スティル・ライフ【PART2】/パット・メセニー・グループ
STILL life(talking)/PAT METHENY GROUP
パット・メセニー・グループのスティル・ライフのレビューの続きです。Track04から総論です・・・。
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04:トーク
ブラジルテイストの強く出ている曲です。ミディアムファーストのテンポにノッたパーカッションが心地よいです。
テーマはヴォイスとギターのユニゾン。どちらかと言うとヴォイスが中心に進みます。サビに入ると今度はギターと笛の音でのシンセのユニゾンでメロディが奏でられます。こちらはギター中心。いずれにしてもギターはテーマを弾いているのですが、時に従になり、時に主になるアレンジがいいですね。
ファーストソロはライル・メイズさん。
ブレイクも展開も無く、テーマそのままのグルーヴでソロに入っていきます。
最初の16小節は4分音での3連をモチーフにした、ゆったりとしたメロディを奏でていきます。そして次の16小節では4分音での3連を基本にしながらも細かいパッセージをジョイントに使用してフレーズを加速させます。そしてサビの部分に入った最初の8小節では、クラシカルにコード奏法を中心に弾き抜けます。CD Time=3:05からのコード和音の重なりはとても綺麗で適度なテンションがあっていい感じです。さらに次の8小節では、リズム隊が16ビートになりますが、ライル・メイズさんの優雅さは変わらず。そのまま、コード奏法をもっとクラシカルに奏でます。CD Time=3:16からのフレーズは歯切れよさの中にも品があって貴族的。見事なラインですね。その流れと雰囲気を継続しながら、最後の16小節を弾き切ってサビに引継ぎます。
長いソロなんですが、センテンスごとの展開と起承転結の盛り上がりを考えたソロで、この作品中でのライル・メイズさんのソロは多くないのですが、ベストテイクだと想います。
ライル・メイズさんのソロから戻ったサビは、最初のサビとは違って今度はヴォイスが主にメロディを歌っています。そのまま後テーマからヴォイスとギターのユニゾンでこの曲の特徴になっているコード進行、C♯m9→C9を繰り返しながらフェードアウトしていきます。
05:サード・ウィンド
アップテンポのラテンリズムが迫り来るような曲。定番のナンバーです。
曲を聴ききながらテンポを取っていると、最初のテーマの切れ目まで、コードがF7sus4が2小節、D♭maj7/Fが2小節の計4小節のように聴こえるのですが、譜面を今回みたら、この部分は8小節。つまり倍の譜割りになっていて、しかもテンポ指示が=300と言う物凄い速いテンポで作曲されていたことに気が付きました。
当然演奏する場合にはこのテンポを意識して奏でなければいけないわけで、聴いている分には同じことなんですが、ミュージシャンのその意識がこの曲のスピード感を創っている要因と言えます。つまり『かなり速いテンポの曲なんだ』と言うコンポーザーであるパット・メセニーさんとライル・メイズさんの意志が明確に指示されていると言うわけですね。
これは意外に大切なことで、ひとつのフレーズを弾くのにも、実は倍のテンポと言うことになると、そのフレーズの切れ目や流れがだいぶ違ってきます。フレーズはひとつのまとまりの中に始めと終りがあるわけで当然、同じ音符の種類で弾くフレーズや1小節が、倍テンポならば、2小節のフレーズになるわけですのでだいぶ違ったアプローチになります。
さらにこれは逆のことも言えるわけで、ゆったりとしたメロディがこの速いテンポの譜割りに乗ると、長めの音符が並ぶことになり、すなわち曲に対してゆったりとメロディを奏でると言う指示になります。
この曲はまさにこの指示で、アップテンポのリズムに対して、ヴォイスとギターでのユニゾンのテーマが比較的ゆったり奏でられているのが相乗効果を生んでいます。もうこれはコンポーザーの意図のまま、見事にハマッタと言う感じですね。
テーマの頭の部分は1拍食ってから付点4分音符で連続します。つまり大きな3連のリズムになります。ですから、なおのこと、ゆったりと奏でられている感じがします。
サビに入る前のCD Time=0:39のAm7/D→A♭/Dと言うコード進行のA♭/Dの部分が、スーッと音が持ち上がるような感じで実に肝!です。
サビの頭がB♭m7ですので、普通にアレンジするとベース音が下がって行って、コードも下がって行く感じになると想うのですが、分数コードを使用してなお且つ、ライル・メイズさんが上手いヴォイシングでバッキングをして、この上がる感じを創っています。
テーマに続くパット・メセニーさんのソロは、このアップテンポを考えたソロで細かすぎるほど細かく、そして速い!展開で迫ってきます。
まずはCD Time=1:35のギターのピックアップ部分。
周りの楽器が全てブレイクしていますのでギターの音を純粋に聴くことができます。好みもあると想いますが、生音がミックスされた音でしかも箱らしさが良く出ていて個人的には好きな音です。この録音での音の感じはES-175の様な感じがするのですが、ライヴ映像でみるとGRのノーマル音を使用していますね。またフレーズは圧巻のメセニー節!一点の曇りもないクリアなフレーズで疾走しています。
