部分、B♭→C/B♭→A♭→B♭と言う流れは単純なんですが、肝!です。

曲はまるで『おしん』的フレーズのドラムの16ビートとベースの8ビートで淡々と進みCD Time=:1:47からパット・メセニーさんのソロがスタートします。
8分音符のレガートな上昇ラインからワンコーラス目の頭のB♭のコードでの「ファ・レ」に繋いで、さらにCD Time=:1:51の分数コードでのフレーズへ。この繋がりは見事だと想います。
その後のフレーズもリリカルで情緒的なラインを奏でていきます。
CD Time=:2:14のやや長いスライドのフレーズからのライン、そしてCD Time=:2:21でのひと呼吸おくフレーズ、丁度ライル・メイズさんのバッキングを聴いて、それに答えるように。この間が絶妙ですね。

2コーラス目からはバックの演奏も盛り上がってきて、パット・メセニーさんのピッキングにも力が入ってくる感じがCD Time=:2:40からのフレーズでよく解ります。それでも決して熱くなって速いパッセージに走らず、あくまでも情緒さと優雅を失わないソロラインで中サビに繋ぎます。

中サビの主役はヴォイス。多分デヴィッド・ブラマイアーズさん、マーク・レッドフォードさんのコンビだと・・・絶妙にアレンジされたラインを歌い上げます。時に絡み、時に離れながらも、お互いに呼応するようなラインで、まさに広大なアメリカの大地を疾走するトレインと自然との絡み、またトレイン同士のすれ違い・・・そんな情景も目の前に浮かんでくるような映像的なアレンジですね。

再びテーマに戻り、静かにフェードアウトしていきます・・・。フェードアウト間際のドップラー効果を再現したかのようなパット・メセニーさんの踏み切りの音・・・。
考えると、この踏み切り音のパフォーマンスや汽笛の音のSEなどはかなりベタな演出ですね。無くても良かったのではないかと想うのですが・・・。

ライナーノーツによると最初はブロークン・プロミスと言うタイトルだったそうです。それでも、この曲調を聴くと、多分トレインを連想すると想います。この曲調、そしてストレートにタイトルにトレインと言う言葉を入れて、さらにこの演出は・・・やっぱりベタ。
それでも結果的には名曲、いつ聴いても感動を覚えてしまいます。

それにしてもドラムのポール・ワーティコさんのブラシでの16ビートは『おしん』ですね。最初から最後までこのパターンを続けるのは、結構疲れるのではないでしょうか・・・。さらにこの『おしんフレーズ』のため、この曲も淡々とリズムが流れています。
でも、この曲の場合はこのアレンジが最適で、これ以外には考えることが出来ないくらいハマっていると想います。かなりBGM的で、趣のある曲に仕上がっていますね。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

新年早々また長いレビューになってしまいました・・・。
と言うことで続きはまた後日・・・。

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パット・メセニー・グループ デイビッド・ブラマイアーズ マーク・レッドフォード

曲名リスト
1. ミヌワノ(68)
2. 胎動
3. ラスト・トレイン・ホーム
4. トーク
5. サード・ウィンド
6. ディスタンス
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ザ・ファルコン・アンド・ザ・スノーマン/パット・メセニー・グループ 
The Falcon And The Snowman/PAT METHENY GROUP

The Falcon And The Snowman: Original Motion Picture Soundtrack

今日はとても良い天気でした。しかし風と空気は刺すように冷たい・・・。いよいよ秋も終りですね。と言うわけで今日は、パット・メセニー・グループザ・ファルコン・アンド・ザ・スノーマンでwalkingです・・・。


パット・メセニー・グループを巡るレビューも5作品を経て、次はいよいよECMから離れてゲフィンと契約しての名作スティル・ライフ(*)へ・・・と想ったのですが、その前にグループ名義でリリースされているこの作品を果たしてパット・メセニー・グループの流れの一貫としてレビューするべきかどうか・・・。

ご存知のこの作品は映画コードネームはファルコン(The Falcon And The Snowman)のサウンドトラック。ジョン・シュレシンジャーさんが監督でティモシー・ハットンさん、ショーン・ペンさんが共演。アメリカを裏切りスパイとなった2人の若者を描く実話スパイサスペンス。
パット・メセニーさんはサウンドトラックをけっこう手がけているようですが、グループ名義でディスコグラフィーにラインナップしている唯一のサウンドトラックと言う作品ですので、多分、一連のグループ活動の中で、それなりの流れと意味があるのかな?と想いレビューをすることにしました。