そのままの流れでソロの頭の部分を得意技のアップしていくフレーズで繋いでブレイク。そして、ミュート気味のパーカッシブなラインでグルーヴを創っておいてからサビの展開の部分へ入ります。
CD Time=2:06からは、非常にメロディアスに弾き抜けていくのですが、良く聴くとこの部分の最初の8小節で使用している音は9音。最初の2小節が2音、次の2小節も2音、次の2小節が3音で、その次のトリルで2音。
これらの音がコード進行の特徴的な音を的確に捉えていて、なお且つ、絶妙なアーティキュレーションでニュアンスをつけて奏でています。速いパッセージももちろん凄いのですが、このような部分は鳥肌ものの凄みを感じます。まさに肝!フレーズです。
その後は怒涛の速弾きで攻めます。
CD Time=2:38は頭の速い3連符から上昇フレーズを奏で、クロマティックのラインからサビのコード進行へ解決します。このクロマティックの流れが実にコード進行にマッチしていて流石の上手さを感じます。
CD Time=2:50からのポリリズム的なフレーズはコードトーンを絶妙に変えながら、コード感のあるフレーズです。続けて速いパッセージへと繋ぎ、すかさず3連的な緩やかフレーズへ。そしてアクセントを重視したパーカッシブなフレーズからパーカッションのソロへと繋いでいきます。実はこの最後のフレーズはパーカッションソロのバックで演奏しているギターのバッキングに似たフレーズになっています。この一貫した捉え方はやっぱり・・・凄いですね。
笛の音のシンセとヴォイスのユニゾンをはさみながらパーカッションのソロです。
このヴォイスとティンパレスのソロはアーマンド・マーサルさん。ラテンフレーバーの漂う印象的な部分になっています。
シンセのきっかけフレーズが流れ始めて、それがベースとのユニゾンでブレイクすると、一段と劇的な展開に入っていきます。
パーカッションでのいかにも民族音楽的で宗教的な香りも若干するような派手なリズムに遠くからシンセがマーナーなコードを重ねていきます。パット・メセニーさんの得意のモチーフである、速いリズムや一定のグルーヴの流れにクラシカルで幻想的でゆったりとしたラインを乗せる、と言う展開。そして、シンセの和音がフォルテシモになると、ピアノとベースの少し跳ねたリズムが印象的な後テーマに入っていきます。
この部分は今までのテンポ、つまりかなり速いテンポで追っていくと、一聴3/4拍子のように聴こえます。しかもリズムが3連ですのでなおさらそんな感じがするわけです。
しかし、譜面を見ると4/4拍子で、しかも最初のテンポ=300の1/2で譜割りがされています。これは、一瞬迷ってテンポを失いそうになるリズムトラップですね。それがCD Time=6:20あたりから段々と明確にテンポを取れるようになってきます。
ひとつはベースライン。
スティーヴ・ロドビーさんが、今までの細かいラインから譜面通りのテンポの大きなシャッフル気味のリズムに移行していきます。
そしてピアノのバッキング。
ライル・メイズさんも段々と白玉のバッキングに変わっていきます。
CD Time=6:33では完全にリスナーは4/4拍子を取れるようになります。
今までのアップテンポを継続して流れを創り、その流れのままで3/4拍子的なこの部分に突入して、そうリスナーが想っていると実はこの部分では最初のテンポの1/2のテンポでのシャッフルにすでに移行していると言うアレンジ。
本当に良く考えて、練られて、緻密に計算されて創られていると想います。凄い!を通り越して・・・言葉も出ません。
でも、これって実はなかなかさまにならないのです。
私も、これに触発されて似た様なパターンの曲を創ったことがあるのですが、打ち込みでもバンドでもなかなかこのように段々と移行していくと言うのが難しいのです。これは、もちろんリズム全体の大きな流れと変化がありますが、一番大きいのはスティーブ・ロドビーさんのベースワーク。これが全てをけん引してリズムの移行を引き出していると想います。地味なんですが、上手さの光るベースプレイです。
さらに、それにノッて全体が見事に移行していくところは、アレンジの力もありますが、バンド全体のノリとテクニックの凄さがやはりあります。この作品の中では一番のジャズ的、バンド的な部分ではないかと想います。
このエンディングの部分でパット・メセニーさんのこの作品初のギターシンセでのソロを聴くことができます。ここでのソロは大きなノリと前半部分のアップテンポのノリをミックスした様なラインを奏でていきます。
それにしても、凄い曲だと想います。ミヌワノ(68)と同じ様に完成度が高く、その上フリー的な部分も多くまさにライヴ向けの楽曲だと想います。
そう言えばこの後半の部分も最近のライヴではカットされていますね。だから、これも大不満なんです・・・。
06:ディスタンス
ジャングルでの動物の声の様なSEに陰鬱なシンセストリングが重なってスタートします。このジャングルの感じは名曲ファーマーズ・トラストを想い出しますね。
この曲はライル・メイズさんの曲。クラシカルでオーケストラ的な曲です。3分弱の短い曲ですが、そのまま次の曲へ繋がっていきます。雰囲気的には次の曲のイントロダクションと言う感じでしょうか。盛り上がったサード・ウィンドの熱を冷ますと言う解熱剤的な小曲です。
07:ファミリー
ディスタンスの幻想的なエンディングでのストリングのロングトーンに重なってスタートします。ピアノとギターのデュオにストリングスが優しく絡んでくるリリカルなバラードです。
ここでのパット・メセニーさんのギターはクレジットが無いので良く解らないところはありますが多分Ibanezのミニギターではないかと想います。
非常に綺麗なコード進行を持った曲で、特にCD Time=0:29のB♭maj7♯11/Fと言うコードは肝!です。このコードがこの曲全体の聴き所になっていてエンディングでも繰り返しのフレーズで使用されています。そしてライル・メイズさんのピアノのゆったりとした最後の上昇フレーズに繋がるキーコードになっています。
最後は2人で消えるようにE=「ミ」の音を奏でて、静かに幕を閉じます・・・。
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今回久しぶりに通して聴いて想ったのは
もっとインパクトのある作品と言うイメージだったけど・・・
と言うことです。実質的にはこの作品からパット・メセニー・グループにハマっていったので想い入れは深いのですが・・・。
ひとつはあまりにも緻密なアレンジと計算で、逆に曲が完成され過ぎていると言う部分。これは、ドラムのプレイに良く表れていると想います。
全くと言ってよいほどバスドラムが聴こえず、淡々とリズムを刻む・・・。それを取り囲むようにパーカッションがリズムを奏でる・・・。
ブラジルテイストを十分にかもし出してはいるのですが、ドラムの『おかず』さえももしかしたら決まっている?と言う錯覚さえ覚えてしまうほどの地味さがあります。全々作のファースト・サークルでインパクトのあるプレイをしていたポール・ワーティコさんとは想えないようなプレイです。
またもうひとつリズム的な特徴として、2拍4拍の強いビートがほとんど無いと言うことがあります。
これは、ブラジルテイストを全面に出しているので、必然的ではありますが、なかなか取っ付き難いのも事実です。実際に、今まで2拍4拍のビートが強いフュージョンを聴いていたので私も少し時間が掛りました。
想像するに、かなりの部分までパット・メセニーさんとライル・メイズさんの段階で創って、創って、創り込まれていたのでは?と想います。それがほぼ完成形に近くて、ほとんど変える余地が無かったのかな?と・・・。
手前味噌ですが、私もオリジナルのフュージョンバンドをしていて曲を書いていましたが、作曲の段階で創り込んでデモテープをメンバーに渡すとなかなかそのイメージが頭にこびりついて、違う冒険や工夫をし難いのが現実です。かえって、コードとメロディだけくらいしか出来ていない曲を渡した方が、結果面白い曲になったりすることは良くありました。
コンポーザーとしては、イメージ通りに曲が仕上がるのですが、ことジャズ的なエッセンスと言う部分から見ると、出来上がりがやはり少し物足りない感じがあります。
また、ライナーノーツで青木和富さんが『良い意味で売れるアルバムを創った』と書いています。それは『コビを売って人を酔わそうとしているのではない』と言う注釈がついていますが、そうは言っても、かなりBGM的で優しく聴き易い曲郡はそんな感じがしないでもないですね。
古い作品からパット・メセニー・グループの作品を聴いて、この作品まで辿り着くと、ECM時代のパット・メセニー・グループの方が良い!と言う方々もたくさんいらっしゃるのが良く解ります。私も今日の段階ではECM時代の作品の方がどちらかと言うと好きです。
そこには若さとラフさもありますが、それでも勢いとジャズ的な面白さがあります。この作品は異常なほどの完成度がありますが、アドリブライン以外の部分でのジャズ的な面白さや演奏の面白さなどがやはり欠けていると想います。
その分楽曲としての面白さやアレンジの面白さがあって、今回のレビューもその部分に集中した感があります。この作品をジャズ、フュージョンと言う捉え方ではなくて、もう少しグローバルな音楽作品として捉えると、これが実に良い作品で名盤と言えるのだと想いました。
それでも、アルバム全体に流れるブラジルテイストと言う一貫したコンセプトが明確で、さらに1曲つづ聴いていくと、実に名曲が揃っているのも事実です。
また、先に書いたように2拍4拍の強いビートがない楽曲って、実は大変演奏が難しいのです。それをさらりとこの完成度で演奏してしまうと言うところも含めて、やはり名盤!それは不変的なものですね。
この作品で大きく線引きが出来るのは明確なんですが、それでも古い作品から連続した流れで聴いていくと、ブレない、一本通った芯を感じるのもまた事実です。
(CD TOTALTIME:42:33 / Walking消費カロリー:171.05 kcal)
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