実のところこの映画は観ていません。また、このサウンドトラック自体もあまりしっかりと聴いていないです。ですから映画と音楽とのかかわりと言うことでは全く解らないのですが、純粋に音楽作品として聴いてみるとどんな感じでしょうか・・・・。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

01:PSALM 121/FLIGHT OF THE FALCON
綺麗な混声合唱からスタートします。CD Time=0:39から時々かすかに聴こえるストリングスの低い音でのロングトーンが、合唱の希望を含んだ美しさとは異次元の暗い響きで、何かがありそうなムードを感じさせてくれます。
CD Time=2:50から静かに消えていく合唱のバックで耳を集中させないと聴こえないギターのチョーキングフレーズに、先ほどの異次元の暗い響きのストリングの低音が重なり、さらにシンセの音が重なってクレッシェンドされると、CD Time=2:57からいかにもパット・メセニーさんらしい明るいアコースティックギターのカッティングが始まります。

パット・メセニーさんのカッティングとベース、ドラムが一体となって16ビートを刻み、それを取り囲むように広がりをもったストリングスがテーマを奏でます。時々、ライルメイズさんのシンセでパット・メセニー・グループの代表的な笛の様な音でのメロディがストリングのテーマをスーッと奪っていく・・・。8分音符のストリングスのスタッカートなラインでエンディングです。
ストレートで、かけ引きなしの楽曲に惹きつけられます。

02:DAULTON LEE
4/6拍子に時々4/4や4/7拍子を挟みながら進みます。リズムもシンコペーションなどを多用しているのでよりテンポが取り難くなっていますね。曲はパット・メセニー・グループの名曲ついておいでなどに代表される8ビートナンバーの雰囲気を持っています。

ハーモニカの音色でのシンセと尺八の様な音のシンセがテーマを奏でていきます。音的にはパット・メセニー・グループ・オンパレードと言う感じです。

この曲にはライル・メイズさんのハーモニカ音でのソロがあります。
いかにもライル・メイズさんらしいリリカルなメロディラインです。途中からペドロ・アズナールさんのヴォイスでのメロディが重なってきますが、それに絡むようにライル・メイズさんのソロは続きます。

ブラスの音と尺八風の音のラインが交互に同じメロディを繰り返していくバックで、さらにソロは続いていき、静かにフェードアウト・・・。

03:CHRIS
この曲は5曲目に入っているデヴィッド・ボウイさんとのコラボでヒットしたTHIS IS NOT AMERICAのカラオケバージョンみたいな感じです。映画の中ではこのようなメイン曲のテーマをモチーフにしたカラオケ的な曲はかなり効果的ですね。
スティーヴ・ロドビーさんのベースとポール・ワーティコさんのバスドラが淡々と同じリズムを刻んでいきます。

04:"THE FALCON"
ややゆったりとしたライル・メイズさんのピアノとスティーブ・ロドビーさんのアコースティック・ベースにパット・メセニーさんのスチール弦のアコースティックギターがカッティングを重ねます。
すぐに、透き通るようなペドロ・アズナールさんのヴォイスが加わってきて情緒的に曲は進んでいきます。

ソロはライル・メイズさんのアコースティック・ピアノ。
あくまでもサントラと言うことを意識してのプレイで、けして全面には出ず、さりげなくメロディラインを奏でています。途中THIS IS NOT AMERICAのコード進行をモチーフにしたような部分もあって、一貫したコンセプトを強く感じます。

05:THIS IS NOT AMERICA
先ほども書きましたがデヴィッド・ボウイさんとのコラボでヒットした名曲。
このオリジナル・バージョンももちろん良いのですが、個人的にはDVD作品ウィ・リヴ・ヒア・LIVE IN JAPAN 1995(*)でのマーク・レッドフォードさんとデイヴィッド・ブラマイアーズさんのヴォーカルが気に入っています。2人を見つめながらカッティングをするパット・メセニーさんの“子供を見る親の様な眼差し”がまたいいんですよね・・・。また機会があればこのDVDもレビューして見たいと想っていますが。

イントロのベースラインが少し3曲目のカラオケ的THIS IS NOT AMERICAとは違って2小節ごとに4拍目に細かい16分音符を入れています。ウッド・ベース独特のパーカッシブな入れ方でグルーブを生み出していますね。

デヴィッド・ボウイさんの太く搾り出すような声とささやくような声。上手く使い分けながら訴えかけるようなメロディラインを朗々と奏でていきます。
ワンコーラス終りの特徴的な“Sha la la la la♪”と言う部分は、その発音からけっこう陳腐な感じになりそうなんですが、そうなっていないのはアレンジの力でしょうか。CD Time=1:24から今までのGmからA♭mに転調するのですが、この“Sha la la la la♪”があってこその転調効果倍増!と言う感じがします。

今回歌詞の意味を訳していないので意味は良く解りませんが、時々"ファルコン"とか"スノーマン"と言う言葉も出てきますのでかなり映画に即した内容だと想われます。THIS IS NOT AMERICAはそのままの意味だと想うのですが、途中に何回か入る“NO!“と言う叫びの様なヴォイスがやけに哀しく響き、より曲のタイトルの意味を際立たせていますね。

パット・メセニーさんはこの曲では地味にミュートカッティングをしているのですが、これがけっこう効果的に響いていて曲の特徴のひとつを創りだしています。エンディング部分では、さらにそのカッティングを発展させて、2声の和音で歯切れ良くカッティングラインを刻みます。

派手な展開やソロは無く、実にコンパクトにまとまっている曲なんですが、強いコンセプトが伝わってきます。更にコンパクトゆえに、CD Time=1:24の転調は抜群に効いていますね。名曲だと想います。

06:EXTENT OF THE LIE
映画の一番面を観ているかのようなSE的なサウンドの後、ポール・ワーティコさんのバスドラとスネアがリズムを繰り返し、それにパット・メセニーさんがゆったりとしたやや陰鬱なテーマを奏でます。

ここでのパット・メセニーさんは歪み系の音。多分今までのパット・メセニー・グループの楽曲の中ではテーマとしてこの歪み音を使用するのは初めてではないかと想います。ギターの種類や歪みのエフェクトの種類は解りませんが、後のザ・ロード・トゥ・ユー(*)ハーフ・ライフ・オヴ・アブソルーションイマージナリー・デイ(*)ルーツ・オヴ・コンシデンスに繋がるような感じの歪み音色です。そうするとシンクラヴィアでの歪みと言うことでしょうか。
映画と言う性質上、必要な音であったと想われるのですが、いきなりグループ作品での使用ではなくてワンポイントの異流ともとれるサウンドトラックで試験的に演奏したと言う感じもしなくもないですね。

途中からギターのメロディをオクターバーで上の音を重ねると同時にライル・メイズさんのオルガンも厚い音を重ねていきます。そしてブレイクからパーカッションのアップテンポのリフへ・・・。

パーカッションのリフを無視するかのように、厚いストリングスやSEが重なります。そして、パーカッションがフェードアウトすると今度はストリングスにスペーシーなシンセのSEが・・・。すると再びパーカッションのリフがフェードインしてきます・・・。
曲は目まぐるしい展開で、次々に様子を変えながら変化していく、まさにサウンドトラックです。

07:THE LEVEL OF DECEPTION
重厚なストリングスにパット・メセニーさんの綺麗な音のナイロン弦アコースティックが響き渡ります。しかし、それもわずかな間で、すぐに様子はスパイ映画的なサウンドに変わっていきます。
この曲もSE的で特にメロディがあるとか言う感じではなくて、いろいろなメロディやサウンドをミックスしたり次々に展開させていくサウンドトラックです。
途中、オフランプ(*)舟歌で使用されていた心音の様なドラムの打ち込みがありますが、このサウンドの中では本当に心臓の音のようにサスペンスな雰囲気を盛り上げています。
特にCD Time=4:10からのストリングの旋律が静かに終わると同時に心音。そしてガラスが割れるようなエレピでのSE。この辺りは映画を観ていなくても、十分サスペンス的な雰囲気を味わうことが出来ます。
そしてそのバックでフィードバックとトレモロアームを使って、歪み系の音でロック的リフを奏でているパット・メセニーさんのギターが更に雰囲気を盛り上げます。この様な激しいロックリフ的なプレイは多分ほとんど聴く事ができないフレーズですね。サウンドトラックならではと言ってしまえばそれまでなんですが・・・。

08:CAPTURE
THIS IS NOT AMERICAをモチーフにしてストリングスとライル・メイズさんのピアノが静かに奏でます。そこに、パット・メセニーさんのナイロン弦が再び重厚なストリングスに囲まれながら綺麗なメロディを奏でます。

途中からまた大きく展開していき、2曲目がリフレインされます。それも途中で切れると同時にストリングスの哀しげなメロディでエンディングです。

09:EPILOGUE(PSALM 121)
ストリングスでの和音を中心として、ゆったりとまさにエンディング的なサウンドの曲。
今まで曲中で使用されてきたストリングは弦でのストリングだと想われますが、この曲は何故かシンセのストリングス。弦でのストリングスだと生々しい感じがするところをあえて抑えて、少し幻想的でスペーシーな感じに仕上た意図は映画のエンディングに関係がありそう?
途中から入るペドロ・アズナールさんのロング・トーンでのヴォイスが実に綺麗です。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

後半の6曲目以降は、メロディや演奏と言うことよりも、本当に映画のサウンドトラックでやはり純粋に音楽作品として聴くのは難しいと想いました。

それでもTHIS IS NOT AMERICAなどは単独の曲としても名曲ですし、演奏的にはライル・メイズさんが多くはありませんが、所々珠玉のメロディを聴かせてくれたり、パット・メセニーさんも美しいナイロン弦のラインや珍しい歪み系の音でのロックリフを聴かせてくれたりして摘み採ると聴き所があります。

また、当然映画をコアにしている作品ですので、楽曲のもっているコンセプトは一貫しています。まあ、当たり前と言えば当たり前なんですが・・・。
でも、これが実は重要なポイントなんです。

ファースト・サークル(*)のレビューの時に、いつもお邪魔しているブログアドリブログセラピーさんから『アルバムとしての統一感に欠ける・・・』と言うコメントをいただきました。確かにファースト・サークルは演奏的には通ったものがありますが楽曲同士はけっこうバラエティに富んでいて、そのコメントになるほどと想った訳です。

そしてこの作品はそのファースト・サークルの次の作品であり、また映画サウンドトラック。嫌でもコンセプトが一貫していまします。

ですから、一枚通して聴き終えると、まさに映画を観終わったあとの様な感覚に襲われました。
それはまさにトータルコンセプト。
その裏に秘めているのは、通して聴くことによって見えてくるサウンド、そして主張。
けしてコマーシャルやラジオ的に“良いとこ取り”で聴いていては見えてこない強い主張。
そして、それを感じたパット・メセニーさんは、最終的にTHE WAY UP(*)の約70分1曲収録と言うコンセプトにたどり着いていく・・・相当強引ではありますが・・・。

この後にリリースされる作品が、トータルコンセプトが一貫していてひとつの強い主張を感じることが出来れば、まさに、このサウンドトラックがTHE WAY UPへ繋がる第一歩と言う仮説の立証になる!
・・・と、またも強引に結論づけ・・・かなり苦しいですが。

異流の作品と言って良いと想いますし、演奏的にも光る部分は少ないのですが、それでも、今回あらためて聴いて見てなかなか佳作だと想ったのは確かです。

(CD TOTALTIME:38:55 / Walking消費カロリー:156.45kcal
 walkingには・・・合うと言えば合いますが・・・SE的な部分がけっこうあるので何とも言いがたい感じです。)

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The Falcon And The Snowman: Original Motion Picture SoundtrackThe Falcon And The Snowman: Original Motion Picture Soundtrack
Original Soundtrack

曲名リスト
1. Psalm 121/Flight of the Falcon
2. Daulton Lee
3. Chris
4. The Falcon
5. This Is Not America
6. Extent of the Lie
7. Level of Deception
8. Capture
9. Epilogue (Psalm 121)

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(*)本文に登場したCD・DVD

Still Life (Talking)Still Life (Talking)
Pat Metheny Group
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ウイ・リヴ・ヒア・ライヴ・イン・ジャパンウイ・リヴ・ヒア・ライヴ・イン・ジャパン
パット・メセニー・グループ
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Imaginary DayImaginary Day
Pat Metheny
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The Road to You: Recorded Live in EuropeThe Road to You: Recorded Live in Europe
Pat Metheny Group
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OfframpOfframp
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First CircleFirst Circle
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The Way UpThe Way Up
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